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発電所、CO2目標を達成するにはすでに多すぎると判明、研究

7/4(木) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

既存施設の今後の排出量を試算、控えめに見ても超過

 発電所や工場、車両、建物。新たな研究によると、化石燃料を燃やすこれら既存の設備や装置が耐用期間いっぱい稼働するだけで、世界の平均気温はパリ協定の努力目標である1.5℃を超えて上昇することがほぼ確実だという。7月1日付けで学術誌「ネイチャー」に論文が発表された。

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 研究の結果は衝撃的だ。気温の上昇を1.5℃にとどめるには、化石燃料を燃やすインフラをこれ以上作ってはならないだけでなく、予定を早めて閉鎖すべき場合もあるという。だが、現在建設中あるいは計画中の発電所も多いのが実情だ。

 論文の共著者で、米カリフォルニア大学アーバイン校のスティーブン・デイビス氏は、「私たちの研究はこれ以上ないくらいシンプルです。知りたかったのは、2018年時点で、これ以上化石燃料を燃やす設備を作らなければどうなるか、ということです」

これからの排出量を試算

 この問いに答えるためにデイビス氏らが調査したのは、電気、エネルギー、交通、住宅、商業などのインフラ設備が2018年時点で排出する二酸化炭素の総量だ。そして、各設備の平均的な稼働年数をもとに、こういった施設や装置から今後排出される二酸化炭素の総量を見積もった。

 たとえば、新しい石炭火力発電所なら、耐用年数を迎えるまでの40年間、毎年数百万トンの二酸化炭素を排出する。毎年4トンの二酸化炭素を排出する新車であれば、耐用年数を15年とみると、総排出量は合計60トンとなる。一部の二酸化炭素は森や海に吸収されるが、大半は大気中に残る。そして、これを回収する技術を使わない限り、数百年にわたって熱を蓄え続ける。

 デイビス氏らの見積もりによれば、既存インフラがその一生のうちに排出する二酸化炭素量を合計すると、約6580億トンになるという。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化を1.5℃以内に抑制する確率を50%以上にするには排出量を5800億トン未満に抑えなければならないと算出しているが、これを780億トン上回っている。

 すでに大気中に排出された二酸化炭素の量を国別に見れば、一番多いのは米国だ。しかし、今後の排出量では中国が圧倒的に多くなり、全体の41%ほどを占める。米国とインドがそれぞれ9%、EUが7%と続く。中国の経済は近年になって急速に発展しているため、これから長期にわたって稼働する新しい発電所や工場が多いことが原因だ。研究によると、中国の石炭火力発電所は稼働からまだ平均で11年しか経っていないが、米国の石炭火力発電所は40年に近い。

 デイビス氏らの研究は、二酸化炭素の発生源をすべて網羅していない。つまり、この排出量の予測は控え目に見積もったものであるということだ。

 たとえば、農業や、森林伐採などの土地利用の変化に伴う排出量は含まれていない。現在、これらによる排出は合計排出量の24%を占める。さらに、化石燃料を地中から掘り出す際に大量に排出される二酸化炭素も含まれていない。カナダのオイルサンドから石油を採掘するには、同国が産出する天然ガスの3分の1近くを燃やす必要がある。

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