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「上級国民」は逮捕されない?死亡事故を起こした人が受ける4つの責任【FINDERSビジネス法律相談所】

7/9(火) 18:00配信

FINDERS

日々仕事を続ける中で、疑問や矛盾を感じる出来事は意外に多い。そこで、ビジネスまわりのお悩みを解決するべく、ワールド法律会計事務所 弁護士の渡邉祐介さんに、ビジネス上の身近な問題の解決策について教えていただいた。

(今回のテーマ)
Q.池袋の街中で高齢者が運転する車でブレーキとアクセルの踏み間違えにより、母子が亡くなるという、起こるべくして起こった事故がありました。遺族の気持ちを思うとやりきれない気持ちになりますが、加害者は高齢で逃亡の恐れなしということで逮捕されていません。今後、加害者はどのような罰則や補償の段取りをとるのでしょうか?

「上級国民」は逮捕されないって本当?

先日の池袋の高齢者による交通事故で加害者が逮捕されないことで、ネット上などでは加害者の経歴を理由に「上級国民」だからといって逮捕されないのはおかしいという声が多く挙がっていました。

一般に誤解されやすいのですが、「逮捕」とは、犯罪を犯したが故になされるわけではなく、犯罪を犯した疑いがある(逮捕理由がある)段階の人を捜査するにあたって、身柄拘束の必要性がある場合になされる手続きです。ですから、そもそも犯罪を犯した疑いが濃厚だったり、発生した結果が重大だったりしたからといって、かならず逮捕されるというもわけでもありません。

逮捕の必要性については、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるかどうかという点で判断されます。判断において考慮される事情としては、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他さまざまな事情から判断することとされており(刑事訴訟法規則143条の3)、考慮要素も定められているのです。

ですから、「上級国民」という言葉はさておき、社会的な立場が高い人の場合、逃亡の恐れは低いだろうということも判断の考慮要素にはなるのです。

この部分だけを取り上げると、「地位が高ければ逮捕されないのはおかしい」という意見にもつながりやすいと思います。でも、そもそも逮捕という手続きは、犯罪の有無を確定させるための過程で必要な場合にされる一時的な身柄拘束にすぎず、被疑者に対する刑罰ではありません。地位が高いと刑罰が軽くなるという話であれば不公平ですが、犯罪や刑が確定しない逮捕手続きの段階であるという理解を前提にすると、また見方は変わってくるのではないでしょうか。

本題からは外れますが、誤解の多いところでは保釈金の話があります。ニュースなどで多額の保釈金を支払って身柄解放されたという時に、「多額の金を払える人だけ身柄を解放されるのはおかしい」という声が上がる場合がありますが、そもそも保釈金は担保として預けるだけで、逃亡しなければ後で戻ってくるもので、保釈金の額も被疑者の資産状況によってまちまちなのです。

被疑者がどの程度の金額を担保にとられれば逃亡しないかという観点から金額が決められるものなので、保釈金は資産が多い人であれば担保金は高額になり、少ない人なら少ない額になります。犯罪者として刑が確定したわけではない被疑者の段階では、保釈金によって逃亡の可能性がなくなるといえるならば、そもそも不必要な逮捕はすべきでないのです。

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最終更新:7/9(火) 18:00
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