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日本人は「どうやって」「どこから」来たのか?ホモ・サピエンスの壮大な旅を探る

7/12(金) 18:00配信

BEST TIMES

◆身長1mの原人もいた!  アジアの人類史は滅法おもしろい

「『日本人はどこから来たのか?』という書名は出版社が付けました。まだ〝日本〟という言葉すらなかった時代だから〝日本人〟と呼ぶべきではない、という意見もありますが、僕はそこはあまり気にしません。日本列島に最初に来た人、という程度の意味です」

 この国に海を渡って来た人類がいる。このことには疑いがない。だが、どうやって? という疑問には答えがない。海部さんたちは、それに迫ろうと、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を推し進めてきた。話を伺ったのは、その〝最後〟の本番実験航海を間近にした日だった。

「教科書で、ヨーロッパのネアンデルタール人やクロマニョン人については習うけれど、アジアに関しては北京原人やジャワ原人くらいしか知らない人が多いでしょう。でも、アジアの人類史は、もっとおもしろいんです」

 インドネシアのフローレス島では身長1m(! )の成人フローレス原人の化石人骨が発見されている(2004年)。台湾沖の海底からは澎湖人(ほうこじん)が発見され(2015年)、2019年にはフィリピンのルソン島でルソン原人の化石が見つかったと報告された。セイロン島、マレーシア、ベトナム、タイなどでも化石人骨が発掘されている。

 だが、アジアのこうした遺跡のことを知る人は少ないだろう。※2
「これらは石灰岩の地質だから人骨が残りやすいんです」と海部さん。なるほど、アジアの人類史は滅法おもしろい。

※1 海部陽介著『人類がたどってきた道』(NHKブックス)参照
※2 川端裕人著・海部陽介監修『我々はなぜ我々だけなのか』(講談社ブルーバックス)参照

◆難関の沖縄ルート、大航海の再現実験で日本人のルーツを探る

 九州から台湾まで1200㎞の海に連なる琉球列島に3万年前、突然、人類が登場する。それは、なぜか。どうやったのか――この謎を解くべく、海部さんたちが立ち上げたのが「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」だ。※3

 台湾と与那国島は直線距離で100㎞以上。そこを最大幅100㎞で秒速1~2mの黒潮が流れている。実験用漂流ブイを流しても琉球列島には漂着しない。だから、意図的に琉球列島を目指した人々がいたと考えるのが論理的だ。
「台湾から海を渡って沖縄へ来た集団がいたことは確かです。でも、どうやって海を渡ったのか分からない。その答えは遺跡を掘っても見つからない。不思議で、知りたいから、自分でやってみようと思ったんです」

 プロジェクトは、台湾や与那国島にある材料を旧石器で加工して舟を作り、それが実際の航海に使えるか検証するものだ。海図もGPSも通信手段も目的地(与那国島)の情報もない、場所によっては舟から見えないほど遠く、小さな島を目指して漕いでいく。

「それは本当に〝命がけ〟だったはずです。旧石器時代の人類のチャレンジの難しさは実際に体験してみないと分からないと思います」

 しかも、彼らの意図は〝移住〟だった。「祖先たちは琉球の島々に住み着き、人数を増やします。だから男女でやって来た。出生時の死亡率や初産の年齢などさまざまな要素が関わりますが、理論上では10人の男女がいれば人口が増えていく、という計算が成り立つようです。女性もいっしょに舟を漕いで来たんですね」

 と、いうわけで、海部さんたちの実験航海では男女合わせて5人が丸木舟に乗り組む。人類の移住を再現するためには「2艘で行かなければならないのですが、予算の関係で叶いませんでした」。 

 そう、海部さんたちはインターネットのクラウドファンディングで一般から資金を募ったのだ。2016年4月に2000万円を目指して支援者を募集、875人が合計2638万円を拠出した。2018年9月には「完結編」として877人から3304万2000円を集めている。海部さんたちはこれら支援者を〝クルー〟と呼んで、研究チームの一員と考えている。

「こんなにおもしろいことをサイエンティストだけの楽しみにしておいちゃいけません。ぜひオープンサイエンスとして、みんなで考えたい。知識や科学的謎解きの面白さを、多くの人と共有したいんです。私たちの先祖のことを、みんなに知ってもらいたい、いや、知っておくべきだと思います」

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最終更新:7/12(金) 18:00
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