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世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.13 「コンマ数秒の“欲”に負けるな」

7/15(月) 17:31配信

WEBヤングマシン

“勝ちたい” 気持ちが王座を遠ざけることも

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第13回目は、マルケスの凄さで思い返す1998年、そしてMotoEやフランスでの岡田忠之さんとのツーリングを語る。

TEXT:Go TAKAHASHI

あの時、わずかにパーシャル時間が長くなった

MotoGPは第9戦ドイツGPを終え、次のチェコGPまで約1ヶ月のサマーブレイクに入りました。ポイント争いでは首位のマルク・マルケスが2番手アンドレア・ドヴィツィオーゾに58点差をつけ、盤石の体制です。

マルケスがすごいのは、勝てないレースでもきっちりと2位につけてポイントを稼ぐこと。例えばマーベリック・ビニャーレスが勝ったオランダGPも、決して無理をして追いかけることはしませんでした。しっかりと自分を抑えたわけです。現役時代の僕も、この抑制ができていれば……!

レーシングライダーはもちろん勝利をめざして走ります。でも、すべてのレースを勝つことはできません。チャンピオンになるために大切なのは、「勝てないレースでいかにポイントを獲るか」です。

今でも「なんであそこであんなことしちゃったかなぁ」と後悔しているレースが、僕にはいくつもあります。特に後悔しているのは、1998年の第11戦イモラGPと第13戦オーストラリアGPです。

イモラは金曜日の予選で転倒し、足を骨折していました。シフト操作が満足にできない状態で決勝に臨んでいたのですが、2位走行中に、前を行くバレンティーノ・ロッシをつい深追いしてしまった。で、転倒。10位に終わりました。

そしてオーストラリアでは、決勝4位走行中の15周目に、ちょっと欲を出してパーシャル時間を長く取ってしまった。前走車に離されてしまうのが嫌で、つい早めに開けてしまったんです。パラパラッ……というパーシャル時間が長くなり、次にスロットルを閉じた瞬間に焼き付いて転倒、リタイヤしてしまいました。

まぁ、あまりにもシビアなエンジンがいけないんですけどね(笑)。ただ、自分でも分かっていたのに、スロットルを閉じておけずについ早めに開けてしまったのは確か。コンマ数秒の出来事ですが、今でも鮮明に覚えています。

この1998年は、皆さんご存じの通り、最終戦アルゼンチンGPでロリス・カピロッシにぶつけられてチャンピオンを逃すわけですが、僕としてはそれ以前に、イモラとオーストラリアの失敗がいけなかった。このふたつのレースで無理をせずできるだけ多くのポイントを獲っていれば、このシーズンは楽勝で2度目のチャンピオンを獲得できていたんです。

なんて「たられば」話も、今だからこそできること。当時は勝ちたくてレースをしていましたから、ある意味では仕方がないんですけどね。ただ、マルケスを見ていると、やっぱりチャンピオンを獲るためには自分を抑えることがいかに大事か、改めて思い知らされます。振り返ると、「あ~あ」とため息が出てきますね……。

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最終更新:7/17(水) 11:43
WEBヤングマシン

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