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執念実るか 絶滅と思われた米国のクリの木を再生

7/15(月) 16:33配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

秘密の場所で手作業の授粉を続けるひとりの男性。地道な作業が絶滅種を復活させた

「車に乗る前に、目隠しをしてもらいますからね」と、スティーブ・ボスト氏は言った。

 米国ミズーリ州立公園で自然ガイドを務めるボスト氏に、クリの仲間、オザークチンカピンの木がある場所まで車で案内してもらうときのことだった。冗談めかしているが、場所を明かすわけにはいかない理由がある。ボスト氏は絶滅のふちにあったオザークチンカピンを独自の手法によって蘇らせるため奮闘を続け、その努力が実を結びつつあるからだ。

ギャラリー:森の教えにしたがい暮らす、小さな生活共同体 写真14点

 ボスト氏の車は、緩やかな起伏が続くオザーク高原の奥深く、人気のない泥道が途切れたところで止まった。このあたりのどこかで、一帯の森にいくらでもあったオザークチンカピンが人目につかないようひっそりと育てられている。1900年代半ばにクリ胴枯病(どうがれびょう)で壊滅的な被害を受けたオザークチンカピンは、すでに種として繁殖する力を失っていると考えられてきた。しかし、2000年代、ボスト氏によって数少ない生き残りが発見されたのだ。

 ボスト氏は、ブヨの群れを寄せ付けないため、スパイスブッシュの葉で顔をぬぐう。自然の防虫剤だ。森の中をしばらく進むと、よく日の当たる岩がちな斜面に出た。日照りで枯れた木々が、周囲をぐるりと囲む。尾根の上に位置するこの場所に、ボスト氏は9年前から試験区画として手を入れ始めた。現在、ここでは117本のオザークチンカピンの若木が育っている。中には、成木の半分ほどの高さにあたる9メートルまで成長した個体もある。

 1930年代、40年代には、オザークチンカピンは類似種のアレゲニーチンカピンとは別の独立した種ではないかという論議を経て、正式に別種であることを確認。「Castanea ozarkensis」という学名が与えられた。その後、クリ胴枯病がミシシッピ川を越えてミズーリ州に入り込んだことで、オザークチンカピンは一気に絶滅の危機に追い込まれたのだ。後に残されたのは、切り株から生える芽だけだった。だが、これらの芽も数年育つと胴枯病に感染し、結局、実を結ぶ前に根まで枯れてしまう。いくら芽が生えても、種の維持はできないのだ。

 現在、61歳のボスト氏が、初めてオザークチンカピンという名前を聞いたのは、20年ほど前のことだった。この木に興味を持ったボスト氏は、オザークや近隣一帯で生き残った個体を探す。うわさや目撃情報を頼りに、同氏は余暇を使ってはミシシッピ州やアラバマ州まで車を走らせ、何日も森の中を歩いて目当ての木を探し回った。

 専門家でも絶滅したと考えていたオザークチンカピンは生きていた。地元の人々の協力のもと、ボスト氏は胴枯病に耐えて生き延びた45本の大木を発見。場所は主にミズーリ州とアーカンソー州だ。ボスト氏は現在、民間や州の機関の支援を得て、オザークチンカピン復活のため、先頭にたって活動している。ボスト氏が設立したオザークチンカピン財団は、記事冒頭で触れた場所のほかに15カ所の試験区画を有し、そこでは約1000本の幼木が育っている。それでも、オザークチンカピンが完全に復活したとまで言えないため、同財団は木が生育する場所の情報がもれないよう厳重に管理している。

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