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「学習行動」はRNAを介して子孫に遺伝する:線虫の研究から明らかに

7/5(金) 19:11配信

WIRED.jp

回避行動の学習により発現する神経関連遺伝子

研究者らは、親と子の両方における回避行動が、いくつかの神経関連遺伝子の発現と関連していたことを発見した。これは、感覚刺激を伝達する感覚ニューロン経路、つまり脳神経系が遺伝的回避行動において重要であることを示唆しているという。これをさらに突き詰めるため、緑膿菌に曝露した母線虫とその子孫において発現した遺伝子を、無害な大腸菌に曝露した線虫のものと比較すると、感覚ニューロン(ASIニューロン)における「daf-7」の発現が遺伝的回避行動と強く関連していたことがわかった。

興味深いのは、遺伝子操作によって「daf-7」を無効化すると、親の回避行動に違いは見られなかったものの、その子どもに回避行動が受け継がれなかったことだ。つまり「daf-7」は子孫の回避行動に不可欠であり、これが継承されるには何らかのRNA調整因子が生殖細胞に組み込まれなくてはならない。

「この危険回避を受け継ぐプロセスには、piRNAと呼ばれる小分子RNA活性が必要です」と、マーフィ博士は言う。piRNA(PIWI-interactin RNA)は、線虫における世代間のエピジェネティック遺伝経路に関与しており、遺伝子発現を抑制し、間接的にDNAのパッキングを調節していると考えられている。

研究グループは、piRNAに関連するタンパク質の量が緑膿菌の曝露によって著しく変化することを確認した。さらにpiRNA関連のタンパク質は子孫の「daf-7」発現の増加にかかわっており、遺伝的回避行動に重要であることを示した。

「daf-7」の発現による回避行動はその後4世代にわたって確認され、子孫の生存に直接影響し得ることが報告されている。しかし5世代目には、そのような回避行動の情報は薄れたとみられ、線虫は再び緑膿菌に引きつけられるようになった。この場合、「daf-7」の発現も基礎レヴェルに戻っていたという。

しかし、「daf-7」がいったい「どこで」発現するのかは、いまだ謎のままである。緑膿菌の感染に対する反応そのものが生殖細胞のpiRNAの変化を直に促すのか、はたまた緑膿菌が生命を脅かすものだと「学習」したときに神経系で発現するのかによって、意味合いが違ってくるからだ。

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最終更新:7/5(金) 19:11
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