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存在理由はないが秀作の『トイ・ストーリー4』 新旧おもちゃたちが問いかける人生の意味

7/12(金) 17:16配信

ニューズウィーク日本版

アクションで魅せ、最後にほろりとさせる

最初にはっきりさせておくと、『トイ・ストーリー4』にこれといった存在理由はない。前作で物語はきれいに完結した。おもちゃたちはアンディ少年が大人になるのを見届けて、次の持ち主ボニーに引き取られたのだ。

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ピクサーアニメに感動シーンは多々あれど、前作の結末ほど涙を絞ったのは『カールじいさんの空飛ぶ家』のオープニングくらいだろう。観客は自分のおもちゃに別れを告げるかのように、切ない気持ちになった。

以来、ピクサーが作った映画の半数以上はヒット作の続編。つまり『トイ・ストーリー4』も金儲けの道具かと勘繰りたくなるが、意外や意外、独創性あふれる楽しい秀作に仕上がった。

テーマはずばり「存在理由のなさ」。カウボーイ人形のウッディ(声はトム・ハンクス)は 自分が何のために生きているのか分からなくなり、悩んでいる。

昔はアンディの一番のお気に入りとして、おもちゃのリーダー格だった。なのに4歳の女の子ボニーにもらわれてからは、ままごとや着せ替えごっこに駆り出される仲間を見ながら埃をかぶる日々。子供を愛し、子供に愛されることが生き甲斐のウッディは昔を懐かしむ。

しかもボニーが保育園に上がると新たなライバルが出現し、がぜん不安が募る。ボニーが工作の時間にゴミ箱から拾った先割れスプーンで作った「フォーキー」だ。どう見てもガラクタなのに、ボニーに愛され、おもちゃとして命を吹き込まれた。

当初、自分をゴミだと思っているフォーキーは隙あらばゴミ箱に飛び込んでいく。ボニーがフォーキーを大切にしているのを知るウッディは、そのたびにゴミ箱から彼を引っ張り出す。

2世代の子供に愛されて

ある日、ボニーの一家は遊園地を目指してドライブ旅行に出かける。おもちゃたちも一緒だ。遊園地近くの骨董店で、ウッディはある電気スタンドに目を留める。アンディの妹のかつての持ち物で、磁器製の羊飼い人形ボーが付いているものだ。

昔からボーに引かれていたウッディは彼女を探そうとフォーキーを連れて店に乗り込むが、ここで新キャラが続々登場。おしゃべり人形なのに製造不良で声の出ないギャビー・ギャビーと手下の腹話術人形たちや、「カナダーのスタントマン」とうぬぼれるデューク・カブーン(キアヌ・リーブス)もいる。

ウッディはボーを見つけて骨董店から逃げ出そうとするが、フォーキーがギャビーたちの手で戸棚に閉じ込められてしまう。その行方知ずのフォーキーを、ボニーと両親は探し回る。

今回も手に汗握るアクションの連続だが、登場人物たちはそのただ中で静かに人生を見つめる。とりわけウッディとフォーキーが手をつないで路肩を歩き、人生を語り合う場面は印象深い。フォーキーはこの世に生まれた意味に気づき、ウッディは新たな生き方に目を向けるのだ。

終盤にウッディたちが下す決断に、前作のラストのような必然性は感じられない。だが過去への郷愁とまだ見ぬ未来への希望、苦楽を共にしてきた仲間への愛が胸を打つのは同じだ。

第1作『トイ・ストーリー』で、ピクサーが全く新しいスタイルのアニメを世に送り出してからまもなく25年。あの頃、親に連れられて映画館に行った子供の多くが、自分の子供を連れて最新作を見に行くだろう。

このシリーズが教えてくれたように、子供時代の宝物にさよならを言うのは悲しいけれど必要なこと。親会社のディズニーがクオリティーを二の次にして続編を乱発したがるなら、ピクサーもこの名シリーズに別れを告げる潮時かもしれない。

『トイ・ストーリー 4』
監督/ジョシュ・クーリー
声の出演/トム・ハンクス、ティム・アレン
日本公開は7月12日

デーナ・スティーブンズ

最終更新:7/12(金) 17:16
ニューズウィーク日本版

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