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絶滅危惧のエイ、希望の赤ちゃん元気に育つ、飼育下で初

7/19(金) 18:58配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ブラジルで5匹が元気に成長中、今年も妊娠に成功

 世界で初めて飼育環境下で生まれた絶滅危惧エイの子どもたちが、このほど初めて公開された。

ギャラリー:海底に隠れるエイ、ほか姿を隠す動物たち 写真43点

 このエイは、ツバクロエイ属の一種Gymnura altavela。成長すると幅2メートル以上にもなり、ブラジル南東部をはじめとする大西洋岸の比較的浅い海域に生息している。

 赤ちゃん誕生は2018年8月のこと。南米ブラジルのリオデジャネイロ海洋水族館(アクアリオ)が、3匹のオスと2匹のメス、計5匹の繁殖に成功した。快挙から約1年、現在また新しい命が生まれようとしている。絶滅が危ぶまれているこのエイにとって、非常に明るい知らせだ。今のところ、新たに生まれてくる子どもたちの数はわかっていないが、妊娠期間である半年が過ぎれば、明らかになるはずだ。

 ブラジルでは、このツバクロエイの捕獲や販売は違法であるにもかかわらず、密漁やトロール船による混獲などは後を絶たない。こうした漁業による脅威に環境汚染の影響も加わり、このエイの生息数は減少。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種(vulnerable)に分類されている。なかでも、沿岸漁業が盛んなブラジルでは、絶滅が近いとの報告がある。

快挙を達成するために

 ツバクロエイの子どもたちが初公開されたのは6月下旬、Globoという地元テレビ局が撮影を許可された。海洋生物学者でアクアリオのCEOでもあるマルセロ・シュピルマン氏によると、エイたちは元気に過ごしているという。近いうちに同館の「オーシャン・タンク」と呼ばれる大水槽で一般公開する予定という。

「よく知りもしない生物を保護しようとは思わないでしょう」とシュピルマン氏は言う。「この水族館には、危機に瀕している生物を見てもらうことで、保護の重要性を訴えるという役割があります。保護するためには、その生物について知らなければならないのです」

 エイの繁殖から出産、そして5匹の子どもが生まれてからの飼育は、すべて細心の注意が求められる。アクアリオでは、チームで慎重に計画しながら対応に当たった。ツバクロエイは環境に敏感なため、海と同じように自然に暮らせる飼育環境を作らなければならなかった。

「何としても、このエイたちが自力で繁殖できる環境を作りたかったのです」とシュピルマン氏は言う。オーシャン・タンクには350万リットルの良質な水がたたえられ、サメやエイ、魚などが暮らす安定した生態系ができている。繁殖に成功したのも、この環境があったからこそだとシュピルマン氏は述べている。

「種を保護するうえで、飼育下での繁殖は非常に重要です」と、IUCNでサメ専門家グループを担当している生物学者パトリシア・シャルベ氏は言う。「繁殖するということは、つまり、子孫を残したいと思うほどいい暮らしをしているというしるしだからです」

 ツバクロエイの子どもが生まれたのは、オーシャン・タンク内にある小さなタンクだった。通常は、ダイバーがその中に入って生き物たちを世話するのに使うところだ。こうすることで、メスの飼育環境を維持したまま、獣医が超音波で診察したり子エイが初めて水に入るのを助けたりすることができた。自然界では、エイの子どもが捕食者に襲われて死ぬ確率が高い。そのため、5匹の子どもは大きな水槽にいるサメから隔離した状態で育てた。

 生後11カ月となった今も、エイたちは元気に暮らしている。まもなく、デビューする予定だ。

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