ここから本文です

「慢性腰痛の名医」がMRIを撮らないで治療する理由

6/26(水) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 「先進国中、最も遅れている」とされる日本の慢性痛医療の世界で、1980年代から痛みの知識や理論の探求に励み、90年代、ほぼ独学で「トリガーポイントブロック」療法を完成させ「慢性腰痛治療の名医」といわれる加茂整形外科医院・加茂院長の治療法の特徴を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

● 問診に時間をとる MRIには頼らない

◎加茂院長の治療 5つのルール
1.問診重視、レントゲン、MRIには頼らない
2.ケガの治療より痛みの治療が先(全身麻酔の手術でも局所麻酔を)
3.トリガーポイントブロック注射(神経ブロック注射とは違う)
4.基本は「認知行動療法」=心配しないでよく動かすようにすること
5.いつも心に「ドクターズルール10」
 「私は、慢性腰痛で受診された患者さんのMRIは撮りません。筋肉のこわばり、疼痛、トリガーポイントは、画像診断装置では写せないからです」

 全国から「何をやっても治らない腰痛患者」が殺到している、石川県小松市にある加茂整形外科医院の加茂淳院長はきっぱりと語る。高度で専門的な腰痛治療をウリにする施設の多くが「MRI・CT・レントゲンの画像検査」に重きを置いているのとは真逆の印象だ。

 「MRIなどの画像診断や血液検査は、患者さんの痛みが、悪性腫瘍、感染症、骨折などの明らかな外傷、リウマチとその周辺の炎症性疾患が原因なのか否かを見分けるために行うものです。当院を受診される患者さんの場合、検査も治療もやり尽くした方ばかりですので、まず必要ありません。第一、画像では痛みのことは何もわかりませんから。ムダな検査で、患者さんに負担をかけたくないというのもあります。

 代わりに、たっぷり時間をかけて行うのは問診です。

 その痛みやしびれが、どのような状況で強くなったり弱くなったりするのかを、じっくりと伺います。これを『積極的診断』といいます」

 積極的診断によって腰痛の正体に見当がついた後は「治療的診断」。どのような治療に対して改善が見られたか、あるいは見られなかったかを通して、診断を絞り込む。

● ケガの治療より 痛みの治療が先

 治療において加茂院長は、「一刻も早く、痛みを取り除くこと」を優先している。

 「痛みは火災と似ています。初期消火(急性痛)なら、バケツ1杯の水で消せますが、火の手が大きくなると、簡単には消せなくなる(慢性化)。急性痛と慢性痛症とでは痛みのメカニズムが違うので、治療者はそれを見極め、それぞれに合った治療法を用いるべきです。

 急性痛のときには当然、まず痛みを消してしまうことが重要です。そうしないと、いろいろな不都合が生じます」

 『不都合』には次の3つがあるという。

 (1)ワインドアップ現象――持続的に痛みの刺激が脊髄に入ると、次第に脊髄の興奮性が増強される。
 (2)中枢性感作――痛みがつづくと、脊髄における知覚処理に変化が起こり、もとからある炎症、あるいは組織障害部位の範囲を超えて痛覚過敏の部位が広がる。
 (3)痛みの可塑性(かそせい)―ー痛みがつづくと、痛みの神経回路に歪みが生じ、もとの正常な状態に戻らなくなる。

 これらの不都合が重なることで急性痛は慢性痛症に変化し、患者は、急性痛の原因となった外傷などが治った後も、消えない痛みに苦しめられることになる。消火開始の遅れによって、燃え広がった火が、延々とくすぶり続けてしまうのだ。

 「だからこそ、治療にあたる医師は、痛みを長引かせないよう、できるだけ早く局所麻酔なり消炎鎮痛剤なりを用いて、痛みの消火活動にあたるべきです。ところが、多くの医師は、痛みの原因を探ることにばかり熱心で、痛みを止めることにはあまり関心がありません。患者さん自身も、痛みを止めることは真の治療とは思っていないふしがあります。しかしそれは、大きな誤解です。特に慢性痛の治療では、痛みをとることこそが、治療そのものなのです」

 さらに意外なことに、ケガや疾病に対する切開手術でも、「体」が痛みを感じないよう、局所麻酔をしたほうがいいらしい。

1/4ページ

最終更新:6/26(水) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

2019年7月27日号
発売日7月22日

定価710円(税込み)

特集 退職金と守りの!!老後運用術
退職金格差が拡大する三つの理由
特集2 激突!クラウド3強
急成長する8兆円市場

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事