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昭和の人気英単語集「でる単」が大学受験生から圧倒的支持を集めたこれだけの理由

7/16(火) 7:31配信

デイリー新潮

 通勤通学電車の中、車内で新聞・雑誌を読む人もめっきり減って、今ではスマホを見ている人たちばかり。そんな中でも昔と変わらないのが、受験生が英単語集を眺めながら英単語を覚えている風景だ。もっとも最近は英単語集もスマホ用のアプリがあって、そちらを使っているほうが多数派になりつつあるのかもしれない。

 いずれにしても、昔も今も受験生にとって英単語を覚えるのは難行の一つであることは間違いない。昭和の昔から多くの受験生が様々な出版社から出される英単語集を使ってきたが、「日本三大英単語集」というのをご存じだろうか。いや、正確にはそんな呼び名はないのだが、確実に存在する。それは『英語基本単語熟語集』(旺文社刊・通称“豆単”)、『試験にでる英単語』(青春出版社刊・通称“でる単”、関西では“しけ単”と呼ばれていた)、それに『英単語ターゲット1900』(旺文社刊)の3冊だ。

 なぜ、この3冊が「日本三大英単語集」なのか。それは発行部数が示している。ややデータは古くなるが、6年前の発行部数を見てみると、昭和17年刊行の「豆単」が累計で1700万部、昭和42年刊行の「でる単」が1500万部、そして昭和59年刊行の「ターゲット」が680万部である。一般に日本で最も売れた本というと、累計800万部を売り上げた『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子著・講談社)があげられる。上記中2冊はそれを軽くしのぎ、「ターゲット」もそれに肉薄しているのだから、いかに売れているかがわかるというものだ。

 なかでも英単語集において、エポックメイキングになったのが「でる単」だった。その誕生秘話をノンフィクション作家の本橋信宏氏の新著『ベストセラー伝説』をもとに見てみよう(引用はすべて同書より)。

 あまり著者に注目が集まる類の本ではないが、「でる単」はたった一人の高校教師による著作物である。著者は当時、都立日比谷高校の現役英語教師だった森一郎氏。

 日比谷高校は東大合格者数において、戦後第1回の入試から1967年まで第1位を誇ってきた。森氏はその日比谷高校黄金時代の教師である。当時、森氏を担当していた伊藤優美子が語る。

「森先生は明治時代からの英語入試問題を全部持ってらっしゃって、その中からコツコツ調べた重要語をプリントして生徒に配っていたんです。それが生徒たちに非常に評判が良かったんです」

 そのプリントを書籍化したのが『試験に出る英単語』だった。この本は三つの点において画期的だった。まず、従来のABC順に並んでいた英単語集ではなく、重要度順に並び替えたことだ。そして二つ目は、原則として一単語一訳語に絞り込んだことだった。

 例えば、「豆単」の最初がAで始まるabandon(見捨てる、断念する、ゆだねる)だったのに比べて、「でる単」の最初はintellect(知性)。

 そして、三つ目として、単語を1800語まで絞ったことだ。その昔、戦前までさかのぼれば「大学受験のために、コンサイス英和辞典を頭から全て覚えた」受験生がいたという逸話があった。大げさだとしても万単位に近い英単語を覚えようとしたのだろう。

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最終更新:7/16(火) 7:31
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