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163キロ右腕・佐々木朗希のすべてを受け止める女房役の左手

7/14(日) 11:01配信

週刊ベースボールONLINE

延々と繰り返した捕球練習

 すべては、左手が語る――。

 野球は、一人ではできない。投手はボールを受けてくれる捕手がいなければ、自らのパフォーマンスを発揮し得ない。

【連続写真】163キロの秘密 佐々木朗希の投球フォーム

 高校生最速の剛速球。大船渡高の163キロ右腕・佐々木朗希(3年)とバッテリーを組むのは、同級生の及川惠介である。

 冬場は血のにじむような努力を続けた。いくら良いボールを投げても、捕球できなければ、何の意味もなさない。ストレートと同じ腕の振りでくる佐々木のスライダー、フォークはものすごい変化量。打者が分かっていても手が出ないように、捕手も集中力を研ぎ澄まさないと、ミットに収まらない。それほど、令和の怪物のボールは異次元なのだ。

 オフシーズンは毎日、寒さの中でも、マシンを相手に捕球練習を延々と繰り返した。気が遠くなるような猛特訓も、及川は自身のレベルアップがチームの勝利につながると、前を向いて取り組んだ。

 捕手の左手親指は、突き指が常。「職業病」とも言える。しかし、及川は「痛み? ありません」と、決してその痛みを認めようとしない。絶対に弱音を吐くこともない。強気な姿勢を貫くのは、大きな理由があった。

 佐々木は陸前高田市出身。しかし、2011年3月11日の東日本大震災で被災したため、大船渡市へ移住している。高田小学校から幼なじみだった及川とは、予期せぬ形で離れ離れとなってしまった。

 及川はいつか再び、佐々木とバッテリーを組むことを夢見ていた。とはいえ、自らの「希望」も、声を大にすることは遠慮していた。佐々木は中学時代から、最速141キロを計測する超逸材。花巻東高ら県内の強豪校からも声がかかる、スター選手であったからだ。

見る者のハートを熱くさせるプレー

 中学3年時、2人は再会する。地域の軟式野球経験者が選抜される「オール気仙」でチームメートとなったのである。

「一緒にやろう!!」

 佐々木からのまさかの「勧誘」。つまり、大船渡高で「甲子園を目指そう」と及川を誘ったのだ。実は、及川は高校で野球を続けるか迷っていた。親友からのまさかの“ラブコール”に、及川の胸が騒いだのは想像に難くない。

 及川のプレーは「泥臭さ」の一言に凝縮される。小柄な体をすべて使って、ボールを一心不乱に追う。献身的な姿勢は、見る者のハートを熱くさせる。もちろん、一塁へのベースカバー(写真)も一切、手を抜かない。佐々木が全幅の信頼を寄せるのも、よく分かる。

 いよいよ、大船渡は7月16日に岩手大会初戦(2回戦、遠野緑峰高)を迎える。6試合を勝ち上がらなければ、夢舞台・甲子園の土を踏むことはできない。すべてを受け止める及川の左手。痛くないはずはない。本人にしか分からない心地いい感覚を、喜びに変えてプレー。1日でも長い夏にする――。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明

週刊ベースボール

最終更新:7/14(日) 12:27
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