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その“ささやき”が巨大市場を生む? 動きだした「ASMR」ビジネスの最前線

7/13(土) 13:01配信

WIRED.jp

そろそろ寝る時間だ。体をゆったり横たえ、穏やかな眠りに入るとしよう。心地よい英国なまりの声が、かすかに聞こえてくる。

【動画】ASMRビジネスの最前線

「感じてみてください。あなたが頭を預けているこの枕、なんと柔らかいのでしょう……」

iPhoneから聞こえてくるささやきは、まるで髪を優しくなでられているような気分だ。

「緊張がほぐれてきましたね。急ぎの用事などはありません。何もかもあと回しにして構わないのですよ──」。

声を発しているのは新しい瞑想アプリ「Mindwell」だ。月額10ドル(約1,080円)で、眠りを誘うさまざまな語りを聞かせてくれる。どれも穏やかな睡眠を促し、不眠を解消する工夫が施されたものばかりだ。デジタル時代のいま、瞑想のあり方を捉え直す動きがあるが、このアプリもこうした流れをくんでいる。

別のアプリ「Calm」はオンデマンド方式で、リラクゼーション術とマインドフルネスを提供している。呼吸法を指南する「Headspace」は、禅に似た心の穏やかさをUber並みの低料金でもたらしてくれるアプリだ。

Mindwellはこれらの機能をすべて備えたうえで、さらに新しいアイデアも採用している。人の脳をとろけさせるような「ASMR」の手法で録音した音声を使用しているのだ。

“脳のオーガズム”に人々が夢中に

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)とは、聴覚などの感覚器官への刺激によって感じる快感や、ぞわぞわした感じを指す。このASMRへの関心が、いまやインターネットの世界では熱狂的とも言えるほどに高まっている。

優しいささやき声を聞かせ、柔らかいものに触れている映像を観せて「脳のオーガズム」へと導くためにつくられた動画が、数百万単位で公開されているのだ。背筋がゾクゾクして、両腕に鳥肌が立つ。喜びに満ちた脱力感に襲われ、ぬるま湯を漂うような気分にさせられる。

YouTubeでは、この手の動画が急増してひとつのジャンルを形成するまでになった。髪をとかすなどのありきたりなものから、スティックのりをむしゃむしゃ食べる人々といった異様な映像まで、内容は幅広い。こうした動画がどんなメカニズムでぞくぞくさせる快感を生み出すのか。それは正確にはわかっていない。

だが、こうした“ASMRティスト”たちの創作活動が、ひとつの仕事として成り立たつほどの現象が起きていることは確かだ。ASMRティストたちは数百万人とは言わないまでも、数千人の視聴者を意のままに骨抜きにしている。

フォロワーのいるところにマーケットありというのは鉄則だろう。そこでは、ASMRの盛り上がりにあやかろうとする企業が群がっている。先陣を切ったのはMindwellではない。

「Tingles」というアプリは先陣を切って、アマゾンが提供するライヴストリーミング配信プラットフォーム「Twitch」のASMR版とも言えるサーヴィスを開始した。ベーシック版は無料だが、プレミアムコンテンツの利用には月額10ドル(約1,080円)かかる。また、「Silk ASMR」という別のアプリは、リラクゼーションを目的とする「カサカサ音」をはじめ「髪をとかす音」まで300ほどのさまざまなサウンドを提供しており、料金体系は1ドル(約108円)から何種類かに設定されている。

アマゾンの音声アシスタント「Alexa」に「ASMRをお願い」と話しかけてみるといい。Alexaまでもうまく利用して、スマートスピーカーから心地よいささやき声を流しているASMRティストたちが、すでに何人かいることに気づくだろう。

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最終更新:7/13(土) 13:01
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