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25歳で巨人1軍出場を掴んだ男と妻の下克上物語

6/26(水) 6:00配信

東洋経済オンライン

 しかし、開始から3時間が経過しても、増田選手の名前は呼ばれない。支配下選手の指名が終わってしまった。もどかしい時間が流れていた。

 だが、会場に空席が目立ち始めた午後8時半。

 育成選手の指名が始まった時、その瞬間が訪れた。ジャイアンツが増田選手を指名したのだ。優香さんは母・裕美さんと手を取り合い、喜んだ。

 プロ野球選手と言っても、育成選手は3桁の背番号を背負い、1軍の試合に出られるわけではない。増田選手の年俸は最低保障額の240万円。

 それでもスタートラインに立てたことが、何より嬉しかった。まずは支配下選手への昇格を目指して。2人の下克上が始まった。

 優香さんと離れて暮らすことになった増田選手は、手厚いサポートを受けながら、努力を惜しまなかった。

 そして、2年目の2017年7月28日、支配下選手への昇格が決まった。そこには万感の想いが込められていた。

 「ありがとう」

 「俺の方こそありがとう」

 夫婦の電話には、感謝の言葉と優香さんの涙が溢れていた。

■優香さんの夢を叶えるために

 優香さんを、ほんとうの「プロ野球選手の奥さん」にするために――。

 2019年、増田選手は飛躍を遂げている。

 2軍では打率.347をマークし、出塁率、盗塁数、四球数は昇格時点でリーグトップ。そして4月19日、増田選手はついに1軍の舞台に立った。

 甲子園での阪神戦、8回裏のことだった。坂本勇人選手に代わり、守備固めでショートのポジションに就いた増田選手に、早速見せ場が訪れる。一死2塁の場面、2塁走者の糸井嘉男選手は2016年に盗塁王に輝いた俊足だ。4番の大山悠輔選手が放った打球は、左中間のフェンスに直撃する。打球の行方を見てからスタートを切った糸井選手は楽々ホームイン。

 かと思いきや、本塁でタッチアウト。なんと、中継プレーに入った増田選手が強肩を発揮し、キャッチャーにストライク送球をしたのだ。試合後、球場内の通路に現れた原辰徳監督が「素晴らしいデビューだったよ」と、指揮官自ら讃えるほどの、ビッグプレーだった。

 その後も、チームトップクラスの守備力を買われて、増田選手は着実に出番を増やしている。スタメン出場は5月5日の1試合のみ(6月23日現在)ながら、代走や守備固めとしてチームに欠かせない選手だ。課題のバッティングに磨きをかければ、レギュラー奪取もそう遠くないはずだ。

 最下層から這い上がってきた男、増田選手の下克上物語は、まだまだ始まったばかりだ。優香さんの手厚いサポートはこれからも続く。

 (構成=中村翔)

TBSテレビ『プロ野球選手の妻たち』取材班

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最終更新:6/26(水) 8:24
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