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暴力団への「闇営業」でメシが食えた元吉本芸人の懺悔録

7/12(金) 8:00配信

デイリー新潮

そんなに悪いか「吉本の闇営業」(2/2)

 雨上がり決死隊の宮迫博之らが処分された「闇営業」問題。明石家さんま、岡村隆史といった芸人からは“直(ちょく)の仕事”が必要な現実と、それゆえ反社会的勢力とつながったことへの嘆きの声も上がる。主戦場がテレビに移ったことで、芸人にも、一般市民と同じ法令順守の意識が求められる時代。ゆえに「破天荒な芸人がいなくなった」と、演芸評論家の保志学氏はいう。

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 破天荒な芸人がいた時代を知る、元「コメディNo.1」の前田五郎に聞いた。

「今回の問題で、宮迫と田村(亮)のほかはみんな中堅以下の芸人。それをこうやって潰してしまったら、彼らはどうやって生きていったらええんや。芸人やってて稼ごうと思ったら直もやらなあかんのです」

 時は1970年前後。

「1日3回の出番をこなしても月収が5千円程度ですよ。定食屋で、焼きそばにちょっとなにかつけて100円ちょい。とてもやないけど生活できません。ギャラも、9対1で吉本に持っていかれるし。月亭可朝が吉本を辞めて独立後に初めて読売テレビから直接ギャラをもらい、仰天したらしいですわ。額面で12倍に増えてるいうて、もらい過ぎやから返しにいこうとしたらしい」

 当時は横山やすしが絶頂期にあったが、

「タクシー運転手をぶん殴る事件を起こして謹慎。それで『やすきよ』の仕事が回ってきて忙しくなった。直の仕事もぎょうさん入るようになって相方(坂田利夫)と走り回りました。1回100万の仕事もあった。それはもちろん、ヤクザや。ふつうのイベントやったらギャラは20万、同じような仕事をしてヤクザのとこは最低60万もらえましたね」

実質、黙認

 前田は山口組の田岡一雄3代目組長の息子と友人だったことで、直の仕事を回してもらっていたという。

「彼からの仕事かどうかは憶えてへんけど、一度、警察を怒らせたことがあんねん。吉本の当時の社長の中邨(なかむら)秀雄さんに呼ばれて、みんなの前で“お前ええ加減にせいよ”と怒られた。でも、あとから“あんまりヤクザの仕事、受け過ぎんように”と言い含められました。みんなの手前、注意はするけど、実質、黙認していた、いうことですわ。でも芸人はこうやって食いつないできたんです。それが続いてきたことで、今回、芸人が処分されるようなことになったのかもしれません」

 たしかに時代は変わった。むろん、反社会的勢力と知ったうえでの関係は断つべきだろう。とはいえ、反社会的勢力と気づかずに営業の現場に出向いてしまったケースは気の毒ではあるまいか。その点を、『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。』など、暴力団関係の著書があるノンフィクション作家の廣末登氏が解説する。

「今回の一件を受けて、反社会的勢力との付き合いをなくすべきという声が多数ですが、私は現実的ではないと思います。反社会的勢力は暴力団排除条例の影響もあって見た目だけでは判断しづらくなっています。いまはグレーゾーンが以前よりも広くなっていますし、相手がそういう人間であることのチェックが警察ですら難しいのです。反社会的勢力には必ず周辺者がいますし、警察が分からないものを素人が判別しろというのは無理な話でしょう」

 そんな相手が「闇営業」「直の営業」の先にいるのが現代なのだ。評論家の徳岡孝夫氏はこんな見方だ。

「反社会的勢力がみんなバッジでもつけていてくれたら別ですけれど、そうもいきませんからね。問題になっている芸人は謹慎だとか番組降板だとか、表舞台から抹消されそうな勢いで罰せられています。でも、ほかの業界にも、なんぼでもいるんじゃないですか」

 たとえば、政治家。

「政治資金パーティーなどで知らないうちに暴力団の人とツーショットを撮られ、それが報じられることもあります。それで政治生命が絶たれて辞任するかといったら、そうはなりません。曖昧にしたまま仕事を続けることがほとんどです。そういった意味で、今回報じられた芸人だけがいきなり表舞台から抹消されるのはやはり立場が弱いから。不憫な気がしますね。それと、会社を通さない営業すべてをダメだと言っていたら芸人さんは食べていけない。窮屈な世の中ですよ」

 泉下の月亭可朝に、膝を叩くようなうまい解決策を問うてみたいものだ。

「週刊新潮」2019年7月11日号 掲載

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最終更新:7/12(金) 12:37
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