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喜びや悲しみの記憶は、あとから“調節”できる

7/13(土) 14:11配信

WIRED.jp

脳神経科学者のスティーヴン・ラミレスは、ドラマ「ブラック・ミラー」の話はしなくて結構ですからね、と言った。というのも、自身の研究が話題になるときは、記憶をテーマに描いたディストピア作品と比べられてばかりだったからだ。

脳とは「記憶そのもの」だった

これまで話題に上った作品は『トータル・リコール』のような娯楽大作から、ネオ・ノワール的な『マイノリティ・リポート』、そして感動を呼ぶ『エターナル・サンシャイン』まで、さまざまだったという。だが実際に彼のラボを訪れてみると、そんな雰囲気はまったくなかった。

ボストンのチャールズ川南岸に位置するラボは、SFのように無機質というよりも、むしろトルネードに襲われたばかりの地下送電施設のようだった。コードとケージが散乱するなか、30万ドル(約3,250万円)の顕微鏡が1台置かれており、光ファイバーでネズミの脳にレーザーを打ち込む合成樹脂の箱がずらりと並んでいる。とはいえ、マッドサイエンティストの研究拠点にはほど遠い。

「誤った記憶」の移植に成功した男の挑戦

このラボの主であるラミレスが最初に脚光を浴びたのは、2013年の春だった。マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院生だった彼は、共同研究者とともにマウスに誤った記憶(過誤記憶)を与えることに成功し、その結果を論文で発表したのだ。

ラミレスらは光遺伝学(オプトジェネティクス)を利用し、光に敏感になるよう遺伝子操作されたニューロンにレーザーを当てて刺激を与えた。こうすることで、マウスが実際は一度も受けたことのない電気ショックのトラウマを植え付けたのである。

この論文をきっかけに、ラミレスはボストン大学に自分のラボを構えることになった。そして現在は十数人の学生とともに、ある長期的な課題に取り組んでいる。それは、記憶のメカニズムを3Dマップ化するというものだ。

ダイヤルを回すように感情の“操作”が可能に?

そしてこのほど、ラミレスの研究チームの新しい論文が学術誌『Current Biology』に掲載された。論文によると、彼の過去の論文と同様の技術を用いることで、記憶の感情的な要素をつかさどる細胞を特定したのだという。そしてこの細胞を操作することで、感情を増幅したり抑制したりできるというのだ。

つまり、脳が感じる恐怖や喜びといった感情を、ダイヤルを回すかのように調節できるということだ。例えば、大きなクモを目にしたときの恐怖や、大量のフライドポテトを頬張っているときの幸福感といったものをコントロールすることもできる。ただし、論文で紹介された実験はマウスを対象に実施されたものであり、あくまでも概念実証の段階にすぎない。

ラミレスによると、こうした特定の脳領域がポジティヴな記憶の増幅やネガティヴな記憶の抑制にどのように関係しているのかを解き明かすことができれば、うつや不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神疾患の治療に役立てることができるはずだという。

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最終更新:7/13(土) 14:11
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