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80歳で亡くなるまで、作り続けた125のミニチュア建築|外国人修道士が築いた夢の世界「アヴェ・マリア・グロット」(アメリカ)

7/10(水) 11:06配信

サライ.jp

文・写真/大井美紗子(海外書き人クラブ/アメリカ在住ライター)

アメリカ・アラバマ州の北部に、カルマンという田舎町がある。バーミングハム国際空港から車で1時間ほどの、森に囲まれたのどかな町だ。この場所で世界に名だたる建造物――ギリシャのコロッセウム、バチカン市国のサン・ピエトロ広場、広島の世界平和記念聖堂など――を一度に見ることができると言ったら、まさかそんなはずはない、と誰もが笑うに違いない。

廃材をリサイクルしてミニチュア模型に

世界中の建造物といっても、ミニチュア模型である。そういうと「なぁんだ」とため息をつく方もいるかもしれないが、これがただの模型ではないのだ。まずは実物をいくつか見ていただきたい。

左下に見えるのがギリシャのコロッセウム、下中央にある赤い屋根の建物はイタリアの聖シクストゥス聖堂。そのほかエジプトのピラミッドやイタリアの聖ポール・バジリカなどが、ひとつの町を成すように並んでいる。

これらはすべて、石ころや貝殻、割れた皿やガラス、自転車の部品など、いってしまえば「ゴミ」のような素材だけを使って作られている。

止まった腕時計が建物のシンボルに使われていたり、巻貝が屋根の先端に飾られていたり。「あの部分は何でできている?」と考え、「ここにこの素材を配したか!」と唸るのが楽しい。

製作したのは、ドイツのバイエルン州からこの地に派遣されたヨゼフ修道士だ。これらのミニチュア作品群はアラバマ州・カルマンの聖バーナード修道院に保存されており、「アヴェ・マリア・グロット」と呼ばれている。

ドイツからアメリカに渡り、ミニチュア作りに没頭

ヨゼフ修道士は1878年にバイエルン州のランツフートで生まれた。まま母に育てられたが折り合いが合わず、本名を自分で「ヨゼフ」と変えて修道士を志す。そしてわずか14歳でアメリカへ渡った。

派遣された聖バーナード修道院では、ガスの管理をするよう命じられた。ガソリンがポンプでくみ上げられ、測量機のメーターが上がっていくのを観察するだけの退屈な仕事だ。1日17時間ひたすら測量機を見るだけの日々に、ヨゼフ少年はすっかり飽きてしまった。そこで仕事の合間に、辺りに転がっている石ころで工作をすることにした。キリストやマリアの像の周りに石ころを積み重ねて、小さな祠(ほこら)のようなものを作ったのだ。

普通なら「仕事中に何をやっとる!」と叱責されるところだろう。しかし修道院の先輩たちは、もっと作れと激励してくれた。丹念に作られた祠に、「これも神への奉仕の形」と思わせる何かがあったのかもしれない。修道院を訪れる人からは、ぜひ売ってほしいという声も上がった。

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最終更新:7/10(水) 11:06
サライ.jp

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