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10秒で産み逃げ! 赤の他人に子育てをさせるカッコウの巧みな育児寄生術【えげつない寄生生物】

7/19(金) 7:00配信

デイリー新潮

 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる彼らが、ある時は自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄して時には死に至らしめ、またある時は相手を洗脳して自在に操る様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第10回は「カッコウの托卵戦略・前編」です。

 今回、巧みな寄生を見せるのは「カッコウ」という鳥です。この鳥は、他の種の鳥の巣に自分の卵を産み逃げし、子育てという大仕事を完全に赤の他人(他鳥? )にやらせるのです。

 第1回で紹介したエメラルドゴキブリバチのほかにもある種のアリやスズメバチなど、自分では子育てをしない昆虫がいますが、それは昆虫だけではありません。子育てというのは、親にとっては膨大な時間と労力を必要とするものであり、これを他人の労働によっておこなうことは托卵(たくらん)または育児寄生(brood parasitism)と呼ばれ、寄生という形態の一種といわれています。

 この托卵という寄生形態で、最も高度にその習性を発達させているのはカッコウです。カッコウという鳥はカッコウ目カッコウ科で体長は35センチほどです。ユーラシア大陸とアフリカで広く繁殖し、日本には夏鳥として5月ごろ飛来します。繁殖期にオスは「カッコウ! カッコウ!」と特徴的な鳴き方をするため姿が見えずとも認識しやすく、日本人にとってはなじみ深い鳥の一種です。そのカッコウが自分の卵を託すのは体長が20センチほどのオオヨシキリなどのカッコウよりかなり小さい鳥です。ここでは、赤の他人(他鳥)に自分の子どもを育てさせるカッコウの巧みな騙しのテクニックをご紹介したいと思います。

托卵する相手の条件

 カッコウは誰かれ構わず托卵をするわけではありません。相手をじっくり選んで托卵しているのです。カッコウが托卵する相手を決めるときには、いくつか条件があります。まず、托卵相手が自分と同じ食性であることです。もし、托卵相手の食べ物が同じでなければ、自分の子どもが孵化しても、仮親からもらえるエサの種類が違ってしまいます。肉食のカッコウは、雛のときから昆虫などを食べなければ順調に生育しません。実際に、カッコウが托卵をするのは、カッコウと同じく昆虫を主とした動物食をする他の鳥です。

 他の条件として、托卵相手の鳥は自分よりも体が小さくなければなりません。動物全般にいえることですが、体が大きければ大きいほど必要となるエネルギーも多くなり、その種の個体数は少なくなります。逆に、体が小さい動物はそれだけ高密度で生息することができます。つまり、体の小さい鳥をターゲットにすれば、その鳥は高密度で存在しており、巣もたくさんみつけられて托卵のチャンスが増えます。

 通常、成鳥の体の大きさに比例して卵の大きさも変わりますが、カッコウは産み付ける卵の大きさを調節しています。カッコウは、自分より小さい鳥に托卵するので、産み落とす卵の大きさを相手の鳥の卵の大きさに似せて小さくします。また、小さい卵にすれば、大きい卵を作るよりエネルギーを節約することができ、それだけ数多くの卵を産むことができます。

 体が小さい相手を狙うのにはもう1つ理由があります。カッコウの雛は孵化した後、仮親の卵や雛を巣外に放り出して、仮親からもらうエサを独り占めしなければなりません。そうしなければ、本来大きな体をもつカッコウの雛は育つことができないからです。この行動を成功させるためには相手の鳥が小さいほうが有利です。

 実際に、カッコウが托卵をするのは、自分と同じ昆虫を主とした動物食で、さらに自分よりもはるかに体が小さいオオヨシキリ、ホオジロ、モズ、オナガなどです。

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最終更新:7/19(金) 7:00
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