ここから本文です

VAIOとダイナブック、再生の道は分岐点へ

7/11(木) 16:48配信

日経ビジネス

 かつてパソコン業界を席巻したソニーの「VAIO」と東芝の「ダイナブック」。VAIOは投資ファンドの出資を仰いで独立、ダイナブックはシャープ子会社となった。その両社が7月9日にそれぞれイベントを開き、再生に向けた取り組みをアピールした。

【関連画像】ダイナブックは7月8日に、法人向けノートパソコンを発売

 「いかに(VAIOという)ブランド力を維持できるかが、この5年間の課題だった」

 ソニーからの独立5周年を記念して7月9日にVAIO(長野県安曇野市)が開いたイベント。登壇した吉田秀俊社長は5年間の取り組みをこう振り返った。

 ソニーから切り離される形で2014年7月1日に発足したVAIO。収益改善へ、同社が進んだのが法人向けパソコンへのシフトだ。働き方改革を追い風に、「小型軽量のモバイルパソコンが法人のお客様に支持された」(吉田社長)。

 かつてはパソコン販売台数の9割が一般消費者向けだったが、「現在は法人向けが7割を超えて付随するサービスも伸びている」(同氏)。7月9日には12.5型で900gを切るノートパソコンを発表、法人向け事業のさらなる拡大を狙う。

 さらに新規事業として、ロボットを軸に電子機器の受託製造サービス(EMS)事業の強化を進める。7月9日には、年初に発表済みのロボットの開発・製造からサービス運用までの機能をまとめて提供するプラットフォームの拡充を発表。より低機能、低価格帯のロボット開発のサポートをしていく方針を打ち出した。

 業績そのものは好調だ。独立2年目となる16年5月期には黒字化を実現。具体的な数字は明らかにしなかったものの「前期も増収、営業利益は前期比で4割増になった」と吉田社長は話す。

鴻海グループの強み生かす

 一方、2018年10月にシャープの傘下に入ったダイナブック(東京・江東)。東芝時代の1989年に世界初のノートパソコンとして発売された「ダイナブック」は、今年で30周年だ。

 7月9日の記者会見で、ダイナブックの覚道清文社長は「鴻海(ホンハイ)精密工業グループとなって、機動的に動けるようになった」と新体制での利点を強調した。シャープの親会社であるEMS世界最大手の鴻海の部品調達力や生産基盤を活用することで、変化の激しいパソコン業界での「生命力」が高まったというわけだ。

 実際、ダイナブックは東芝時代に設けた中国・杭州の工場でパソコンを全量生産しているが、米中貿易摩擦を受けて全体の約1割に当たる米国向けを台湾で生産することを検討している。米国による対中制裁関税「第4弾」が発動見送りとなったため、覚道氏は「いったん保留になったが、(事態が動けば)早急に対応できる」と強調した。

 シャープ傘下に入って最も変わったのは、コスト意識だという。シャープも鴻海傘下でコスト管理を徹底、収益改善につなげたが、ダイナブックでも「費用支出の決済基準が厳しくなり、現場でコスト意識が高くなった」と覚道氏は言う。

 そうした努力もあって、18年4~9月期に47億円の赤字だったダイナブックの営業損益は、同10月~19年3月期に黒字転換。20年3月期は20億円の営業黒字を目指すという。

 「再生」をアピールしたVAIOとダイナブック。だが、両社が描く将来像には違いがあることも浮き彫りになった。

 ダイナブックの覚道氏は7月9日の発表会で「年度単位で黒字を定着させたうえで上場したい」と意気込んだ。かねて21年度の新規株式公開(IPO)の方針を示していたが、足元の業績回復ぶりを受け、改めてその考えを示した格好。一方、VAIOの吉田社長は「まだまだ考えることは多い」として、IPOには慎重な姿勢を貫いた。

 この違いから見て取れるのは、ダイナブックが資金調達をしながらスケールメリットを追求するのに対し、VAIOは小粒でも得意分野で生き残ろうということ。マスマーケットを目指すのか、ニッチマーケットで勝負をかけるのか。かつて栄華を誇った2つのパソコンブランドはそれぞれ違う道を歩み始めているのかもしれない。

佐伯 真也、中山 玲子

最終更新:7/11(木) 16:48
日経ビジネス

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事