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【第233回】完全ワイヤレスからハイブリッド、ダイナミック一発と新イヤホン盛況!「ポタフェス2019夏」高橋敦的ベスト5

7/18(木) 6:30配信

PHILE WEB

先週末、7月13日・14日に「ポタフェス2019」が開催された。特に良くはないが梅雨にしては悪くもなく、夏本番ではないから暑すぎることもないという、絶妙の天候にも恵まれ今回も盛況だった!

ということでこちらも、筆者の個人的な視点からの注目アイテムを何となくランキングっぽく紹介する「いつものアレ」を今回もやっていこうと思う。

【第5位】マニアちゃんは引き続きイヤピを推していきたい

イヤーピースに注目しがちな我らとしては、見逃せない新アイテムが今回も登場!それも……2つも同時にだ………

他イベントでの参考出展時からイヤピマニア筋の注目を集めている、ePro「HORN-SHAPED TIPS」。今回は遂にその先行試験販売が実施されたのだが……

加えてさらなるバリエーションまでも参考出品されていた!完全ワイヤレスに向けた「低傘」バージョンとShureやWestoneに対応する「細軸」バージョンだ!

時流的に注目されるのは完全ワイヤレス想定バージョンだろうが、実はこれ細軸バージョンの方が熱いのではなかろうか?まず、ShureやWestoneなど用の細軸イヤピの選択肢が少ない現状に新たな選択肢が生まれるだけでも注目に値する。前述の両社の純正品は、軸から先の音導穴も細いタイプ。対してこのHORN-SHAPED TIPSは、超大口径でホーン形状。その落差の大きさはそのまま音の変化の大きさにつながる。

実際Shure「SE846」に装着して聴かせていただいたのだが、音の抜けや空間の開放感が明確、いや明確すぎるほどに強くなる。「これまでSE846から聴いたことのない音」とも感じられたほどだ。正直SE846との組み合わせだと「いやこれ抜けすぎ広がりすぎだろ」感さえある。だがそれならば!例えば、抜けや広がりには欠ける「SE215」との組み合わせは超ハマるかもしれない。そんな期待も持てる。

実際代理店でも、変化が大きすぎることもあって「これ需要あるんだろうか?」と判断に悩んでいるとのこと。今後も各所のイベント等での参考展示が予想されるので、細軸イヤホンユーザーはぜひ愛用のイヤホンを持ち込んで実際に試し、意見をお伝えしていただければと思う。

もう一方は、低反発フォームイヤピの代名詞、COMPLYの新製品「TRUEGRIP TG-200」!こちらは完全ワイヤレスを想定したタイプだ。

コンプライ製品であるから基本性能については安心なのはもちろん、加えて注目してほしいのはこちら!同社がいつも提供してくれている「このイヤピはどのイヤホンに適合するか?」の表なのだが、このイヤーピースに用意された表はその『完全ワイヤレス対応版』だ!

この表、ここに記載されている完全ワイヤレスイヤホン本体の「ノズルに適合」だけではなく、充電ケースへの「収納に問題がない」ことも確認されているとのこと。

これらのイヤホンにTG-200を装着した場合には、「イヤピが大きすぎてケースに入らない」「ケースには入ったけど中でちょっと浮いちゃって充電が不安定」みたいなことはないというわけだ。これは安心して買える!イヤーピース分野で長らく信頼を勝ち取り続けてきたコンプライ、さすがの対応だ。

【第4位】黎明期を抜けた完全ワイヤレスイヤホン

“完全ワイヤレス向けイヤピ”なんて製品が出てきていることもその表れかもしれないが、完全ワイヤレスイヤホンは黎明期を脱し、もうごく普通のイヤホンとして確立されてきたように思える。現状でおおよそ「最新チップ搭載モデルなら、接続性が極端に悪いことはなく十分に実用的」と言える状況であり、「使い物になる/ならない」なんて最低限レベルの話ではなく、使いやすさや音質、加えての独自性などでの競争へとステージが完全に移った印象だ。

今回のタイミングでは、ノイズキャンセル搭載やアプリの充実はそのままに、より完成度を高めたSony「WF-1000XM3」、ハイブリッドドライバー構成と豪華コラボで注目のAVIOT「TE-BD21f」「TE-BD21f-pnk」が特に多くの客足を集めていた。

それらは改めて言うまでもなくぜひチェックしてほしい新製品なのだが、他にも多数出展されている。中でもHIFIMAN「TWS600」は少し気になったモデルだ。価格は1万3000円程度で近日発売開始とのこと。

ケースも十分コンパクトなラウンド形状だし、開閉や出し入れの手応えもしっかりしているし、USB-Cだし、バッテリー周りのスペックも不足ない。接続性は実際に街で確認しないことには判断できないが、ポタフェス会場も条件としては厳しい方だろう。その会場でも短い試聴の間に途切れることはなかった。

その前提条件を満たした上で、同社イヤホンの特徴である「特殊のナノコーティングによるトポロジー振動板」を採用。Bluetooth伝送による損失はあるので超高域の薄刃の切れ味までは出ないが、全体にはしっかりと同社らしいサウンドにまとめあげられている。同社ファンは音にこだわりのある人ばかりと思うが、そのHIFIMANファンも、この価格でこの音ならスマホと組み合わせる普段使いモデルとして納得できるのでは?

そして「あのHIFIMANが完全ワイヤレス参入」という事実もまた、完全ワイヤレスイヤホンがもう特別なものではなくなったことを象徴しているような気もしたり。

【第3位】強烈アンプ!超コンパクト!対照的なDAP新モデル

ポータブルプレーヤー分野では、真逆の魅力を見せてくれた2モデルが印象に残った。Questyle「QPM」とFiiO「M5」だ。

Questyleは“いまどき大画面+タッチ操作”ではなく、“小画面+スクロールホイール”にこだわる頑固一徹メーカー。そこについて好みは分かれるかと思うが、その強力なアンプ部から生み出されるサウンドは総じて高い評価を受けている。そのQuestyleの新モデルが「QPM」だ。

基本はこれまでのQPシリーズ、既存の「QP2R」を踏襲するものであり、筐体の形や操作性などに変わりはない。なのでその部分で好き嫌いが分かれるのはこれまで通りだろう。強力なアンプのせいでバッテリー駆動時間は長くはないし、発熱もあったりするのも多分そのままだ。

だがしかし、バランス駆動端子が2.5mmから4.4mmに変更され、ただでさえ強烈だったフルディスクリート純A級アンプがさらにブラッシュアップされたとなれば、操作性等の面での好みや少しの不便さの壁をぶち破られるほどの、大きな魅力を感じる方はさらに増えるのではなかろうか?それにブラック筐体の仕上げが見事でかっこいい!

対してFiiO「M5」は超コンパクトでいて、その小ささの中で操作性も可能な限り引き上げられていることがポイント。価格も1万円台の見込み。

スワイプを多用する操作インターフェースになっているのだが、SoCの処理性能やソフトウェア的最適化のおかげか、その基本となるスワイプへの反応が気持ちよく、スワイプがすかって無反応…なんてこともなかった。

そして特に注目してほしいのは、表示文字数。超小型プレーヤーはディスプレイも超小型になるので、表示文字数が少なくなり、曲名等を確認しても操作に難が出てくる場合もある。

こちらはシンプルに、フォントを小さめにすることでその弱点をある程度はクリア!ファイルブラウジングで「番号_アーティスト名_曲名」みたいなファイル名を見る場合でも、その曲名を判別できる先頭数文字くらいまではしっかり表示してくれる。

この点は先行のライバル製品であるShanling「M0」に対しての優位だ。とはいえ両製品のディスプレイサイズと解像度は同じなので、M0もソフトウェアアップデートで同等レベルにできるかもしれない。それも期待したいところだ。

こちらは音も軽く確認できたのだが、これまでのFiiOのイメージとは少し違う、すっきりとして解像感のあるサウンドという印象。代理店の方も「今回はDAC&ヘッドホンアンプ統合チップ、AK4377の持ち味を素直に生かしたのでは」とのコメント。個人的には好み!

【第2位】ハイブリッドイヤホン新世代ハイエンドの攻勢!

先週のポタ研では「FitEar DC」に注目したが、実はそのポタ研にて、筆者が訪れたタイミングではブースが混みすぎていて取材を断念したのがミックスウェーブ。そこで今回再チャレンジしてみると、こちらにも注目すべきハイブリッドドライバーイヤホン新モデルが!

まずはFAudio「Project Y」。低域側からダイナミック+BA+静電型のハイブリッド。

去年末のポタフェス、先週のポタ研に続いて三度目の参考出展となるが、チューニングはそのたびに全て別とのこと。日本で展示されたその三回とも、チューニングが全て違うというだけではなく、その他にも何度も試作を重ねているとのことだが、今回のバージョンのサウンドで「おそらく九割完成」だとか。

筆者は去年末「ポタフェス2018冬」バージョン以来の試聴だったが、その感触はかなり変わっていた。その時はダイナミックドライバーによる低域の重心が高く、低音の「太さ」を主張するものだったが、今回のバージョンは重心が下がって低音の素直な「沈み」を感じさせる。静電型による超高域も主張は薄れ、質感をより自然に表現するものとなった印象だ。

思うに初期展示バージョンでの音作りは、この組み合わせのハイブリッドでの各ドライバーの特徴をまずは強調し、そこからどう作っていくかの「叩き台としてのわかりやすさ」を狙ったものだったのかもしれない。そして展示試聴でのユーザーからの感想も含めて叩き上げて今回のバージョンのように仕上げてきたのではないだろうか。以前のバージョンの音がしっくりこなかった方も、次の機会があれば改めてチェックしてみてほしい。

続いてはUnique Melody「MAVERICK III Custom」。これまでと同じくダイナミック+多数のBAによる複雑なドライバー構成だが、そのダイナミック型ドライバーを新型として担当帯域も再調整、それに合わせてその上のBA型の担当帯域も調整。さらに……

加えて同社「MAVEN」で初採用の新技術「Targeting Frequency Adjustment Technology(T.F.A.T)」も採用。BAドライバーがどうしても発生させてしまうピークノイズに対して、別途の同機能専用BAドライバーから逆位相信号をぶつけてキャンセリングするという技術だ。そのためのドライバーが、筐体から耳への音の出口の、最後の最後のところに設置されている。

サウンドチューニングにおいても、最終段階はこのT.F.A.Tの効かせ具合の調整だったというほどに、この機能の貢献は大きかったようだ。効かせすぎると音の歪みや雑味のような成分が「不自然なまでに」消えてしまうので、さじ加減が難しかったとのこと。

なお代理店としては「こんな場所にドライバーを設置して、雨とか汗とか湿気とかの悪影響を受けたりしないの?」と確認したが、開発者からの返答は「BAの頑丈さ舐めんな」だったとのことなので安心してほしい。

そのサウンドであるが、個人的には歴代MAVERICKシリーズで一番の好印象!音作りにおいて稼ぎたくなりがちな太さや厚みといった要素を、いかにあえて削ぎ落とすか。その攻め具合が素晴らしい。例えば肉体の強さ美しさをアピールするためには、筋肉を増やすだけではなく、贅肉を削ぎ落とすことで筋肉の彫りを見えやすくすることも必要だろう。その削ぎ落とすアプローチの見事さを感じさせる、彫りが深く立体的なサウンドだ。もちろん十分な力強さも備えている。

なおカスタム版の後にはユニバーサル版も予定はしており、現時点では、音響的に、つまり「音が良いから」という理由でチタンハウジングの採用を考えているとのこと。チタンハウジングだとその分のコストアップで、カスタム版とほぼ同額くらいになりそうな予感はするが、ユニバーサルモデル好きな筆者としてはそちらにも期待!

その他には、発売以来大好評のMEZE Audio「REI PENTA」も引き続き展示されていたし、ハイブリッド型ハイエンドイヤホンはジャンルとして絶好調と言えるのでは?

【第1位】ダイナミック一発!の三連発!

しかし、だ。ダイナミック型一発!も、もちろん負けてはいない!特にTAGO STUDIO TAKASAKI「T3-02」とAstell&Kern「AK T9iE」は長い行列を作っていた。

TAGO STUDIO TAKASAKI「T3-02」は、おおよそ4万円未満程度の価格を予定しており、今夏にまずクラウドファンディングから展開を始めるとのこと。

派手な宣伝なしにジワジワと評価を高め、人気モデルとなった同社モニターヘッドホン「T3-01」のサウンドを、屋外でも楽しんでもらうためのイヤホンとして開発したのこと。そのためにまずはレコーディングスタジオの「部屋の中に部屋を作るBOX-IN-BOX構造」をイヤホンに応用。

アウターハウジングの中にステンレス製のコアユニットを収納することで遮音性をぐっと高めたとのこと。その上で、それでも侵入してくる騒音にマスキングされやすい帯域をやや強めにチューニングすることで、最終的にユーザーに届くサウンドをT3-01と同じくナチュラルなものに仕上げてある。

言葉のニュアンスの話になってしまうが、音の表現として、例えば「クリア」ではなく「ナチュラル」という言葉を同社自らが選んでいる、その意味がわかるようなサウンドだ。あるいは「プレーン」という言葉も当てはまるかもしれない。そういった感触とモニターとしての正確性を巧みに同居させてあることがTAGOサウンドの特徴だ。

なお、リケーブル端子はMMCXをベースに埋め込み型的な形に仕上げられている。端子をグニグニこねるように抜き差しされてしまうと端子に負荷がかかり故障につながりやすいため、それを防ぐ方策としてこの形を採用したとのこと。

代わりにリケーブル製品一般との互換性は損なわれているが、同社はヘッドホンT3-01に純正アクセサリーとして各種バランス接続端子版ケーブルを用意。なのでイヤホンでの純正ケーブル展開も期待できる。その点はさほど心配しなくてよいだろう。

もう一つに注目イヤホン、Astell&Kern「AK T9iE」は、beyerdynamicとのコラボレーションで生み出された「AK T8iE」の後継となるモデル。

後継とはいうものの、T8iEがおおまかには「beyerdynamic設計モデルのAKチューニングバージョン」といったコラボレーションでの製品だったのに対して、こちらT9iEは、T8iE開発の成果であるドライバーや設計や「Made by beyerdynamic」は継承しつつ、頭っからAK製品として設計されたものとのことだ。

音響機構としては、ステム先端に新開発2層構造アコースティックフィルターを搭載し、高域特性をよりスムーズに。ハウジングの「アコースティックベントポート」も改良し、よりレスポンスに優れた低域再生を実現。その他、例の独特な形状のイヤーピースはT8iEは5サイズ付属だったところ今回は7サイズに。

実際に聴いてみると、普段からT8iE MkIIを愛用する筆者としても「これは確かなアップデート!」と納得。イベント会場での試聴は細かなところまでは評価できないが、「よりスムーズな高域とレスポンスに優れた低域」という狙いは見事に達成されていると感じられた。これは登場が実に楽しみ!早くしっかり聴き込みたいモデルだ。

最後にもうひとつ、毛色の異なるタイプのダイナミック型一発モデルも紹介しておこう。astrotec「Lyra Nature JP Version」だ。2万円以下くらいで発売予定。

非カナル型スタイルを採用し、カナル型では難しい15mmという超大口径ドライバーを搭載。ハウジング背面にはマイクロ多孔質フィルターを採用しており、「そのフィルター効果で最適化された背面半開放型」といった感じだ。

カナル型ではないのだが、その割には騒がしいイベント会場でも妙に心地よく試聴できた。周囲の音とうまく調和するような音作りが功を奏しているのかもしれない。低域から高域まで素晴らしく豊かな厚みがあるのだが、もっさりとせずにしなやかなサウンドで、上記のようなモニター的あるいはハイエンド的な極上サウンドとはまた別の魅力がある。



今回の「ポタフェス2019」では、完全ワイヤレスイヤホンも「定着した普通のアイテム」となり、そこに注目が集まりすぎることもなく、様々なジャンルに魅力的な製品が溢れていてバランス良好!この夏、そしてそれ以降への期待が膨らむイベントであった。

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高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi

趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。

高橋 敦

最終更新:7/18(木) 9:50
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