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ホットドッグの謎 カレー味のキャベツいため添えは関西が発祥?

7/18(木) 10:12配信

NIKKEI STYLE

遊園地や野球場など行楽地のスタンドや喫茶店で手軽な軽食としておなじみのホットドッグ。昨年あたりから流行している韓国式ホットドッグ「ハットク」(日本でいうところのアメリカンドッグ)ではなく、細長いパンにソーセージをはさんだアレである。

店やメニューによってタマネギやピクルスを刻んだもの、キャベツを発酵させた漬物「ザワークラウト」など、さまざまなトッピングがある。関西ではトッピングとしてカレー粉で味付けしたキャベツいためが入っている……というのが今回のテーマ。

その前にホットドッグの発祥や名前の由来について簡単に説明しよう。誰がホットドッグを発明したのかは諸説あり、ニューヨーク・ブルックリンの南端にあるコニー・アイランドの屋台が発祥だとか、ニューヨークのスタジアム「ポロ・グラウンズ」の売り子さんが始めただのといわれている。

いずれにしても米国に移住してきたドイツ移民が編み出したのは間違いないようだ。19世紀後半には一般的に知られていたとされ、今ではハンバーガーと並ぶ米国人の国民食である。

名前の由来についても諸説あり、有力なのは新聞漫画から広まったという説。

ドイツでは長くて湾曲したフランクフルト・ソーセージのことを「ダックスフント・ソーセージ」と呼んでいた。というのも、これを最初に製造した店の看板犬がダックスフントだったからとか。また、ダックスフントの長い胴がソーセージをイメージさせるという理由もあった。

あるとき、ニューヨークのスタジアムで人気のソーセージとパンの売り子を新聞に漫画で紹介することになった。その際、「アツアツのダックスフント・ソーセージ」と書きたいところをスペースの関係で「ホットドッグ」と書いたのが名前の由来という。

真偽のほどはわからないが、今なら動物愛護の観点から「どうなの?」と突っ込まれそうではある。

さて、今から25年くらい前、ホットドッグにハマっていた時期がある。あるハードボイルド小説に出てくるホットドッグの作り方の描写がとてもおいしそうだったからだ。そのレシピをまねして作っては食べていた。

その小説とは藤原伊織さんの「テロリストのパラソル」。1995年に発表され、同年に第41回江戸川乱歩賞を受賞。翌年の第114回直木賞も受賞し、史上初の乱歩賞・直木賞のダブル受賞となった話題作である。


主人公はアルコール中毒のバーテンダー・島村。過去に学生運動に興じ、ふとした事故で爆弾を爆発させ、指名手配の身になっていた。そのため名前を変え、過去を隠してひっそりと生活していた。

ある日、新宿中央公園で昼前からウイスキーを飲んでいると、そこで爆弾テロ事件が起き、多数の死傷者が出る。島村は現場から逃げ出したが、ウイスキーのボトルを置き忘れてしまう。残されたボトルの指紋から島村に容疑がかかり、みずから真相解明に乗り出す……という推理小説だ。

島村が雇われているバーには酒類と、つまみはホットドッグしかない。しかも、これがちょっと変わっていて、パンにはさむ具がソーセージとカレー粉で味付けしたキャベツいためなのである。

作品には調理シーンも描かれていて、その通りに作ってみると、これがウマい! カレーのスパイシーな味がソーセージとマッチして、冷たいビールにとても合う。

私はこれを「テロリストのパラソル流」、略して「テロパラ流ホットドッグ」とか「ハードボイルド流ホットドッグ」などと勝手に名づけていた。私だけでなく、これを再現して食べていたハードボイルドファンはけっこういたようである。

それから何年もたち、最近になって関西ではホットドッグといえばカレー味のキャベツいためが入っていることを知った。昔から喫茶店や移動販売車ではこのスタイルで提供されており、そのため家庭で作る場合もカレーキャベツ入りが当たり前なのだそうである。

「ホットドッグだけでなく、我が家ではソーセージを食べるときにもカレー味のキャベツいためを添える」「お弁当にもよくソーセージとカレーキャベツが入っていた。この組み合わせは大阪のおかん(母)の味!」と語る大阪出身の友人もいた。

なんと! 私がかっこいい「ハードボイルド流」と思っていたものが「コテコテの関西流」「大阪のおかんの味」だったとは! 関東圏で生まれ育った私は心底驚いた。

気になって作者の藤原伊織さんのプロフィルを見てみると、やはり! 「1948年、大阪府生まれ」とあった。あのホットドッグは藤原さんにとって地元で慣れ親しんだ味だったのだ。

では、なぜ関西ではホットドッグにカレー味のキャベツいためが入っているのだろうか。実はホットドッグが日本ではやり始めた1960年代ごろは全国的にカレー味のキャベツいためが具として入っていたようである。

ドイツ式のホットドッグにはキャベツの発酵食「ザワークラウト」がはさんであることが多い。が、当時はこれが入手困難で、作るにしても手間と時間がかかる。そんな理由からお手軽にソーセージに合うスパイシーな味つけにするのにカレー粉が使われたようだ。また、ドイツ・ベルリンの名物料理に「カリーヴルスト」というのがあり、これはフランクフルトにカレー粉とケチャップをかけたもの。カレーとソーセージは好相性なので、ここからヒントを得たのかもしれない。


なので、関西以外でも「小さいころにカレーキャベツ入りのホットドッグを食べていた」という人もいる。それがほかの地域ではいつの間にかすたれ、関西のみで生き残った。では、なぜこれが関西のみで残ったのか。

関西では古くから続く喫茶店文化がある。貿易港の神戸ではコーヒーを扱う商社が多く、外国人居住者も多かったためコーヒーとパンなどの洋食を出す喫茶店が明治時代から発達していた。

商人の町・大阪では無駄に広いオフィスを借りることをせず、街の喫茶店が応接スペースの機能を果たしていた。チェーンのコーヒー店やオシャレなカフェも多数参入する中、昭和の香りを残す喫茶店もいまだに健在だ。そんな老舗喫茶店の中で昔ながらのホットドッグも脈々と受け継がれていき、関西のみに生き残ったのかもしれない。

では、最後に「テロリストのパラソル」から「ハードボイルド流ホットドッグ」の作り方を紹介しよう。

ホットドッグ用のバンズ 2個 / ソーセージ 2本 / キャベツ 葉2枚 / バター 少々 / 塩・コショウ 少々 / カレー粉 小さじ1杯半 / マスタード 少々 / ケチャップ 少々
(1)オーブントースターにスイッチを入れ、予熱しておく(2)パンに切り込みを入れ、バターを塗る(3)ソーセージに包丁で斜めに軽く切り込みを入れる(4)キャベツは千切りにする(5)フライパンにバターをしきソーセージを軽くいため、さらに千切りキャベツを放り込む(6)塩・コショウで味付けし、カレー粉をふりかける(7)パンにキャベツをはさみ、さらにソーセージをのせる(8)予熱しておいたオーブントースターにパンを入れて2~3分待つ(9)マスタードとケチャップを塗ってできあがり

米国のNational Hot Dog & Sausage Council(ナショナル・ホットドッグ・ソーセージ評議会)が定めたところによると7月は「ホットドッグ月間」だそうである。米国ではさまざまなイベントが行われたり、割引で食べられたりするようだ。

日本でもこれから本格的な行楽シーズンに突入する。冷たい飲み物とホットドッグを持ってアウトドアに出かけよう!

(ライター 柏木珠希)

最終更新:7/18(木) 12:15
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