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東野幸治が描く“三浦マイルド伝説”「ダウンタウンに人生救われた男の壮絶人生」

6/27(木) 8:10配信

デイリー新潮

 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「お笑いに溺愛された男、三浦マイルド君(1)」。

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 2013年2月12日、あるピン芸人がR-1ぐらんぷりの生放送に出るため新幹線で東京に向かっていた。

 その男の頭皮は、後頭部に向けて縦にハゲている。そして髪の毛がなくなった前髪の部分の、かろうじて生き残ったほんの少しの毛根たちが肩を寄せ合って生えているのを切らずに伸ばしている……(笑福亭鶴瓶さんが前髪を目のところまで伸ばしていると思って下さい)。

 どう見ても奇怪な髪型に、話しかけるのも躊躇する。

「特徴のない自分が少しでもイジってもらえる部分があったほうがいいと思うんです」とは言うものの、それを共演者がイジりやすいかどうかは不明です。

 その男の名は三浦マイルド君。毎日が楽しくない小学生時代、彼を救ってくれたのがダウンタウンでした。大袈裟ではなくその時の三浦マイルド君の生き甲斐で、新聞のラテ欄にダウンタウンの番組があると彼はその日は朝から一日、楽しくて仕方がなかったそうです。

 気がつけば当たり前のようにお笑い芸人を目指しています。母子家庭だった三浦マイルド君。「息子には大学を出て、立派な会社に就職してもらいたい」という母の強い愛を感じつつも、ダウンタウンさんへの憧れが捨てられず、大学在学中に吉本興業の養成所NSC大阪を2回受験しました。

 1度目は大学2回生の時で、まさかの不合格(NSCの合格率は9割を超えるとか)。4回生の時に再度受験してやっと合格しました。もちろん就職する気などサラサラなく、大学卒業後そのままNSCに入学しました。母の反対を押し切る形で芸人になります。

 母は息子が芸人になることに最後まで反対しました。養成所に入ったからといって簡単に売れる世界ではありません。ダウンタウンへの憧れからコンビ芸を目指していたものの、三浦マイルド君は4回もコンビを組んでは解散しました。最後には誰も組んでくれなくなり、自然とピン芸人になったそうです。

 芸人にはなったものの、もちろん芸人のギャラだけでは生活できません。様々なアルバイトをして生きながらえます。百貨店のハム屋さんでは時給870円で働きました。1日8時間働き、それだけで食べていたこともありました。ちなみにピン芸人になって初めてもらったギャラは500円。それも芸人になった6年後のことです。

 そんな彼が出演したその年のR-1ぐらんぷりでは、当時大人気だったスギちゃんとキンタロー。に注目が集まっていました。

 売れない芸人・三浦マイルド君は2人に猛烈なライバル心がありました。「絶対に負けたくない!」と、新幹線の車内でネットに書かれた自分の悪口を読み、その怒りを燃料にして、自分を奮い立たせていました。

 その結果2013年R-1ぐらんぷりで見事優勝。奇跡が起きたのです。

 トーナメントの予選で、三浦マイルド君は「広島弁講座」というフリップ芸を披露しました。そのネタというのは、「怖い印象のある広島弁って実は怖くない、素朴で可愛いんです」というもの。

 例えば、制裁を加えるという意味の「ぶち回すぞ」という言葉を片目を閉じて舌を出しながら絶叫する。すると不思議と可愛く思えてきます。お客さんの反応も上々。重ねて、「買う気ないのに試食を食うな。ぶち回すぞ‼」とさらに大きな声で絶叫すると……見事にハマりました。ハム屋さんでのアルバイトが初めて芸に生きた瞬間です。

(続く)

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2019年6月20日号 掲載

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最終更新:6/27(木) 10:26
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