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【HRカンファレンス2019春】慶應義塾大学大学院 高橋 俊介氏による基調講演 「日本的人事の本質を考える――何をどう変えなければならないのか」

7/18(木) 7:30配信

日本の人事部

このところ、日本の人事は大きな曲がり角を迎えている。その象徴が終身雇用と新卒一括採用の終焉だ。同時に、無限定正社員や人材の外部流動性の低さといった特徴も、現実にそぐわなくなりつつある。日本の人事はいよいよ本質を変える時期にきた。慶應義塾大学大学院の高橋氏が日本的人事を生み出した背景を読み解き、これから転換すべき方向性を語った。

日本の人事の根底にある「安心社会」と「タテ社会」

高橋氏は、最近起きた日本の人事における大きな変化を取り上げた。終身雇用と新卒一括採用の終焉だ。かつては年功序列・終身雇用・企業内組合が日本企業の強さの三種の神器といわれ、1991年にバブルが崩壊しリストラが始まっても、まだその考え方は残っていた。

「当時、ある経営者は『リストラする経営者は腹を切れ』と言っていました。学者の中にも、終身雇用は日本の宝だと言っていた人がいました。私が当時思ったのは『良い悪いではなく、先々終身雇用を維持できなくなるのは間違いないだろう』ということです。2019年になって、先ほどの会社の現社長が『終身雇用はもう維持できない』と口にしました。さらに日本経団連は、これまで守ってきた新卒一括採用をとうとうやめると言い出しました。この二つの動きが昨年から今年にかけて出てきたのは、象徴的だと思います。最も保守的な牙城が崩れたわけです」

この裏にある根本的な問題とは何なのか。高橋氏は日本的人事の背景にあるものとして、「安心社会」と「タテ社会」を挙げる。この二つの切り口で日本的組織を見ると、日本の人事においてなぜこのような慣習が生まれたのかが、非常によくわかる。

「社会心理学者の山岸俊男氏は、日本は『信頼社会』というよりも『安心社会』だといっています。先進国の中で、安心社会的な色彩を強く持ったまま産業社会として高度成長した国は、日本以外にありません。安心社会とは、組織にいることで安心だということです。その安心感がすべてのベースになる。最近は欧米の会社でも、安心感を主張するようになってきました」

ただし、安心社会へ極端に振れると良い結果にはならない。安心社会では人間関係感知能力が非常に高まり、空気を読むようになる。すると特に海外の部下はついていけない。一方の信頼社会では、人間性感知能力が重要だ。相手を見抜く能力がないと、だまされてしまうからだ。

「安心社会の最大のメリットは、内部取引費用の軽減です。代わりに、外部機会の損失が起こります。日本企業は安心社会の特徴を生かして戦後成長してきましたが、安心社会型の強みだけで生きていける経営環境は減ってきています」

一方、社会人類学者の中根千枝氏が主張したのが「タテ社会」だ。集団には「資格の集団」と「場の集団」の2種類がある。前者は、家族や職能集団などのある特定の資格を持つ人たちで、後者は、会社のようにたまたま一緒にいる人たちの集まりだ。世界中を見ても、資格型の集団が弱く、圧倒的に単一の場の集団が強い、いわゆる会社への精神的な帰属意識が非常に強くなった国は日本以外にない、と高橋氏は語る。

「中根氏は、日本のことを所属する集団が一つに集約されている単一社会だと言っています。それも資格ではなく、場による集団なのだと。これは世界でも特徴的です。また、リーダーの価値が、自身の能力以上に動員できる部下の能力の総和によるのが、日本型のタテ社会の特徴です」

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最終更新:7/18(木) 7:30
日本の人事部

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