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世界最大の火山が覆る、日本の東沖に沈む「タム山塊」

7/17(水) 16:50配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

再調査で新事実が判明、ハワイのマウナロアが返り咲き

 かつて、米国ハワイ州にある面積5200平方キロメートルのマウナロア山は世界最大の火山と言われていた。しかし2013年に発表された論文で、日本の東の海底にマウナロアをはるかにしのぐ、面積約30万平方キロメートルという世界最大どころか太陽系最大級の火山があると報告された。

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 ところが、その論文の著者がタム山塊を再び調査したところ、どうもこれは単一の火山ではないようだという結論に達した。最新の論文は、7月8日付で科学誌「Nature Geoscience」に発表された。

「大変素晴らしい。科学とは、本来こうであるべきです」。米オレゴン州にある米海洋大気局(NOAA)太平洋海洋環境研究所の海底地質学者ビル・チャドウィック氏は言う。「証拠が指し示す方向へ行ってみることです。たとえその証拠が、これまで自分の信じていたことと矛盾するとしても」。なお、氏はこの研究には参加していない。

 2013年の論文も今回の論文も、筆頭著者は米ヒューストン大学の海洋地球物理学者ウィリアム・セーガー氏だ。そのセーガー氏の研究チームが行った再調査によると、タム山塊は単一の火山ではなく、海の地殻が次々に折り重なってできた巨大な地形であるという。現在のところはっきりとした説明はつかないが、単一の火山よりももっと奇妙な何かであるようだ。

 本質的には、「世界最大ではないにしても、驚くべき地形です」と、セーガー氏は述べている。

なぜ世界最大の火山とされたのか

 タム山塊は、太平洋北西部に位置するシャツキー海台(かいだい)の上にある。「タム」山塊の名付け親であるセーガー氏は、ここがそう呼ばれるようになるはるか以前から25年以上の長きにわたって、タム山塊の研究を続けている。

 一説では、海の台地である海台は、比較的短期間に大量の溶岩が噴出してできた洪水玄武岩の海底版と考えられている。洪水玄武岩とは、地下にあるマントル物質が超高温のプルームとなって地殻まで上昇するために、玄武岩質の溶岩が洪水のように一気にあふれ出る現象だ。これは陸地でも海底でも見られる。

 1990年代、セーガー氏のものも含めて複数の論文が、このマントルプルームモデルによってシャツキー海台とタム山塊が形成されたという説を解説し、支持した。2009年、セーガー氏は国際深海科学掘削計画(IODP)と協力してタム山塊の複数個所を掘削し、流れた溶岩が固まった跡を発見した。その厚さは23メートルに達するところもあった。そのため、タム山塊は大量の溶岩の噴出によってできたと考えられた。

 また、地震波を利用した観測でも、溶岩が1カ所だけから流れ出ていることが示され、タム山塊はやはり孤立した巨大な盾状火山であるように研究チームには見えた。盾状火山とは、流動性の高い溶岩が噴出して広範囲に広がり、盾を伏せたような形になる傾斜のゆるい火山だ。そうであれば、タム山塊は世界最大の盾状火山ということになる。当時は非常に魅力的な説として「Nature Geoscience」に受け入れられたと、セイガー氏は振り返る。

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