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人食いライオンの原因にも、実は怖いヤマアラシ

7/9(火) 18:16配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

100人以上襲った「ツァボの人食いライオン」も被害者だった、研究

 1965年、雑誌「アウトドア・ライフ」にケニア人ハンターがライオンに襲われたという記事が掲載され、このライオンは「ダラジャニの人食い」として一躍有名になった。1965年は深刻な干ばつのせいで獲物が減っており、ライオンが人間を襲う事件がケニア南部で複数発生していた。

写真:鼻にヤマアラシの針が刺さったダラジャニの人食いライオン

 ただし、ダラジャニの人食いにはある特徴があった。ヤマアラシの針が鼻に刺さっていたのだ。

 このたび、ライオンとヤマアラシとの関係について初めて本格的な調査が行われ、ライオンが受ける被害とその意外な影響が明らかになった。論文は学術誌「Journal of East African Natural History」5月号に掲載された。

 米シカゴにあるルーズベルト大学の研究者で研究チームを率いたジュリアン・カービス・ピーターハンス氏は、ダラジャニの人食いの死骸を詳しく調査し、ヤマアラシの針が鼻の中に15センチ以上突き刺さり、脳のすぐ近くまで達していたことを発見した。

 このライオンが人を襲った原因が、ヤマアラシの針にあることはほぼ間違いないと、カービス・ピーターハンス氏は言う。鼻に針が刺さったライオンはうまく狩りができず、徐々に衰弱して、追い詰められた末に人間を狙うようになったのだろうと、氏は推測する。

 論文によれば、ライオンは通常、ヤマアラシを避けており、獲物が不足しない限りは手を出さない。ヤマアラシを狩ろうとすれば、ライオンは重大なけがや、最悪の場合は死の危険にさらされる。そしてけがをしたライオンは、人間、ウシ、ウマなどを襲うようになるという。

 こうした傾向がより顕著になるのは干ばつが起こったときだ。1965年は、ケニアで異常な乾燥が続いた年だった。研究チームはダラジャニの人食いのほかにも、同じ年に人を少なくともひとり殺して射殺された別のライオンも調査している。このライオンの場合は、亀裂の入った歯の1本に、ヤマアラシの針が刺さっていた。

「ヤマアラシがライオンの好物でないことは確かです」と、カービス・ピーターハンス氏は言う。人間も彼らの好みの獲物ではないが、ライオンがけがをしている場合は、「動きの遅い人間たち」を狙うのは理にかなっている。

 今回の発見はライオンの保護にとって重大な意味を持つ。たとえば、ヤマアラシの針が刺さったライオンに対しては、移動獣医チームによる治療が今まで以上に重視されるだろう。また、ほかの動物の死因になりうるという点でも、ヤマアラシの存在は重要だ。特に、近年干ばつが過酷かつ頻繁になりつつある地域では、ヤマアラシに関連した被害が拡大する可能性もある。

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