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本部と店舗の関係について

7/12(金) 5:00配信

商業界オンライン

  巷間セブン-イレブンのフランチャイジーから出た文句?について、議論がやかましい。例えば、『週刊ダイヤモンド』誌6月1日号は「コンビニ地獄」という2流週刊誌並みの特集を組んで、一部不満オーナーの意見を全面的に支持?している。

 だが、セブン-イレブンに限らず、どんなフランチャイズチェーンにも不成績店は存在し、不成績店の多くがその不成績の理由を自らに帰さず、フランチャイザーのせいにするのは、極めて常套的な事象である。それは何も今更なことではない。今までもフランチャイズチェーンには、常に不成績故の不平不満分子が、一定の比率で存在した。

 というのもそれらフランチャイジーのほとんどは、既に投資を済ませており、それは返済しなければならない債務である。とすれば何とでも理由を付け、あらゆる事情を利用して、その文句を正当化し、フランチャイザーの条件緩和に努めることは、十分に予測できることである。

 成績を上げているフランチャイジーは、黙って成績を上げている。それを自ら言い出すことは、まずない。いや仮に言い出したとしても、メディアは取り上げない。マスメディアにとって重要なのは、不成績なフランチャイジーと好成績なフランチャイジーを公平に、いやその割合に応じて、取り上げることではなく、「ニュース」を創ることだからである。そして成功を伝えられる企業の「暗部」?には、十分なニュース・バリューがある。もちろんメディアは、あくまで事実を報道しただけ、という逃げ口上を用意している。さらにマスメディアによく思われたい政治家や官僚が、「審議会」まで創ってそれに対応するのもまた、これまで他の事件でも見られた、よくあることである。

 だが、ここでセブン-イレブンを初めとする一連の「事件」について言及するのは、それを月旦するためではない。この一連の問題には、2つの示唆があることを指摘したいからである。1つはそのきっかけが他ならぬ『働き方改革』から始まっていることであり、2つはこれが「本部と店舗」の暗黙の関係を示唆していることである。

 第1に、『働き方改革』が指摘していることは、突飛なことでも意外なことでもない。簡単にいえば、休日をちゃんと取り、勤務時間を守り、残業手当をちゃんと払え、ということである。実行している企業は、何十年も前から実行している。私がかつてやっていた事務所などとても企業とはいえないが、社員に残業させたことは一度もない。残業手当など、余計な費用は払いたくなかったからである。不遜なことをいえば、社員に残業させるくらいなら、お客に迷惑をかけた方がいいし、それが出来ない場合は、私1人が残業すればいい、と考えていた。

 いや私自身、既にあちこちで言いふらした?ことだが、60年前、1人暮らしの私が最初に就業したとき、たとえ変人といわれても完全に「9時5時」を守り、5時を10分過ぎて会社にとどまったことは、一度も無かった。残業手当が出るなら話は別だったが、その気配は皆無だった。そのことを今に到るも、一度も後悔したことははない。にもかかわらず、流通業界で今になってやっとそれが話題になるのは、そのような「働き方」が普通ではなかった証拠である。それを今、普通にしようというのは、当然でしかない。

 私が不審に思うのは、それが今、問題になるのは、バイトおよびパート労働の利用が増えた、若い人がついてこなくなった、採用に影響する……という間違った事情に理由を求めるものがいる、という事実である。それは「今、問題になった」のではなく、「これまでも問題」だったのに、見逃してきたということでしかない。では逆に労働力需給が今のように緊迫しなければ、過去の「働き方」を続けさせる、とでも考えているのだろうか。

 企業は、以上のような正当な「働き方」を前提に成績を上げるのでなければ、企業とはいえない。

 さて、もう1つの示唆は、本部と店長の関係である。過去のチェーン理論では「ストア・マネジャー」の任務は、店舗でのコスト削減であり、当然ストア・マネジャーは、専ら本部の指示に従う存在、ということになっていた。時代は変わり、今、それをストレートに実行しているチェーンは、ごく一部の限られた企業になった。

 多くのチェーンが「ストア・マネジャー」ならぬ「店長」の重要性を認識するようになり、店長は単に本部の指示に従っていればいい存在ではなく、もっと自主的に動ける存在に変わってきた。だが、そのような企業においても、他ならぬ『働き方改革』で、部下がどんどんそれぞれの定時で退勤する、店長はそれを止めることはできない、だが止めることができなければ店長の任務が果たせない、そのとき、店長はどうするか、という問題が発生しているように思われる。

 示唆とは、フランチャイズチェーンではフランチャイジーがフランチャイザーに「文句が言える」が、普通のチェーンの店長は、問題があってもそれについて「本部に文句が言えない、相談ができない、言い出しかねる」ということである。本部は、今や店長は単に本部の指示に忠実に従うだけの存在、すなわちかつての「ストア・マネジャー」とは異なる、と見なしている。

 ところが多くのチェーンにおいて、店長は、意識するかしないかは別にして、その心理において「本部には文句を言えない、逆らうことができない、逆らえば自分の評価が落ちる、結局は本部の指示に従うしかない」ということが暗黙の了解、になっていないか。

 とすれば一方で「働き方」改革を進めるのは当然として、店長に「本部には逆らえない」と思わせるのではなく、文句を言えば評価が落ちると恐れさせるのではなく、むしろ問題があれば、それを率直に具申して、ともに対策を考えてくれるという本部の存在意義を、明らかにすべきではないか。

 もちろんどのチェーンにも、実力不足の店長、マイナス点を恐れて問題を本部に知らせず自分1人で背負い込んで解決しようとする自己犠牲店長、問題をうまく本部の補助手段を活用してちゃんと解決できる店長など、さまざまな店長がいる。同じセブン-イレブンに、成績抜群のフランチャイジーと文句タラタラの不成績フランチャイジーがいるのと、同じである。だが本部の任務は、いい店長と悪い店長を仕分けることではなく、いかに「困っている店長」を早く発見して、彼あるいは彼女を「助ける」か、もっといえばその「自助」を応援するか、ということにこそある。セブン-イレブン問題もその配慮に関わる。

 そう考えたとき、冒頭に述べたような事情にもかかわらず、しかも明らかに出店の余力があるセブン-イレブンが、急遽出店をストップさせシステムの点検整備に乗り出した、その理由も了解しうるように思われる。

※この原稿は島田陽介先生のアドレス宛に、メールアドレスを送付した方に毎月不定期に送られる「今月の提言」から抜粋したものです。

島田 陽介

最終更新:7/12(金) 5:00
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