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アーセナル、ギリギリ不合格も…「脱ベンゲル」で若手成長。勝負の2季目へ最大の課題は?【18/19シーズン総括(4)】

7/16(火) 10:01配信

フットボールチャンネル

 2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はアーセナルを振り返る。(文:プレミアパブ編集部)

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●ギリギリ合格点に届かず…

 2018/19シーズンのアーセナルは、ギリギリ合格点に届かなかった。そんな印象だ。

 リーグ戦は好不調の波が激しかったものの、マンチェスター・ユナイテッドのモイーズ政権の例もある。22年という長期政権後のシーズンという点を考慮すれば、4位のスパーズとは勝ち点差わずか1ポイントでの5位は心情的には悔しいものの、決して悪くない内容だった。

 あとはシーズン最終戦となったヨーロッパリーグ決勝のチェルシー戦に勝って3シーズンぶりのチャンピオンズリーグ出場権さえ獲得することができていれば、十分に合格点となるはずだった。

 しかしその「絶対に負けられない試合」で同じ街のライバルに1-4で大敗してしまう。あと少し、ギリギリ届かなかった。

 では具体的に成長した部分と課題として残った部分について言及していきたい。

●開幕前から「脱ベンゲル」らしさが垣間見える

 まず昨シーズン開幕前、2017年11月にスカウト部門の責任者としてクラブに迎え入れられたスヴェン・ミスリンタットの尽力もあり、ドルトムントからソクラティス・パパスタソプーロス、サンプドリアからルーカス・トレイラ、ロリアンからマテオ・ゲンドゥジらを獲得。それまで数年間ガナーズの泣き所となっていたCBや守備的MFを獲得したことで、早速「アーセン・ベンゲル時代との違い」を示した。

 序盤戦はまだチームが未完成だったこともあり、開幕2試合でマンチェスター・シティとチェルシーに敗れて2連敗スタートとなった。ただし23年ぶりの新体制であることを考えれば仕方がない部分もある。むしろ日程の運が悪かったのだ。

 ただ時間が経つにつれ、戦術面では、それまで個人の能力に頼りがちだった後方からのビルドアップや前線からのプレスに少しずつエメリのプレーモデルが根付き始める。これらはベンゲル時代になかったものだ。

 だからこそ、それに「対応できる選手」と「対応できない選手」とで明暗が分かれ始める。

●チームの変化を象徴したレノとトレイラの活躍

 まずはGKだろうか。エメリ監督はGKに対してビルドアップに参加することを強く要求した。セービング能力に定評があるものの、足元の技術に不安が残るペトル・チェフがベンチに座ることになるのは時間の問題だった。

 結果、最終的にチェフが負傷退場したプレミアリーグ第7節ワトフォード戦以降、守備範囲の広さと足元の技術で勝る新加入のベルント・レノがレギュラーを奪取した。

 ドイツ人GKは当初セービング面ではチェフに劣るという意見もあったが、徐々にプレミアリーグに適応していき、最終的にはビッグセーブを連発するようになる。昨季のアーセナルの最大の補強は今思い返せばレノなのかもしれない。これほどスムーズに守護神の世代交代に成功する例も珍しい。

 そして前線に関して、スペイン人の戦術家は相手ボール時のプレスに「速さ」を強く求めた。そのため長らくチームの王様としてトップ下に君臨していたメスト・エジルの序列が絶対的な一番手ではなくなってしまう。

 華麗なドイツ人MFはチーム内の他の選手に比べて走行距離が極端に短いわけではない。ただオーバメヤンの全速力のプレスと、エジルの全速力のプレスでは、強度が全く違うことも確かだ。シーズンの後半戦はある程度出番をもらっていたが、エメリにとっては特別な選手ではないことはその起用法から明らかだった。

 チェフ、エジルという、ベンゲル時代には欠かせない存在だった二人を、中心メンバーから外した点はエメリが行った最も大きな改革の一つだったと言える。

●成長する若手選手たち

 ハマらない主力選手が何名かいた一方で、多くの若手選手たちを成長させた点は、シンプルにエメリの功績だろう。

 完全に伸び悩んでいたアレックス・イウォビは縦に仕掛ける意識が強まり脅威度が増した。他にもベンゲル政権下ではルールがなさすぎたことで混乱し、パフォーマンスを落としていたグラニト・ジャカは水を得た魚のようにゲームメイカーとして活躍し始める。

 そしてCBロブ・ホールディングの成長は、エメリ政権最大の功績になるはずだった。守備にいい意味での慎重さが加わり、対人戦、カバーリング共に素晴らしいパフォーマンスを披露していたのだが、第15節マンチェスター・ユナイテッド戦で、左膝前十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまう。

 この負傷離脱さえなければ、アーセナルの守備はもう少し安定したはずだった。

 若手たちの成長と活躍は既存戦力にとどまらない。新戦力も同様だ。

 当時まだ19歳だったマテオ・ゲンドゥジはなんと開幕デビューを果たす。プレシーズンマッチで活躍していたとはいえ、実績の少ない無名選手の起用はサプライズだった。最終ラインから上手くボールを引き出し、相手の嫌なエリアを突く縦パスでアーセナルの攻撃にスパイスを加えた。

 あるいはもう一人の新獲得の中盤、ルーカス・トレイラも第6節のエヴァートン戦で初スタメンを飾り、期待以上のプレーを披露する。

 小柄なウルグアイ人MFは、危険なスペースを確実に埋める天性の危機察知能力と的確なタックルを併せ持つ。次々とボールを刈り取り、エメリが理想とするトランジションの早いサッカーを体現する存在になった。それだけでも十分だが、第14節トッテナムとのノースロンドンダービーでは、試合を決定づける4点目を決めて勝利に貢献。ファンの心情的にも、欠かせない選手へと成長していった。

●内弁慶&CB問題をどうする?

 若い選手たちの台頭もあり、エメリの理想とするサッカーが浸透。徐々に歯車が噛み合い始めたアーセナルは、4月1日に行われた第32節のニューカッスル・ユナイテッド戦で2-0の勝利を収め、見事21年ぶりに同一シーズンでの「ホーム10連勝」を達成する。

 また対ビッグ6の戦績で見ると、1シーズン前の17/18シーズンは「1勝3分6敗」であったのに対し、今季は「3勝3分4敗」と、勝率は確実に上がっている。その3勝の全てがホームでの戦いだったが、どれもスパーズ、チェルシー、ユナイテッド相手に内容も伴った堂々たる勝利だった。

 しかし課題が多くあったことも確かだ。

 例えばアウェイでの戦いだ。敵地でのアーセナルは極端に弱く、今季トータル10敗のうち8つの敗北をアウェイで記録した。この“驚異の内弁慶ぶり”が、最終的にプレミアを5位で終えたことの大きな要因の一つになったのは間違いない。

 またCBの人材難問題もある。

 2016/17シーズンの加入以来、ベテランのローラン・コシエルニーとの息の合ったコンビネーションから、“コスタフィ”と呼ばれ賞賛されることもあったシュコドラン・ムスタフィが、昨季は致命的なミスを連発。彼自身の株もチームの勝ち点も大幅に落としてしまった。

●来季に向けての心配事とは

 そして来季に目を向けるのであれば、CBの問題はさらに深刻だ。

 まずホールディングは長期離脱明けのため、どの程度活躍できるのかは未知数だ。いずれにしてもシーズンフル稼働を期待するのはやや酷だろう。

 なお、別の意味の”ホールディング”でいうと、ソクラティスに関しては気迫のこもった対人戦を見せてくれる素晴らしい選手だが、すぐに手を出して相手を止めてしまう悪癖がある。VARが導入される来季、ボックス内のホールディングのファールは見逃されなくなる。ギリシャ代表DFをレギュラーとして起用していいのか、悩ましいところである。

 そして頼みの綱であるローラン・コシエルニーはプレシーズンマッチの米国遠征を拒否したという情報が入ってきた。この夏の母国帰還を本人は希望していたとのことだが、クラブと交渉がこじれたようだ。もしかするとシーズンが始まった頃にはアーセナルの登録メンバーに入っていない可能性もある。

 カラム・チェンバースをCBとして使うという選択肢もあるかもしれないが、彼は昨季本職のDFではなく、守備的MFとしての才覚をローン先のフラムで示した。センターバックでの起用で本当に良いのか。

 その他にも左SBやウイングなど補強ポイントはあるが、一向に話が進まない。今のところ即戦力なのかはわからない18歳のブラジル人アタッカー、ガブリエウ・マルティネッリを獲得したのみである。おそらくだがこのペースでいくと、獲得も放出も100%は終わらないままシーズンを迎えることになる。

 とはいえエメリ監督は、柔軟性の高い監督ではある。既存戦力でチームの強さをどう最大化するかは見物でもある。「カメレオンチームが理想だ」と本人も語るが、来季はどんな変化を我々に見せてくれるのか。理想のスカッドとはいえない状況ではあるが、それも含めてチームをどう成長させるのかは、楽しみなポイントである。

(文:プレミアパブ編集部)

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最終更新:7/16(火) 10:52
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