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「営業妨害だ!」と言われてもクチコミを消さなかった理由

7/11(木) 16:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

今回は、ウェディングパークのスタートと、それに伴う苦難を見ていきます。※サイバーエージェントのグループ企業で、日本最大級のクチコミ数を誇るウエディング情報サイトを運営する「ウエディングパーク」。キーエンス出身の敏腕営業が飛び込んだネットビジネスの最先端で、時代の寵児・藤田晋氏とかかわりながら育てたサイトは、これまで何度も危機を乗り越えながら、現在の地位を獲得しました。本連載は、書籍『僕が社長であり続けた、ただ一つの理由』から一部を抜粋し、熱血社長による、ウエディングパーク立ち上げの道のりを紹介します。

想像以上に寄せられた、結婚式場からの「お叱りの声」

クチコミが掲載された結婚準備の情報サイト、そして広告主のホームページに誘導した分だけの広告費が発生するクリック課金という新しい事業モデルで、2004年6月、約半年の準備期間を経て、ウエディングパークは新たにスタートしました。

しかし、その船出は極めて厳しいものでした。ここから会社には、全国の結婚式場から怒濤のクレーム電話が殺到することになったからです。端的にいえば、「勝手に式場について、あれこれ書くとは何事だ」というものでした。

クチコミ情報サイトですから、ウエディングパークと有料契約を結んでいない結婚式場についても、ユーザーからクチコミが集まってきます。

もちろん、中には式場にとってありがたい、ユーザーならではの視点からのクチコミもありましたが、逆に式場としてはオープンにしたくない、辛口のクチコミもあったのです。こうした辛口のクチコミを、広告契約も結んでいるわけでもないウエディングパークが勝手に掲載するのはどういうことだ、というお叱りの声だったのです。

実は、当初から懸念はありました。創業者の二人は、ウエディングビジネスを熟知していましたから、先にも少し触れたように、クチコミサイトにすることには反対だったのです。ウエディングはイメージが極めて大事になるビジネスです。そんなところに、イメージに影響を与えるようなクチコミなんてものを勝手に出したらどういうことになるか。絶対にうまくいかない。そんなものが掲載できるわけがない、と。

しかし、僕は首を縦に振りませんでした。素人だからこそ、やってみないと分からないと思う、と返しました。まだ、今のようにSNSもブログもなく、個人がいろいろな情報を投稿したり、評価したりするような空気はまったくありませんでしたが、特定の業界では「アットコスメ」など、クチコミが人気になって成り立っているサイトもありました。

何より、結婚式をすでに経験していた僕自身がリアリティを持っていました。クチコミの情報は、きっとこれから結婚式を挙げていく人たちは知りたいだろうと思ったのです。コンテンツとしては極めて魅力的だと。だから、一旦やってみましょう、とかなり強気で押し切ったところがあったのです。最終的には、藤田社長が「クチコミサイトでいこう」と後押しをしてくれました。そんなふうにして、クチコミサイトにすることが決まった経緯がありました。

それだけに、オープンしてクチコミへのクレームの嵐になって、「そら、見たことか」となってしまったのです。創業者二人と僕との関係性は、微妙になりました。「言ったのは、日紫喜さんだよね」という空気の中で、ギクシャクが始まりました。幹部同士がなかなか共感し得ないジレンマに、いきなり創業時に襲われることになってしまったのです。

世の中的な認知として、当時はまだクチコミといえば悪口を書かれる、というイメージが強くあったのかもしれません。広告を出す場所、という認識もあまりなかった。悪いことを書かれてしまっては、ブランドイメージが下がってしまいかねないからです。

しかもウエディング業界では、インターネットの浸透がまだまだ進んでいませんでした。そうした認識すらなかったのが、本当のところでした。ところが、クチコミ情報を見たユーザーが、結婚式場に確認をしてしまったのです。

ページをプリントして、「こんなことを書かれていますけど、実際どうなんですか?」と聞きに行ったカップルも多かった。そこから、「このサイトはなんだ!」ということになっていったのでした。以来、結婚式場側には、かなりナーバスにクチコミをチェックされるようになりました。

僕が一つショックだったのは、「ウエディングプランナーが傷ついているんだ」という指摘を受けたことでした。一生懸命接客をしていたのに低い評点をつけられてしまったりする。「表情は笑顔だったけど、やってることはダメだった」などと書かれたりする。ウエディングプランナーがすごく残念がっていて、モチベーションを落としてしまっている。自信を持って接客ができない。どうしてくれるんだ。お前らのせいだ、と。

式場の評価だけではなく、従業員のモチベーションにも影響が出るくらい、全国の式場からお問い合わせをもらってしまうことになったのです。お叱りの声は、想像以上でした。そして、戦わなければならなかったのは、「クチコミを消してほしい」という、たくさんの声でした。社外だけではありません。社内からも、その声は上がっていたのでした。

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最終更新:7/11(木) 16:00
幻冬舎ゴールドオンライン

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