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「回れ」「伏せ」など、犬に指示できる「着る振動装置」を開発

7/11(木) 18:54配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

遠隔操作式のバイブレーターを内蔵、様々な状況で活用できる可能性

「老いた犬に芸は仕込めない」と言われるが、少なくとも中年の犬「タイ」は、新しい「芸」をみごとに習得してみせた。

【動画】ベストの振動による指示に反応する犬

 ラブラドール・レトリバーとジャーマン・シェパードのミックスで6歳のタイは、イスラエルのネゲブ・ベン=グリオン大学の研究チームが開発したバイブレーター内蔵の犬用ベストを着用。聴覚的、視覚的な合図を出さなくても、振動に従って指示通りに回転したり、体を伏せたり、前進、後退したりできたのだ。

 7月9日から東京で開催された「IEEEワールド・ハプティクス・カンファレンス」で、ベン=グリオン大学のチームは研究成果を発表し、バイブレーターの振動は声による指示と同じくらい効果的だと報告した。もちろん、タイの好物であるソーセージをご褒美に与えたことも、短時間で指示を覚える助けになっている。

 ハプティクスとは触覚に関わる技術のことで、研究を率いたヨアブ・ゴラン氏は、振動する犬用ベストには実用的かつ重要な用途があると説明する。氏はベン=グリオン大学の博士課程で機械工学の研究に取り組んでいる。タイは活発すぎた子犬時代に盲導犬の試験に落ち、ゴラン氏はそのとき、タイの飼い主になった。

「働く犬たちとのコミュニケーションは今も、視覚的、聴覚的なものが大部分を占めている」と、ゴラン氏らがカンファレンスで発表した論文に書かれている。しかし、救助犬や探知犬はしばしば、がれきの下や狭い空間など、人が見えないところ、人の声が届かないところで働く。遠隔操作できるバイブレーター内蔵のハプティック・ベストを着用させれば、そのような状況でも、人が犬に指示を与えられる。また、振動による指示は音を立てられない状況にも適している。

 警察犬や軍用犬が騒々しい場所で任務にあたる場合も、ハプティック・ベストは有効かもしれない。例えば、銃声が鳴り響く交戦地帯では、声によるコミュニケーションは難しい。人はもちろん、犬たちも、「航空機のごう音が聞こえるような状況では、イヤーマフで耳を守ることがあります」とゴラン氏は話す。

 さらに、振動は言語と無関係だ。タイが理解できるのはヘブライ語の指示だけだが、ハプティック・ベストを着せれば、母語にかかわらず誰でも指示を出せる。また、特定の飼育係やトレーナーの声だけに耳を傾ける犬もいるが、振動による指示であれば、相手を問わない可能性が高い。

「私が関わっている環境保護のために働く犬の世界では、この振動技術は大きな可能性を秘めていると思います」と語るのは、アフリカ野生生物基金による取り組みをはじめ、アフリカの密猟対策プログラムに協力する探知犬のトレーニングをしているウィル・パウエル氏だ。

「犬は五感によって周囲の環境を認識します。なかでも、触覚は犬にとって驚くほど重要です」とパウエル氏。「離れた場所での作業を伴う場合、この技術は犬のトレーニングに恩恵をもたらすでしょう」。なお、パウエル氏は今回の研究に参加していない。

 犬をペットとして飼っている人にとっても、ハプティック・ベストは遠くから犬を呼んだり、指示を与えたりするのに役立つだろう。例えば、犬が単独で外に出ることを許されている場合、飼い主がボタンを押すだけで、帰宅を指示できるかもしれない。また、言葉が不自由な飼い主にとっても、振動は犬とコミュニケーションを取る新たな手段になり、耳が不自由な犬でも、ベストが意思疎通の助けになるとゴラン氏は期待している。

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