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杉岡大暉に芽生えた「ある思い」。ベルマーレの星が世界の舞台で得たもの【コパ・アメリカに挑んだ若き日本代表の今(2)】

7/19(金) 10:20配信

フットボールチャンネル

ブラジル代表の優勝で幕を閉じたコパ・アメリカ2019(南米選手権)。東京五輪世代の選手中心に挑んだ日本代表は、グループリーグを2分1敗で終え、ベスト8入りを逃している。それでも、若い選手たちにとっては収穫の多い大会となったに違いない。そんな彼らはコパ・アメリカというビッグトーナメントを経て、現在は所属クラブでどのような時を過ごしているのか。第2回は湘南ベルマーレのDF杉岡大暉。(取材・文:元川悦子)

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●曹貴裁監督からも「目に見えて変化した」

 5月26日ヴィッセル神戸戦から5連敗という泥沼に陥り、J2降格圏転落危機に瀕していた湘南ベルマーレ。しかし7月7日の名古屋グランパス戦勝利でトンネルから抜け出し、14日の神戸戦も連勝。アンドレス・イニエスタやダビド・ビジャという世界トップ選手を擁する相手から勝ち点3を手にする原動力となったのが、決勝点となる2点目をマークした左ウイングバック・杉岡大暉だった。

「原点に戻ると言うか、極端にタテへ行く方向にしてみようという感じだったんで。今までもベースはありましたけど、どこかつなごうという意識が強くなっていた。チームが強くなるためには必要なことですけど、1回ほぼ100%原点に返ってやろうと。割り切ってやれたからこそミスもポジティブなものばかりだったし、いい空気が流れてました」と自ら勝利を引き寄せた背番号5は力を込めた。

 6月のコパ・アメリカ2019にA代表として参戦し、3試合フル出場を果たしたことで、曹貴裁 (チョウ・キジェ)監督からも「目に見えて変化した」と言われる杉岡。準々決勝進出の道はあと一歩のところで断たれたものの、チリ、ウルグアイ、エクアドルという強豪相手に1対1の守備では負けないところを随所に示した。そこは本人も自信を抱いた点である。

「やっぱり1対1のところが一番、手ごたえがあります。ただ、それは近くで対応できた時に限ったこと。僕の中では近い距離で対峙できた時はある程度はできたのかなと。ただ、逆に行けなかった時は好き放題やられたイメージがある。今まで考えていた以上に近くにいかなきゃいけないなと思いました」と杉岡は神妙な面持ちで言う。

●久保建英や阿部裕葵も…。膨らむ思い

 Jリーグでは多少スペースを空けたり、寄せきれずにクロスを上げさせても、失点に直結しないケースが多い。しかし、チリやウルグアイにはアレクシス・サンチェスやルイス・スアレス、エディンソン・カバーニといった世界最高峰のFWがいて、ゴール前にチャンスボールが来れば確実に仕留めてくる。だからこそ、クロスを上げさせないことを徹底するしかない。杉岡はサッカーの1つの重要な真理に辿り着いたようだ。

「日本だったら『外からだったら多少ボールを上げられてもいい』っていう感じも今まではありました。でも(いかに)クロスを上げさせないかがサイドバックの最大の勝負どころ。その世界基準をつねに意識しないといけない。コパに行った自分しかその基準は経験できないことだったので、絶対に忘れちゃいけないと思います」

 世界トップを体感すればするほど、異国のハイレベルの環境を渇望するようになる。それがフットボーラーの性(さが)というものだ。ともにコパを戦った川島永嗣や岡崎慎司、柴崎岳ら先輩たち、あるいは同い年の冨安健洋らの姿勢を見るにつけ、「自分自身も海外でやりたい」という思いが杉岡を突き動かすようになったという。

「向こうでやらなきゃ経験できない寄せや環境があるというのは実感しました。Jリーグはピッチ状態やボールを含めてホントに恵まれてるなと思いましたし、『海外に行かなきゃいけない』って言ってる選手が多い理由も分かった気がしましたね。

 特に印象に残っているのは、岡崎さんと話した時に『日本だったらチームとして戦うことが多いけど、海外へ行ったらホントに個人の戦い。練習でも負けたら悔しがるのが当たり前だ』と聞いたこと。それはすごいなって思いました。試合に出るための競争は湘南にもありますけど、海外の厳しさはそれ以上。そこは自覚しなきゃいけないところです」

 同じくコパに参戦した久保建英や阿部裕葵ら同世代の選手は海外挑戦に赴く決断をした。流れは加速する一方で、中村敬斗、菅原由勢らU-20世代もチャレンジに踏み切っている。「長友佑都の後継者候補筆頭」と目される杉岡が同じ考えを持つことも自然な流れと言える。

●32歳の長友佑都に引導を渡すか

 しかしながら、彼にはその前にやるべきことがある。湘南という国内屈指の成長可能な環境で個の力を伸ばし、チームの躍進の原動力になること。そういう重要な役割を担える存在感を示すプレーヤーになれば、自ずと外に出る話が舞い込むはずだ。

「コパでA代表の選手たちと一緒にやって感じたのは、まず全員がアベレージが高いし、できないことがホントに少ないなと。その中でストロングがハッキリしているなと感じました。トミ(冨安健洋)だって、自分と同い年なのにクソ真面目でメチャクチャ意識が高い。トミはコパで『全然できなかった』と思ったみたいですけど、だったら俺はどうなんだって思っちゃうくらい。自分はまだまだだと感じます。

 サイドバックはまず守備がベースだけど、やっぱりプラスアルファで攻撃がほしい。特に湘南みたいにウイングバックをやる時は個人で前に行くことも求められてきます。それもできなきゃいけないし、できるようになればすごくいい選手になれる。そう信じています」

 実際、杉岡は2018年Jリーグルヴァンカップ決勝の決勝弾や14日の神戸戦での一撃など、正確な左足から繰り出す強力なシュートを持っている。それがさく裂する回数はまだまだ少ないが、得点への意識を高めれば、ゴールやアシストといった目に見える数字も上がっていくだろう。

 攻守両面でスケールアップできれば、32歳の長友を凌駕して、A代表の左サイドの定位置をもぎ取る日も想像より早く訪れるかもしれない。その高いハードルに向かって、今の彼には1日1日を大切にしてほしい。

(取材・文:元川悦子)

【了】

最終更新:7/19(金) 10:20
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