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「クンロク大関」続出でも大相撲に公傷制度が復活しない理由

7/16(火) 12:13配信

Wedge

軽傷でもインチキして公傷扱いにしてもらおうとする可能性

 かつての公傷制度は「全治2カ月以上」の診断書があれば、その次の場所で全休しても同じ地位に留まれるという利点があったが、2003年の九州場所で廃止にされた。理由は公傷制度が乱発され、休場力士が激増してしまったことであった。明らかな仮病力士も増え、危機意識を高めた協会側が引き締めを図ったからである。

 協会関係者の1人は「正直に言って公傷制度の復活は難しい」と口にすると苦悩に満ちた表情を浮かべながら、こう続けた。

 「軽傷でもインチキして公傷扱いにしてもらおうとする力士が出てくる可能性がある。所属部屋に近い関係にある医師に頼めば、そんなことはいくらでも可能になるだろうし、以前も実際にそういうケースがたくさんあった。『今後は統一して協会側が指定の医師のみにチェックさせればいいのではないか』という指摘も出てはいるが、それは難しい。

 なぜなら仮に古傷を痛めたり、もともとの持病を患ったりした際、その力士を普段から見ている専門の医師でないとうまく診断できず見落としが生まれてしまうリスクも考えられるからだ。

 公傷制度を復活させたいという声が多いのも承知しているが、現状ではできることと、できないことがある点を分かってほしい」 

 どうやら公傷制度の復活は現実的にかなりのハードルがあるようだ。とはいえ、この関係者は「公傷制度うんぬんというよりも結局は今の大関陣が、だらしないということ」とも言い切り、次のように指摘した。

2場所連続休場が横綱になってから1度しかない白鵬

 「大関よりも条件が厳しく、その頂点にいる横綱の白鵬が無類の強さを証明しているからね。横綱だから公傷制度の必要性はないけれど、ここまで白鵬は2場所連続休場が横綱になってからの1度(全休した一昨年九州場所と途中休場した昨年初場所)しかない。しかも、その休場明けとなった次の昨年春場所は2ケタ勝っている。

 つまりは大関で陥落となっても返り咲けているということだ。その白鵬が一昨年から休場をコンスタントに重ねるようになっても出てくれば数多く優勝している現状があるわけだから、それに歯止めをかけられない大関陣は猛省しないと。公傷制度をスケープゴートにしてはいけないでしょう」

 いくら品格がないと言われようとも無双横綱・白鵬という結果を残し続ける「手本」がいる限り、現在の大関陣は物足りなくて弱いと断じられてしまうのかもしれない。それならば、なおさら今場所は高安が初Vで大関の看板を死守し、鶴竜、そして白鵬の両横綱に意地を見せつけなければいけないはずだが……。結果を出せないばかりか、コンディション維持もままらぬ大関陣が次々と“休場渦”に巻き込まれるように総崩れとなってしまう現状では、やはりそれも絵に描いた餅で終わってしまうのだろうか。

新田日明 (スポーツライター)

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最終更新:7/16(火) 12:13
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