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「学習行動」はRNAを介して子孫に遺伝する:線虫の研究から明らかに

7/5(金) 19:11配信

WIRED.jp

神経細胞内で合成される小分子RNA

イスラエルのテルアヴィヴ大学で生命科学および神経科学で教鞭をとるオデド・レシャヴィ博士率いる研究グループは、同じく6月6日付の「Cell」で発表された論文で、まさにこの「学習による遺伝子の発現起源」について追究している。彼らは、飢えや気温などの環境的ストレスが引き金となり、子孫の栄養関連の遺伝子発現に関わることが知られていた「siRNA」と呼ばれる別の小分子RNAに焦点を当てた。

線虫は、必須な栄養素をもつ食物を効率よく探り当てるために、その「におい」に引きつけられる。研究チームは、そのためには線虫の神経系でsiRNAが合成されなくてはならないことを発見した。言い換えると、神経系でsiRNAが合成されないように遺伝子操作された線虫は、食べ物を効率的に探すことができなかったのだ。

また、食物探索行動を学習した個体の生殖腺を、食物探索行動に欠陥のある遺伝子操作されたものと比較すると、1,200を超える量のsiRNA増加が見られた。さらなる実験の結果、このうち189のsiRNAは3世代目の子孫にまで受け継がれたことを報告している。

「この発見は、現代生物学における最も基本的な信条のひとつを覆すものです。長いあいだ、脳活動は子孫の運命にまったく影響を及ぼさないと考えられていました」と、レシャヴィ博士は説明する。

ヴァイスマン・バリアと呼ばれる生物学の法則は、かつて生殖細胞への情報は環境による影響から隔離されていると提唱した。しかし研究チームは、前述の危険回避行動の遺伝と同様、この食物探索行動の遺伝は少なくとも3世代に渡って持続することを確認している。

研究者たちはこれまでにも、線虫のなかの小分子RNAが世代を超えた変化を生み出すことを知っていた。しかし、神経系からの複世代にわたる情報伝達の発見は、まさに生物の適応における遺伝子学的真髄ではないだろうか。「神経系は体の反応だけではなく環境からの反応まで統合できるという点で独特です」と、共著者のひとりである研究員のイタイ・トーカーはコメントしている。「それが子孫の運命すらコントロールできるという考えは驚くべきものです」

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最終更新:7/5(金) 19:11
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