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キャリア官僚が覚醒剤に溺れざるをえなかった理由 元警察官僚、古野まほろ氏が分析

6/30(日) 5:59配信

デイリー新潮

 経産省と文科省、中央官庁のキャリア官僚が立て続けに覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された。職場で常習的に覚醒剤を使用していた疑いが強く、世間に衝撃を与えた。元警察官僚で霞が関でも勤務した作家・古野まほろ氏にキャリア官僚の職場環境について話を聞いた。

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職場の机から注射器を押収

――今回の経産省と文科省の事案だが、元キャリア官僚としてどのように考えるか。

「まず、両事案の時系列としては、4月27日、経産省の28歳のキャリア官僚が、覚醒剤が入っていた国際郵便を受け取ったとして……泳がせ捜査だったが……麻薬特例法違反で検挙されたのが最初となる。その後、職場である経産省にガサが入り、この経産キャリアの机などから複数の注射器が押収された。これだけでもなかなか衝撃的ではある。

 ところが5月28日になって、今度は文科省の44歳のキャリア官僚が、自宅マンションで覚醒剤と大麻を所持していたとして……タレコミがあったそうだが……覚せい剤取締法違反等で検挙された。この事件でも、職場である文科省にガサが入り、この文科キャリアの机から、覚醒剤とみられる粉末や、使用済みのものも含む注射器数本が押収された。

 要は、ほぼ1カ月の間に、中央省庁のキャリア官僚が連続して、シャブを食った被疑者として検挙されたわけだ。検挙された両名の、堂々と庁舎内で薬物を使用するというスタイルも酷似している。こうなると、報道に接した市民を唖然とさせるには十分だろう。

 ただ、20年弱官僚をやってきた立場からすると……薬物の使用など論外であり許されないものだとは思うが……『そうでもしなければやっていられない』という劣悪・過酷な勤務環境等も想像でき、個人の責任と合わせ、職場の構造的な問題をも想起せざるを得ない」

――両名とも有罪と考えてよいか。

「それは今後の公判による。だが、経産キャリアは取調べにおいて『(覚醒剤は)自分で使うためだった』『仕事のストレスで向精神薬を服用していたが、より強い効果を求め、覚醒剤を使うようになった』旨を供述しているほか、職場である経産省に対し、『覚醒剤の密輸と使用を認める書面』を既に提出している(よって、5月31日付けで懲戒免職)。ならば、外野の我々としても、限りなく有罪の心証を持たざるを得ないだろう。

 また、文科キャリアの方も『覚醒剤は使うために持っていた』旨の供述をしているほか、6月18日の時点では覚醒剤の所持・使用につき容疑を認めているという。現時点では、こちらも、罪を犯したとの強い疑いを持たざるを得ない。

 といって、むろん、いずれも現時点における報道等を前提とした判断だし、最終的な判断は裁判所がすることである」

――中央省庁の中で覚醒剤を使用するといったことが、物理的に可能なのか。

「何ら難しくはない。私は警察官僚だったので、経産省なり文科省なりで勤務したことはないが、役所の一般論として考えるに何ら難しくはない。

 例えば、起訴された経産キャリアは『職場のトイレや会議室で覚醒剤を使用した』旨を供述しているが、『トイレ』は個室ならば密室だし、個室の外で行き交う面々は互いに全く無関心である。加えて、トイレの手洗い場で歯磨き等をする者も多いから、ちょっとしたポーチ等を持っていても全く違和感がない。そもそも照明が十分でない場合も多い。

 また『会議室』は……全庁(全省)共用のものだと数が少なくて確保が難しいが……課なり室なりの大部屋の中に、自分の課の会議室を備えている所属はあるし、それを閉め切ることも難しくはない(物理的に扉が閉められるし、『検討中』『来客中』等の掲示もできる)。はたまた、例えば深夜の2時だの3時だのとなれば……霞が関なら平常運転時間だが……さすがに会議はやらないし使用者などいないだろう。あるいは、そうした課内会議室を備えていなくとも、パーテーションで仕切られたそれなりの検討ブースは設けられているのが普通だ。あと、偉い人が退庁してしまった後の偉い人の個室も、実は死角になる。私自身、かなり若い頃、泊まり込みが続いたときは課長室のソファを無断で幾度もお借りして寝泊まりしたことがある。

 要は、中央省庁の執務環境には『死角』がままあるし、希薄な人間関係がそれを『強化』することもある。なおこれに加えて、劣悪な勤務環境もまた死角を多くする」

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最終更新:6/30(日) 5:59
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