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セックスチャンスが大フィーバー。わたしはバッターボックスに立てるのか。~坂田ミギーのギリシャ、ガヴドス島でのテント生活~

7/4(木) 6:00配信

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 人気旅ブロガー・坂田ミギー初の著書。
 失恋と過労で、心身ともに瀕死……命からがら出発した、アラサー・独身・彼氏なしの世界一周ひとり旅。行き詰まり・生きづらさを感じているすべての人を、打開と気づきの旅路へと連れていく奇跡の旅行記『旅がなければ死んでいた』。
 本稿ではその中から少しだけ、中身をちょっとだけ。
 ギリシア・ガヴドス島で著者が全裸生活した日々のエピソードを! 

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わたしにとって、ギリシアのガヴドス島はパラダイスだった。

  毎日、海で泳いだり、木陰で昼寝をしたり、凧揚げをしたり、水と食料を買いに商店に行ったり、ほかのビーチまで歩いて遠征したり、島で出会った人たちと食堂でビールを飲んだり、パーティーに出かけたり。たのしいことは、いくらでもあった。

 ここで仲良くなった全員が、この島のリピーターだ。ガヴドスに惚れ込んで10年以上通っている友人アキスは熱弁する。

「この島は、ほかのギリシャのどの島にも似ていない。心からリラックスしてすごせるんだ。ポリスステーションはあるけど、警官はひとりしかいない。その警官も、とてもいい奴だ。この島では、警官が必要になるような事件は起こらないからね。たとえば、キミがその辺に荷物を置いて、その横で寝ていたとしよう。誰もレイプなんてしないし、誰も荷物を盗んだりしない。90%の人は何もしないよ。え? 残りの10%は何をするのかって? 寝袋をかけてあげるんだよ。風邪をひかないようにね」

 

 確かにこの島では、盗難の心配すら皆無だった。

 食堂では携帯電話やパソコンを充電させてもらえるのだが、みんなそれらをチャージャーに接続したまま、無警戒に放置している。テントを持っていない旅行者は、荷物を脇に置いて、砂の上ですやすやと眠っていた。

 女性がひとりでテント生活をするのは、他の国ではなかなか勇気のいることだが、ガブドスで不安になることは、一度もなかった。

 直感で「なんだかいいところかも」くらいにしか思っていなかった島だが、ここですごせばすごすほど、本当にいい島なのだと実感が増していく。

 すれちがえば、みんな笑顔で挨拶してくれる。テントの脇を通るとき、声をかけてくれる人も多い。バケーションシーズンのわりに、人がそんなにいないので、滞在期間が長くなるにつれて、顔見知りが増えていく。

 全裸の人ばかりだけれど、いやらしい雰囲気を持つ人は誰ひとりおらず、みんな思い思いに、自由に、ゆるやかにすごしている。笛を吹く人、編み物をする人、波とたわむれる人、犬とじゃれあう人、木や石を集めて家を建てる人。

 こんなおだやかな生活があるんだなぁと、これまでの人生で比類なきほど、やわらかいきもちで暮せていた。

 この島で友人と呼べる人もできた。人見知りな自分にとっては奇跡的な出来事なのだが、おたがいに全裸同士だからか、仲良くなるのがとても早い。

 外の世界では服やアクセサリー、持ち物など、外見で判断する要素が多いのだが、ここではまさに裸一貫での付き合いなのでノイズがない。服という装飾がないぶん、ダイレクトに通じ合うものがあるのかもしれない。

 全裸生活と聞いて「おっぱい見放題!」と思う男性もいるだろう。かくいうわたしも「外国人男性は本当にアレが大きいのか確認したい!」と、ふしだらに鼻息を荒くしていた。

 しかし、意外にも実際に全裸同士で接していると、そういう欲がなくなるらしい。男性と会話しているとき「おっぱい査定してくるのかな」と警戒して目線を追っていたのだが、彼らの視線がおっぱいや股間に移動することは皆無である。

 わたしもこの島に来たばかりのときは「股間を見ちゃダメだ」「見ちゃダメだ」「見ちゃダメだ」と某アニメの主人公のごとく念じていたが、いつからか自然と相手の股間は気にならなくなっていた。

 むしろ、全裸のときには気にならないものの、腰巻きをしている相手が無防備に座ったときに、パンチラならぬチンチラをしているときのほうが、俄然意識と目線がチンに向いてしまう。

 さて、仲良くなるスピードが早いと話したが、それ以降の展開も早いのがガブドス島のふしぎである。

 セックスに誘われる回数がやたら多いのだ。女性がいたら必ずセックスに誘わないといけないというローカルルールでもあるのかと疑ってしまうほど、知り合った男性の約8割が、隙あらばセックスはいかがですかとお誘いくださるのである。

 ギリシャは世界No.1のセックス回数を誇る国だと聞いてはいたが、まさかここまで積極的に取り組んでおられるとは大変恐れ入る。

 そんなセックスチャンス・エピソードをひとつお話ししよう。

 ガブドス島にある最南端のビーチ、つまりヨーロッパ最南端に位置するトリピティビーチはいいところだと、もっぱらの評判。せっかくなので行ってみようと1日1往復のバスに乗って向かう。ちなみに、公共の場(バスや船)では全裸ではなく、服を着るのがマナーだ。

 最南端のバス停コルフォスから、目的地のトリピティまでは歩いて約1時間。バスのドライバーに道を聞いて出発しようとしたら、同じバスでここまで来た甘いマスクの長身長髪の男性に話しかけられた。

 彼の名はマーティン。ドイツとインドのミックスで、絵描きをしているという。「一緒に行ってもいい?」と聞かれたので、誰か一緒のほうが歩く気力も湧き出るだろうと思い、了承した。

  猛暑のなか世間話をしながら、ふたりでテクテク歩いたり、丘をのぼったり、岩をおりたりして、無事にトリピティに到着。不便な場所にあるからか、広くて美しくビーチにもかかわらず、人はほとんどいなかった。数人いる先客は、もちろん全裸だ。

 マーティンもわたしも全裸になって泳ぐ。透き通ったあたたかい海で泳ぐと、自分のなかのわるいものまで澄んでいくような気分になる。

 水に入ってカラダの熱が鎮まったところで、木陰に並んで座ってランチを食べた。彼のカバンからは次々と食べ物が出てきて、まるで四次元ポケットのようだ。

 食後にのんびりとしていると、「このビーチはセックスするのに最適だと思うんだけど、どう思う?」と聞かれる。彼の意図するところが微妙だったので「そうかな。考えたことなかった。たしかにカップルが何組かいるね」と生返事。

 すると、またしばらくしてから「ボクはキミのこと、好きだよ」と、にっこり微笑むではありませんか。

 これ、もしかしたら、アレなんじゃないか……と確信して、身と股間を引き締める。だまっているのも悪いので「そう、ありがとう」と返すも、彼はまったく怯まずに誘い続ける。これが男前の自信なのか。それともセックス回数No.1の国ギリシャが、彼にチカラを与えているのか。

 

「ボクとセックスしない?」

 きたー! セックス警報発令きたー! 総員、第一種戦闘配置! 

「え? 突然なに? ここで?」と、冗談ムードを演出するも、彼はカバンをゴソゴソと探り、ジャジャーンとばかりにコンドームを取り出し「ちゃんと持っているよ」と、にっこりと笑う。

『天空の城のラピュタ』の洞窟シーンで、次々モノが出てくる主人公パズーのカバンを見て、ヒロインのシータが「なんでも出てくるのね」おどろくように、わたしも「なんでも出てくるのね(出てこなくていいのに)」と言ってしまうほどのサプライズ。

 マーティンは見た目だけじゃなく性格もよさげであり、わたしの「外国人との性行為への好奇心」もゼロではなかった。だが、ガブドスを出るまでに残された日数は、もうあとわずか。

 この短期間で彼を本気で好きになることもないだろうから「セックスした事実だけが残る」という結末になるのは目に見えていた。

 そして、あまり考えないようにしていたものの、心の奥底に沈めた箱のフタを開けてみれば、自分の痛んだ恋心はまだカサブタにもなっておらず、傷口が膿んでぐちゃぐちゃなままだった。

 とてもじゃないが、あたらしい男性とセックスするような気分にはなれなかった。バッターボックスに入るどころか、ネクスト・バッタース・サークルにさえも怖くて入れない。

「ごめん」と断ったら、彼も「わかったよ」と微笑んでくれたので、ふたりで来た道を戻ることにした。サンキュー、マーティン。

 帰り道でも再度「ねーねー、しようよー」と食い下がってきた、彼のハートの強さは見習いたい。しかし、わたしもいい年なので、ここで尻軽になるくらいなら、いっそのこと足軽になって、独身女一揆でも起こしたほうがマシである。敵将を倒しまくって出世したあかつきには、独身の女性にもやさしい政治をまっとうする所存である。

 余談だが、テントで性行為をするのは、野外でしているのとほぼ同じ勢いで、音が聞こえてしまう。このような静かな島では、音量を控えめにするよう注意が必要だ。

 あと、照明をつけていると、テントの外からシルエットが丸見えになるので、他人に見せる趣味でないのであれば、消灯してからのまぐわいをおすすめする。

 以上が、ガヴドス島でのテント生活で得た知見である。

 活かせる場面は、特にない。

 といったような、笑える! 元気が出る! 感動ノンフィクションの世界一周ひとり旅の話が詰まった坂田ミギーさんの著書『旅がなければ死んでいた』を興味をもった人はぜひ! 

文/坂田 ミギー

最終更新:7/4(木) 6:00
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