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原油高騰とタンカー危機、混迷するイラン情勢の行方を読み解く2つのキーワード

7/19(金) 11:42配信

ニューズウィーク日本版

イランによる各国のタンカーを狙った拿捕・妨害が相次ぎ、アメリカは有志連合構想を掲げて強硬姿勢を崩さない。緊張感が高まる中東情勢をエネルギー専門家の視点から読み解く

アメリカとの対立で混迷を深めるイラン情勢を巡り、原油市場は先行きの不透明感が漂っている。イランによるタンカーの拿捕やその未遂が取りざたされ、情報は錯綜。アメリカは船舶護衛のための有志連合結成を目指し、イランへの圧力を強めている。核合意当事者の欧州は米イランの対話を呼び掛ける一方、当の米イランが強硬姿勢を崩していない。

国際指標の原油先物は7月以降、1バレル当たり60ドルを挟んで推移。今後各国の出方次第では昨年10月以来の70ドルも視野に入る。

■波乱含みの有志連合

目下、最も注目されるのは有志連合の行方だ。米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は7月9日、ホルムズ海峡などで民間船舶の安全確保を担う有志連合の結成を目指すと明らかにした。タンカーへの攻撃や妨害、その疑惑が相次いでいるためで、同氏は2週間ほどで参加国を見極め、各国の軍と具体的な活動内容を協議したいと説明した。早ければ7月下旬にも立ち上がる可能性がある。

有志連合は、国連決議に依らずに、賛同した同盟国が結束して平和維持活動や軍事作戦に当たる。過去には2003年のイラク戦争の際、米英が有志連合としてイラクに攻め入った例がある。

今回の連合は、あくまでペルシャ湾の周辺海域を通る船舶の護衛に当たるとされる。16日にはエスパー米陸軍長官が、イランとの衝突を避けるのが目的だと趣旨を説明した。米側の狙いは少なくとも2つあるとみられ、1つは護衛などに要する軍事費の負担軽減、2つ目はイランへの国際包囲網の強化だ。

連合の構想に関する計画は19日に発表予定で、日本政府も説明を聴取する方向で検討しているという。今のところ、連合への参加意思を明確にした国は出ていない。

ホルムズ海峡などで風雲急を告げる動きは、特にこの1カ月ほどの間に目立った。6月中旬の安倍晋三首相のイラン訪問時に起きた日本企業のタンカー攻撃に始まり、イランによる米軍の無人機撃墜やトランプ米大統領のイラン攻撃命令とその中止、イランのタンカーの拿捕、英国タンカーの拿捕未遂など、きな臭い事件が連日報じられてきた。

16日にも、イラン領海内のホルムズ海峡で、アラブ首長国連邦を出港したタンカーが消息を絶ったと報じられた。イラン側は「故障していたタンカーを救出した」と強調したが、「拿捕されたのではないか」との疑惑もあり、緊迫した状況が続く。

こうした事案の1つ1つが、有志連合構想を正当化する材料になり得る。

■日本の中東依存度は9割

エネルギー資源の少ない日本にとって中東は極めて重要な地域だ。ほぼ全量を輸入に頼る原油は、現在ではその9割近くを中東産が占めている。

日本は「エネルギー安全保障」を掲げ、供給源を多様化させる戦略を取ってきた。かつて1970年代の石油ショックを教訓として、中東依存度を低下させてきた。その結果、1967年度に91.2%に達した中東依存度は、1987年度に67.9%まで低下した。しかしその後、原油価格が安かった時代を経て、再び中東に偏重するようになってきた。

輸入原油の8割が通ると言われるホルムズ海峡は、日本にとって最重要のシーレーンだが、トランプ氏は6月にツイッターで「なぜアメリカが他国のために無償で航路を守っているのか。船舶は自国で守るべきだ」と主張していた。

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最終更新:7/19(金) 12:32
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