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住商が「フィリピンバナナ」から撤退したわけ

7/8(月) 6:00配信

東洋経済オンライン

 だが、住商が撤退を発表した6月18日と同じ日、東京都内である記者会見が行われていた。フィリピンのスミフル系農園で働いていた労働者による訴えだ。収穫したバナナを洗浄して箱詰めする梱包工場の労働組合「ナマスファ」のポール・ジョン・ディゾン委員長による訴えは切実なものだった。

 労組側は、スミフル・フィリピンと労働者の間に雇用関係があると主張。しかしスミフル・フィリピン側は、スミフルの業務委託先と労働者の間に雇用関係はあるが、スミフル・フィリピンと労働者の間に雇用関係はないと主張。両者の主張は真っ向から対立していた。

 だが、2017年6月にフィリピンの最高裁判所がスミフル・フィリピンと労働者らの間に直接の雇用関係があると認定した。これを受け、労組はスミフル側に正社員化や労働環境の改善などを要求。スミフルに対して団体交渉に応じるよう求めたところ、スミフル側が拒否。労組は2018年10月からストライキに突入した。

■射殺や自宅銃撃、放火の被害も起きている

 このストライキが始まった後、組合員を狙った複数の銃撃事件が発生した。2018年10月31日には組合員の1人が射殺される事件が発生した。来日したポール委員長も被害者の1人で、自宅が銃撃されたり、放火されたりしたという。

 確かにフィリピンの治安情勢はよいと言える状況にはない。特にミンダナオ島では武装勢力に対応するため2017年5月に戒厳令が発令され、再三延長されていまだに解除されていない。労組が2018年10月に行ったストライキでは軍や警察が介入し、組合員が負傷する事態にもなった。

 銃撃や放火などの実行犯は特定されていないが、ポール委員長は「銃撃や放火などの事件はストライキ後に起きており、労組の活動の妨害が意図されている」と主張。スミフルに出資する住友商事に対しても、問題解決に尽力するよう要求した。

 しかし、住商はスミフル株を売却することを決めた。「株式の売却は労組の要求から逃れるためではないか」との東洋経済の質問に対し、住商は「スミフル株売却と労働問題の間に関係はない」と明言する。撤退発表日にポール委員長らが会見したのも、単なる偶然であるという。

 フィリピンの最高裁が雇用関係を認定したことについて、「スミフルの委託先企業の一部社員とスミフルの間に雇用関係があるとされたのは事実であり、真摯に受け止めている」とコメントするものの、「現地経営陣は適切に対応している」というのが住商側の説明だ。

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最終更新:7/8(月) 11:53
東洋経済オンライン

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