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あえて「尋ねない」心遣い 「質問=コミュ力」と勘違いしていませんか?

7/16(火) 8:10配信

NIKKEI STYLE

《連載》梶原しげるの「しゃべりテク」

若い読者に向けたメディアでしばしば目にする記事に、「相手に質問することでコミュニケーションをスムーズに」といったたぐいのものがある。たとえば、「相手の出身地を尋ねてみよう。故郷の話を問われて、悪い印象を持つ人はいない」「休日の過ごし方を入り口に、相手の趣味を聞けば、さらに相手が喜び、その後の会話も弾むこと間違いなし」といった具合だ。なるほど、そうかもしれない。

■話題の踏み込みすぎ、理由の掘り下げは要注意

だが、そう思う一方で、「問うリスク」、すなわち「質問すること自体が、むしろ配慮を欠くことになる懸念」にも触れておいたほうがよいと思う。上の例で言えば、故郷での「失敗だらけの青春時代」など、思い出したくもない人だっていなくはないだろう。休日の過ごし方や個人的な趣味など、「私」の領域には踏み込まれたくない人がいておかしくない。


むやみと質問を繰り出してくる相手のことを、「不快だ」「付き合いたくない」と感じて、ネガティブな反応を示す人は、そう珍しい存在ではなさそうだ。

「あ、そのバッグ、カッコいいですねえ」。この程度の問いは「気遣い表現」ともいえそうだが、話し手が調子に乗って「どこで買ったんですか? ブランドは何ですか? 値段はいくらしました?」と矢継ぎ早に質問を繰り返せば、事情が変わってくるだろう。

「あたりさわりのない質問で、初対面でのぎこちないコミュニケーションを回避できた」「コミュ力の優れた人だ」などと前向きにとらえてくれる人より、「居心地の悪い会話の場から抜け出したい」と感じる人のほうが多くなってしまいかねない。

■「頑張ってるか」にもパワハラのリスク

上司が部下を気遣ったつもりの「頑張ってるか」の問いかけでさえ、一度や二度なら「ありがたい励まし」で済むかもしれないが、度を超すと、逆効果になる。「問いかけ」は部下の精神的苦痛を生み、結果として「パワハラ行為」と受け止められてしまう心配すらある。

気遣いを示すには、「質問することや問いかけることが有効だ」と勘違いするのは、危うさをはらむ。くどいぐらいに質問を重ねたり、個人の好みや思いにまで踏み込んだりすれば、かなりの確率で嫌われる。

「連休は何をするの? 旅行とか? えー! どこにも行かないの? どうして?」

「猫飼ってるの? そうなんだあ。でも、なんで犬じゃないの?」

場をなごませるつもりで発した質問が、会話を促進して、豊かなコミュニケ-ションを生み出すとは限らない。逆に、尋ねられた側の口と心を閉ざしてしまうこともある。どんな人にも「問わない気遣い」を求めたくなる場面があるものだ。

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最終更新:7/16(火) 10:07
NIKKEI STYLE

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