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「なぜ今、時代は新海誠なのか」有村昆が語る“日常というファンタジー” &“セカイ系”の破壊力

7/19(金) 17:30配信

ウォーカープラス

興行収入250億円を超え邦画歴代2位という大ヒットした劇場版アニメ『君の名は。』(2016年)の新海誠監督による待望の最新作『天気の子』が、7月19日(金)より公開される。本作は、東京へやってきた家出少年と不思議な力を持つ少女の切ない恋模様を描いたファンタジーアニメ。今作も映画音楽はRADWINPSが手掛け、映画プロデューサーの川村元気という『君の名は。』のタッグにより世に送り出されることでも期待が集まっている。映画コメンテーターの有村昆が、改めて新海誠監督作品の魅力について語ってくれた。

【写真】『君の名は。』で大ヒットを記録した新海誠監督

(『天気の子』あらすじ)高1の夏、離島から家出して東京にやってきた主人公の森嶋帆高(声:醍醐虎汰朗)。しかし生活に困窮し、怪しげなオカルト雑誌のライター業の仕事に就く。そんななか帆高は、ある事情を抱え、弟とふたりでたくましく暮らす少女・陽菜(森七菜)と出会う。彼女には、祈るだけで空を晴れにできる不思議な能力があった……。本作は、“僕と彼女だけが知っている、世界の秘密”についての物語だ。

■ 新海作品が現代の若者たちに響く理由は…徹底した「こじらせ世代の代弁者」

――これまでの新海作品では「想い人に会えない」という描写が印象的でしたが、前作の『君の名は。』では「赤い糸はあるんだ」というところまで描かれていました。平成後半は、草食男子、こじらせ男子、こじらせ女子といった言葉も登場するなど、“異性への興味が内に向かう”時代が続いた半面、その揺り返しで「人の温かさも必要」だと気付いた人が多くいたのだと思うのです。こういった、今の時代を生きる人々のマインドを受け、新海監督の作品もその都度アップデートされてきたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

【有村昆】僕は、昭和は手塚治虫、平成は宮崎駿、そして令和は新海誠もしくは細田守監督の時代になっていくと思っています。なぜ今、時代は新海誠なのかというと、理由はちゃんとあります。ストーリーのアップデートはありますが、新海作品のテーマの部分はブレていなくて、ずっと“セカイ系”だというところなんです。セカイ系とは、“僕(主人公)と君(ヒロイン)とその周辺のみで展開する話”のことで、まさに先ほど出た草食男子、こじらせ男子な“僕”と“君”しか出てこないんですね。セカイが大変なことになっていようとも、“僕”と“君”だけの物語なんです。

これは1995年に放送されたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』も一緒で、平成の時代を象徴する物語の類型。これらの作品には、バブルが崩壊した後の、お金を使わない、人のことなんてどうでもいい、自分のことだけを考えるといった人々のマインドや時代の特徴が反映されてきたんです。新海監督作品が受けるのは、こうした今の若者たちの“代弁者”であり続けているところが大きいと思います。

■ ”こじらせ”の集大成が令和に進化を果たす

【有村昆】今はSNSが流行したことによって、誰もが発信できるようになった反面、その恐怖で言いたいこともいえない、揚げ足取りの時代になった。だから、人々はこじらせがちになり、そういった現代人像が主人公に投影されていると思います。

そして今回の『天気の子』は、セカイ系の集大成であった『君の名は。』の“次の形”へ移行している点も見逃せません。内容はネタバレになっちゃうからいえないんですけど、セカイ系の次はこっちです、もう一歩外に出ましょうと、新海作品の次の形が示されているので、是非劇場で観ていただきたい。平成の作品とは違う、令和の作品になっています。

■ 日常という”ファンタジー”、リアルと虚構の絶妙なミックス

――漫画・アニメの中でヒーローが大掛かりなバトルを繰り広げてきた「何者かにならないといけない」時代から打って変わって、新海作品は日常系のファンタジーを描いていますね。

【有村昆】日常の先にあるファンタジーというのは、すごく共感を呼ぶんです。新海作品も細田作品も、舞台となる場所の設定や、その絵にリアリティがあります。四谷とか千駄ヶ谷とか、その絵のロケ地を実際に巡る聖地巡礼も流行っていますけど、現地を忠実に再現したような、絵のクオリティの高さ、美しさがあるからこそ、ストーリーでも共感を呼ぶのだと思います。

【有村昆】観ている側は、こういうビジュアルの中で展開する物語だからこそ、「ひょっとしたら自分にも三葉ちゃん(『君の名は。』のヒロイン)からメールが届くかもしれない」という気持ちになるんじゃないでしょうか。このように、“日常の中のファンタジー”であるところが、新海監督が受けるもう一つの理由なのだと思います。

宮崎駿監督の作品に渋谷は出てこないですよね。出てくるのは、天空の城や風の谷といったもの。新海作品にも細田作品にも、そうではない、地に足のついた日常が出てきて、だけどファンタジーにもっていくという。そういったところが共感されているんだと思います。

■ 新海監督とRADWIMPSの“本気”がもたらした、映像と音楽の融合

――ところで本作は、劇中すべての音楽を人気バンド、RADWIMPSが手掛けていますが、『君の名は。』に続いて、RADWIMPSなのでしょうか?

【有村昆】『君の名は。』にはRADWIMPSの曲が4曲入っていて、今回の『天気の子』にもRADWIMPSの曲が4曲入っています。この2つの作品は、よく観ると分かりますが、ナレーションや説明台詞が一切ないんです。

【有村昆】それはナゼなのか。今まで誰もやったことがなかったことなんですが、RADWIMPSにも一から脚本作りに参加することによって、主人公の気持ちを歌で表演しているんです。アーティストは通常、タイアップで曲を持ってくるというだけだったんですが、新海監督は制作段階から、こういう気持ちの曲がほしい、歌詞に入れてくれというのを”本気”でやってきた。RADWINPSも”本気”でそのオーダーに応えた。だから、主人公の気持ちが全部歌の中に入っているんです。

実はこれが新海作品のヒットの秘密。その合わせ方が絶妙に上手かったんです。ミュージックビデオを観ているような感じだけど、物語も進んでいるという。このあたりの掛け合わせは、『君の名は。』など数々のヒット作品を生み出してきたプロデューサーの川村元気マジックといってもいいでしょうね。ディズニー作品もそうですが、音楽と映像の融合というのは、ヒットの大きな要素だと思います。

(有村昆・ありむらこん)映画コメンテーター。マレーシア生まれ、東京育ち。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。テレビ番組や雑誌などで映画コメンテーターとして活躍しているほか、長年ラジオ番組のパーソナリティとしても活動。(東京ウォーカー(全国版)・加藤由盛)

最終更新:7/19(金) 17:30
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