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テクノロジーごときを「神」と仰ぐ人間への疑問

7/13(土) 8:00配信

東洋経済オンライン

現状のままAI(人工知能)が進歩し続けると、2045年くらいに人間を超えるAIが誕生するという予測があり、これが「シンギュラリティ」(技術的特異点)と呼ばれている。そのとき、人間存在の意味はどこに見いだせるのか。あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一氏の新著『世界の中心でAIをさけぶ』から一部を編集してお届けする。

 新しい宗教が生まれつつある。その名を「シンギュラリティ」という。

 ええっ!  シンギュラリティって宗教なのか? 

 その通り。シンギュラリティは21世紀の新しい宗教だ。しかも70億を超える人類すべてを帰依させる力を持つ、いまだかつてわれわれが体験したことのない全体的かつ統制的な宗教である。現在進行中の出来事を、大雑把だけれど本質的なところでとらえるためには、そう考えるのがいいように思う。

 インターネットを中心としたコンピュータ技術の飛躍的な進歩によって、膨大なデータを迅速に処理できるようになったことが根底にある。これが全人類を巻き込んで、ぼくたちをまったく未知の世界に連れていこうとしている。

■シンギュラリティが秘める可能性

 シンギュラリティが本質的な意味で「特異点」であるのは、それが単なる技術革命や機械革命ではなく、人間という生き物の意味を変えてしまい、延いては全生物の運命を変える可能性を秘めているからだ。コンピュータ技術にバイオテクノロジーや遺伝子工学などの生命科学が結びついたことが最大の要因である。

 一つの例を挙げれば、クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)という遺伝子編集ツールの発見と普及がある。ポイントは低コストと使いやすさだろう。「先進的な生物学研究所で数年かかったことが、いまでは高校生が数日間でできる」と言われるぐらいだから、生命科学の世界におけるスマホみたいなものだ。

 この簡易にして強力なツールの登場により人間は全生物のゲノムを思い通りに書き換える能力を手にしようとしている。遺伝情報の流れを操作し、人類の進化のみならず地球上のあらゆる生命を遺伝子レベルで指揮し、統制する時代が到来しようとしている。

 人間(ホモ・サピエンス)は時代遅れになるかもしれないのだ。ホモ・サピエンスに代わる新しい人類を、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは「ホモ・デウス」と名付けている。この新しいタイプの人類は、コンピュータ・サイエンスや遺伝子工学などのテクノロジーの力を借りて、自分自身を含めた全世界を思い通りに創造しうる。まさに「神なる人間」である。

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最終更新:7/13(土) 8:00
東洋経済オンライン

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