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ファンエンゲージメントを高めよ 横浜F・マリノスのデジタルメディア戦略

7/19(金) 12:04配信

footballista

横浜F・マリノスでメディア&ブランディング部長を務める大多和亮介氏のミッションはファン・サポーターのクラブに対するエンゲージメントの向上。Jリーグクラブにとって収入源である「チケット」はもちろん、「スポンサー」への対価提供にも直結する重要な仕事だ。今回は多岐にわたるアプローチの中でも近年クラブが力を入れている「eスポーツ」と「ドキュメンタリー動画」に関して話を伺った。

インタビュー・文 玉利剛一(フットボリスタ編集部)
写真 藤井隆弘

バロンドールでも表彰される「eスポーツ」

――まずはeスポーツ事業を開始された経緯から伺わせてください。

 「2017年の終わりに大規模な市場調査を行ったのですが、横浜市民におけるマリノスへの関心度が20%程度でした。これは5年前の調査からほとんど変化がない結果。さらに、マリノスの観戦者平均年齢は2018年の調査で37.1歳。Jリーグの中では一番若いものの、それでもここ10年で5歳近く高齢化が進んでいる。そうした背景から若い方に関心を持って頂くアプローチがマーケティングにおける大きな課題でした。

 ただ、既存の広告では彼らは見向きもしてくれないし、大々的なことをやる予算もない。そんな中、昨年の春にJリーグが『eJリーグ』というeスポーツの大会を立上げた際に、うちも推薦という形で選手を派遣して参加してみました。私も会場に行ったのですが、ファンの熱量に驚かされました。さらに大会を観ている人達の9割が20代であることも聞いて、ますます関心を持ち始めたというのが経緯ですね」

――つまり、マリノスに関心を持ってもらうきっかけとしてeスポーツが機能することを期待している。

 「その通りです。最終的にはスタジアムに観戦してもらうことが目標ですが、そのゴールまでは長い道のりなので、まずは関心層の中に入ってきてもらう程度の効果を期待しています。eスポーツを配信する中に試合の告知を入れたり、スタジアム内でeスポーツのイベントを開催するなど少しずつマリノスに触れる時間を増やしてもらっています」

――同じスポーツであるとはいえ「eスポーツ」はマリノスにとって知見がない分野だと思うのですが、どのように運営を始めたのですか?

 「シティ・フットボール・グループ(以下、CFG)の人にアドバイスをもらっています。マンチェスター・シティはeスポーツにもかなり力を入れていると聞いています。コミュニケーションを取る限り、eスポーツを専門としている社員の方もいます」

――例えば、どのようなアドバイスをもらっていますか?

 「選手獲得に関しても助言を受けています。今年、FIFAシリーズのeスポーツプレーヤーであるナスリ選手と契約したのですが、これはCFGからのアドバイスも考慮して決めました。彼はヨーロッパの大会でも実績を残していて、実力的には申し分ないと。さらに選手のブランディングやイベント実施に関しても、結構細かいところまで言及してもらっています」

――マンチェスター・シティのeスポーツ事業は中国でチームを立ち上げるなど国際的な展開も行われていますが、マリノスにも海外進出の予定はありますか?

 「そこまではまだ考えていないですが、ナスリ選手には是非「eWorld Cup」にマリノスのエンブレムをつけて出場してもらいたいです。そこで優勝するとバロンドールの式典でも表彰されます。夢がありますよね」

――サッカーゲームであるFIFAシリーズへの参画は親和性の観点からも理解できるのですが、一方でカードゲームである「Shadowverse」のチームも運営されています。ここにはどのような狙いがあるのでしょうか?

 「まさに今、感じていらっしゃる疑問が肝です。マリノスがカードゲームに参画する違和感こそがニュースバリューだと思いますし、違和感があるからこそ人の記憶にも残るはずです」

――そのようなお話を聞くと、マリノスの中でeスポーツ事業はサッカー事業のプロモーションという扱いで運営されていると考えていいのでしょうか?それとも独立採算を目指すのでしょうか?

 「昨年の8月にeスポーツを立ち上げた時は、目の前のことに精一杯で未来のことを考える余裕がなかったのですが、今年は黒字化を見込んでいます。そういう意味では後者ですね。おかげ様でeスポーツチームをスポンサードしていただける企業様も集まっています」

――eスポーツ事業へは「日産」「アディダス」「森永製菓」「ヒューマンアカデミー」「イノテック」と大手企業がスポンサードされています。各社は何をメリットにスポンサードしているのですか?

 「我々が参入した理由と同じです。若い年齢のファンを育ててこられなかった反省が顕在化してきている。ただ、そこに確実にアプローチする手段は少ない。例えば昨年マリノスが参戦した『RAGE』というeスポーツ大会は幕張メッセで開催されて何千人という集客がある。それだけの若者が集まるイベントって今は本当にない。マリノスのeスポーツへスポンサード頂ければ、そうした場所にもアプローチできる。そこは価値ですよね」

――eスポーツは業界的にオフラインのイベントが盛り上がっており、多くのファンと直接交流できる機会があるのは大きなメリットですね。

 「マリノスのeスポーツチームはファンと直接交流する時間を増やすことを今年のテーマにしています。スポンサードして頂いているヒューマンアカデミー様と一緒にeスポーツに関する授業を開くほか、日産グローバル本社ギャラリーでeスポーツ大会を主催するなど、活動の幅は広げていく予定です」

――そうなると選手にはゲームの技術以外のスキルも求められます。eスポーツチームを運営する関係者からは「eスポーツ選手の社会性」の課題をよく聞きます。つまり、社会人経験がないままプロになる選手もいる中で、マナーやコミュニケーションのマネジメントが難しいと。

 「プロアスリートにとって大切なのはファンに愛されるかどうか。だから、人間性の部分は重視して採用しています。競技面での成績はもちろん、事業や社会への貢献も意識してもらっています。Jリーグでも『トリプルミッション』という言葉でよく議論される部分ですが、そのすべてを高めていくことでeスポーツがスポーツとして認められ、産業としても健全に発展していけるはずです」

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最終更新:7/23(火) 17:54
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