ここから本文です

中国全土で砂漠・荒地が農地に変わる理由

7/6(土) 12:11配信

Wedge

増産の中核はローテクの温室

 施設園芸の伸長は、野菜消費の増加を見越してのもの。2011年に「全国野菜産業発展計画(2011-2020)」が発表された。今後の人口増加と都市への人口流入、生活水準の向上を考慮すると、商品として流通する野菜の消費量が増えると予測。これによると、施設栽培の野菜は2020年に42万ヘクタールの増産が必要だ。日本の耕地面積は442万ヘクタールだから、そのおよそ10分の1に相当する。

 ところで、中国がすでに施設園芸大国であることは、あまり知られていない。施設園芸の面積が世界一というのは、そもそも国土が広いので驚くには値しないかもしれない。

 しかし、国民1人当たりの面積でみても、イスラエルに次ぐ2位と高いのだ。軒の高い温室はごくわずかで、大半を占めるのがいわゆるビニールハウスや、中国ならではの「日光温室」と呼ばれる簡易な温室だ。

 これは、かまぼこを縦半分に割ったような形をしている。北側に土塀を築き、南側に半アーチ形の骨材を設置してフィルムを張る。日光を最大限取り込んで加温をし、日がかげると屋根に載っている布団のような厚手の布を引きおろし、保温する。山東省に特に多く、中国の首都圏や、日本に供給する野菜の栽培に使われる。

 新疆でもこのタイプの温室を増やしたいと考えている。しかし、砂地が多く、黄土地帯のように粘土を版築(板枠の中に土を入れて突き固めること)で固めて土塀を作ることができない。現地にある素材で保温効果の高い日光温室を作れるよう、新疆農業大学や陝西省にある西北農林科技大学の学者らが研究を進めている。

 全国野菜産業発展計画(2011-2020)の定める増産の屋台骨を支えるのは、オランダ式の温室ではなく、ビニールハウスや日光温室といった低コストの施設だ。北京や上海でオランダに学んだ最新鋭の施設を増やす一方で、費用対効果の高いローテクの温室を広げて量を確保する。

 中国農業のニュースというと、オランダ式のガラス温室の導入や人工光の植物工場に目が行きがちだ。だがそうした華のある施設の拡大と同時に、ローテクの温室の普及と改良が国の肝いりで進められている。

山口亮子 (ジャーナリスト)

2/2ページ

最終更新:7/6(土) 12:11
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2019年10月号
9月20日発売

定価540円(税込)

■特集 再考「働き方改革」―先進企業が打つ次の一手
■ホルムズ危機が問う安保法制に残された課題
■GSOMIA破棄が示した韓国・文政権の野望

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事