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映画「新聞記者」の異例ヒットが示す新しい市場

7/11(木) 6:00配信

東洋経済オンライン

 映画『新聞記者』が話題だ。興行収入は今月4日の時点で早々と1億円を突破。7月6~7日の映画興行成績ランキング(興行通信社)では堂々8位にランクイン。サイト「映画.com」では「日本映画で政治がテーマで、この勢いある興行はかなり珍しい」と評され、公開11日目時点の7月8日には17万人以上を動員し興行収入2億円に達した。

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 この映画、私は公開2日目に渋谷で、そしてこの原稿を執筆すべく再度お台場で鑑賞した。思ったのはまず政治的メッセージ以前に、作品として非常に優秀だということだ。

 松坂桃李は終始抑制的な演技で「イケメン俳優」の枠にとどまらない新しい側面を見せているし、田中哲司の鬼気迫るオーラも圧倒的(往年の成田三樹夫の影を確かめた)。北村有起哉と岡山天音の「東都新聞社会部」の面々も、淡々とした映像の中に人間味を振りまいているし、西田尚美は今や、不幸な物語を背負った中年女性を演じさせたら日本一だ。

■「日本映画にない」強烈な差別性のある映画

 加えて、何といっても吉岡エリカ役のシム・ウンギョンがよかった。政治的なイメージが付くことを恐れた某有名女優らに断られたという報道もあったが、もしそれが事実としたら怪我の功名。「日本人の父と韓国人の母の間に生まれたアメリカ育ち」という特異な設定と、たどたどしい日本語が、「正義派の記者」という(熱く描かれがちな)キャラクターの体温を下げ、観客の印象をニュートラルにしたと思うのだ。

 ただやはり、この映画が話題を呼んだ理由の本質は、「現在進行形のさまざまな問題をダイレクトに射抜く、これまでの日本映画にない新たな社会派エンタテインメント」(公式サイトより)という発想自体が、まさに「日本映画にない」強烈な差別性を持っていたことに尽きる。

 そんな映画『新聞記者』が、今後の映画界・エンタメ界に示唆する新しい市場ポテンシャルとは何か――。

 1つは「時事エンタメ」市場の可能性である。国際NGO「国境なき記者団」の「2019年報道の自由度ランキング」で日本は180カ国・地域中67位だったという(2018年も67位で、9年前の2010年は11位だった)。巷間言われているように、マスメディア報道での「忖度」が仮に事実だったとしても、マスメディア界に比べて映画界では、まだ比較的に表現の幅が担保されているだろう。

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最終更新:7/11(木) 6:00
東洋経済オンライン

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