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非ユダヤ人との結婚は「2度目のホロコーストのようなもの」? イスラエル教育相発言の真意

7/12(金) 14:19配信

ニューズウィーク日本版

<異教徒との結婚を通じた同化で戦後600万人のユダヤ人が失われた、というイスラエル極右の危機感>

イスラエルの教育相が、北米在住のユダヤ人が異教徒と結婚することをホロコーストに例えた。教育相の報道官が認めたという。

ラフィ・ペレス教育相は、以前は軍のユダヤ教指導者で、2019年6月にベンヤミン・ネタニヤフ政権の閣僚に任命された。7月9日に報道官がAP通信に対して認めたところによれば、ペレスは7月1日の閣議で「(異教徒との)同化はホロコーストのようなものだ」と発言した。インターネットメディアのアクシオスは、この閣議に出席していた3人(匿名)の発言を引用し、アメリカ在住のユダヤ人がユダヤ教以外の宗教を信仰する人と結婚することについて、ペレスが「2度目のホロコーストのようなもの」だと語ったと報じている。

閣議には、ユダヤ人民政策研究所のデニス・ロス議長や、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの米歴代政権で高官を務めたある人物も参加したと報じられている。この中でユダヤ人と非ユダヤ人の結婚が世界で増えていることが議題にのぼり、ペレスは、こうした結婚の結果は、過去70年の間に「600万人のユダヤ人民が失われた」ことに等しいと語ったという。

<アメリカのユダヤ人コミュニティーも反発>

アクシオスによれば、同国エネルギー相のユバル・スタイニッツがペレスの見解に反論。「まず我々は、アメリカ在住のユダヤ人を無視したり軽蔑したりするのをやめるべきだ。そして宗教だけではなく、それ以上に文化や歴史の観点から彼らをユダヤ人と認めるべきだ」と主張した。ネタニヤフは、アメリカ在住のユダヤ人がユダヤ教から離れていくのを食い止めるのは難しいと指摘し、彼らがよりリベラルになりつつあると感じていることを明らかにしたという。

ペレスは正統派ユダヤ教の指導者で、主に極右政党から成る統一右派連合の代表を務めている。彼らの強硬な見解は、イスラエル国内のリベラルな政治傾向と対立することが多く、時にはネタニヤフ率いるリクード党のようにより世俗的な右派グループとも衝突する。ペレスの今回の発言に対しては、イスラエルだけではなくアメリカのユダヤ人コミュニティーからも強い反発の声が上がった。

ユダヤ系団体「名誉棄損防止連盟(ADL)のジョナサン・グリーンブラットCEOは9日、「ユダヤ人が非ユダヤ人と結婚することを形容するのに『ホロコースト』という言葉を使うなんて信じられない。『ショア(ホロコースト)』を矮小化する発言だ」とツイート。「ショア」にはヘブライ語で「絶滅」の意味もある。

「ユダヤ人コミュニティーからあまりに多くのメンバーを遠ざける発言だ。こうした根拠のない主張は、人々を激怒させたり嫌な気持ちにするだけだ」

<米国務省も「宗教の自由」を懸念>

ドナルド・トランプ米政権は、イスラエルが領有権争いのあるエルサレムの全域、および同国がシリアから奪って占領しているゴラン高原を支配することを無条件で承認しており、ネタニヤフと親密な関係にある。それでも、米国務省は6月に発表した世界各国の「宗教の自由」に関する報告書の中で、イスラエルの宗教の自由について一部批判的な見解を示した。

イスラエルのイスラエル・カッツ外相は、7月16~18日にワシントンで開催される宗教の自由に関する外相会議に出席し、マイク・ポンペオ米国務長官と顔を合わせる予定だ。

(翻訳:森美歩)

トム・オコナー

最終更新:7/12(金) 14:19
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