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トップメゾンが認めた日本人ハットクリエイター 快挙の理由は“やりたい事”より“やるべき事”の追求

7/13(土) 18:00配信

WWD JAPAN.com

一つの道を究めた者にしか見えない世界がある。卓越した技術を磨き続ける職人の、研ぎ澄まされた感覚や特異な観点にはたびたび感銘を受ける。パリを拠点にハットクリエイターとして活動する日爪ノブキは、まさにそうした一人だ。彼はフランスのラグジュアリーブランドと言われて誰もが思い浮かべるトップメゾンのハットや、ヘッドピースを制作するメーカーに約8年勤め、自身のメンズ帽子ブランド「 ヒヅメ(HIZUME)」を今年スタートさせた。彼を職人と呼ぶのは筆者だけではない。フランス文化の継承者にふさわしい高度な技術を持つ職人に授与される称号「フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France以下、M.O.F.)」を受章した、フランスが認める正真正銘の職人というわけだ。「M.O.F.」は日本の重要無形文化財(通称、人間国宝)認定制度に相当するといわれており、3~4年ごとに行われる審査では、各部門の出場者が3年ほどの期間をかけて技術を競い合う。帽子職人部門での受章は日爪が日本人初となる。同氏は「最高のクリエイターは最高の職人であるべき、という信念を持っている。『M.O.F.』にエントリーしたのは、その信念が机上の空論ではないことを証明するため」と振り返る。最終的な夢が何かを問うと「ばかげていると思うかもしれないが、全人類に帽子をかぶせるという“人類帽子計画”の実現。それは、僕が作る帽子に限ってという意味ではなく、極論を言うと葉っぱだろうが何でもよくて、帽子をかぶる文化をもう一度取り戻すことが夢だ」。大それた野望に聞こえるが、いたって真剣である。彼のこれまでの軌跡と見据える世界を聞くと、それが不可能な夢ではないように思えた。

【画像】トップメゾンが認めた日本人ハットクリエイター 快挙の理由は“やりたい事”より“やるべき事”の追求

ハットに人生を捧げる彼だが、当初の夢はファッションデザイナーだった。滋賀県で生まれ育ち、大阪の大学へ進学すると、大学4年時に上京して文化服装学院に入学した。「ウィメンズの洋服以外は、全て邪道だと思っていた」と語るように、ハットには見向きもせず、コンセプチュアルでユニークな作品を制作してはコンテストに応募し続けるという学生時代を過ごした。「装苑賞」への2度のノミネートや、その他多くのコンテストでの成果がきっかけでイタリアの雑誌にも掲載され、伊アンダーウエアメーカーから「自身のブランドをやらないか」とオファーが届いた。現地に渡って経験を積み、1年後にビザの関係で帰国が決まったものの、転機が訪れる。「帰国前日に、日本のプロデューサーから『ブロードウエイミージカルの日本公演のためにヘッドピース制作を担当してくれ』と依頼された。帰国後の明確な計画はなかったため、深く考えずにプロジェクトを引き受けた」。作品は本国アメリカではヒュー・ジャックマン(Hugh Jackman)が主演を務めて「トニー賞」を受賞したミュージカル「ボーイ・フロム・オズ(原題:THE BOY FROM OZ)」で、日本では坂本昌行主演で大ヒットとなった。ハットやヘッドピースの制作は初めてだったにもかかわらず、舞台に携わる一流のプロフェッショナル全員から作品を称賛されたという。周囲に才能を見いだされ、その後も舞台を中心にハットクリエイターとして活動を続けたが、本人はまだ洋服のデザイナーに未練があり、絶えないオファーとは裏腹に葛藤を抱えていた。

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最終更新:7/13(土) 18:58
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