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認知症介護の会話術 「ご飯まだ?」→「今から作る」

6/27(木) 10:12配信

NIKKEI STYLE

両親など身近な人が認知症になったとき、戸惑う人は多いだろう。よかれと思いついとってしまう言動が認知症の人を傷つけ、症状を悪化させてしまうことがある。認知症の進行を抑えるには、周囲が正しい接し方をすることが欠かせない。どこに気をつければいいのか。
「郵便局で年金を下ろさなきゃ」。東京都内に住む認知症の80代の女性はほぼ毎日、通帳を持って家の中をうろつく。平日でも娘が「今日は日曜日だから下ろせないわよ」と言うと、「あら、そう」と郵便局に行こうとするのをやめる。
娘は母親にウソをついたことになるが「それで構わない」と東京都中野区地域連携型認知症疾患医療センターの専門相談員、右馬埜節子さんは話す。「昨日も同じこと言ってたよね」などと返すと、認知症の人は自らを否定されたと思い不安が募る。
認知症は病状が進むとコミュニケーションが取りにくくなる。介護する側が知っておきたいのは「記憶力が低下している認知症の人は現実とは違う世界に生きている」(認知症など介護問題に詳しいケアタウン総合研究所の高室成幸代表)ことだ。
よくあるのは食事したのを忘れ催促する例だ。食べた記憶が失われ脳は食べていないと判断する。こうした場合、介護する人は否定したり間違いを正したりしないことが重要だ。
認知症専門医でアルツクリニック東京の新井平伊院長は認知症の介護と子育てとの違いに例える。「子育ては子供が失敗をしたときに注意すれば経験として上塗りされるが、認知症の人は上塗りができないから意味がない」(新井院長)
しかも、認知症の人は記憶力は低下しているが、抱いた感情は強く残ってしまうといわれる。「また無視された」「拒否された」という感情は、あきらめや意欲低下を招きかねない。「認知症の人が言うことに寄り添う、歩み寄ることが大切」(右馬埜さん)だ。
高室代表は「認知症の人が言うことに過敏に反応するのをやめ、さりげなく調子を合わせる」のを勧める。食事の催促のケースでは「これから作るからなどと答えてあげればいい」(右馬埜さん)。実際に作る必要はない。「それなら待っていよう」と心を落ち着かせるのが肝心だ。「説得ではなく納得してもらうことがカギ」(同)だ。
認知症の人とのコミュニケーションでは、「スピーチロック」といわれる言葉で身体的・精神的な行動を抑制することにも注意が必要だ。介護をしていると何気なく使ってしまう「ちょっと、待ってね」や「座ってて」などの言葉が、認知症の人には否定的に受け止められる場合がある。
軽度の認知症であれば、本人がやろうとしていることを先回りするのもやめた方がいい。家族は心配のあまり必要以上に世話をやいてしまいがちだが、病気で自信を失っている本人は世話を素直に受け取れないことがある。危険な事態にならない限りは「本人の頑張りを尊重する」(新井院長)ことが大切だ。
認知症の介護では理不尽な怒りを感じてしまう場合もあるだろう。介護する人に余裕がなくイライラしているときは、焦りを抑えられずに相手にぶつけてしまう可能性がある。否定されたという記憶は残りやすいので配慮が必要だ。
対応策として、高室代表は「自分が腹を立てていると思ったら、いったんその場を離れる」ことを勧める。「お手洗いに行くとか、水を飲んでくるなどと告げ、時間を置いてもどってくればお互いに落ち着いて話せるようになる」(高室代表)という。
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最終更新:6/27(木) 12:15
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