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バブル時代の「遠藤騒動」(中川淳一郎)

7/20(土) 5:55配信

デイリー新潮

『おっさんは二度死ぬ』(pato著・扶桑社)という本を読んだところ、あまりにもバカなおっさんが多数出てきて、途中笑い過ぎてページをめくれなくなってしまいました。この本を読んで様々なバカ話を思い出してしまったので、それについて書いてみます。

 新入社員時代、「社長」というあだ名の1歳上の先輩がいました。酔っ払うと先輩社員に「オラ。ビール注げ」などと言い出し、年上の社員が「社長、どうぞ!」とそのノリに応じてあげたところ、あだ名が「社長」になりました。

 そんな社長が異動することになり、「オレの送別会を皆でグアムでやってもらいたい」と言います。総勢9名、グアムへ3泊4日で行くことに。そして社長が見つけてきたツアーが、4つ星ホテル泊でなんと3万9800円! 慎重な先輩方は「それ、大丈夫なの?」と心配しだしました。

 すると社長は「相手は『遠藤さん』というフリーの女性旅行プランナーで、大手と太いパイプがあるからこの値段が可能なんだ」と言います。しかし、皆で振り込みを済ませ、旅行1週間前になってもチケットが送られてこない。

 これは詐欺ではないか、という話になり、社長がネットで遠藤さんの評判を探ったところ、詐欺師であることが明らかになります。そこで、社長は仕事の空き時間で遠藤さんの自宅を突き止めるべく動いた。CIAもびっくりの諜報能力を駆使した社長は彼女を待ち伏せし、捕まえました。

 どうも、大手旅行代理店勤務の愛人に商品を横流しさせ、何人かは本当に買えるものの、他は買えない、という話だったらしいんですよ。泣き寝入りさせるのが常套手段なのですが、社長が自宅を特定したため、遠藤さんは観念し、9人分を手配したのでした。「7万円のならある」みたいな話になったものの、社長は3万9800円を譲らず。多分、愛人は赤字になったはずです。

 しかし、旅行当日、先輩の一人が「パスポートが見つからない……」と言い始めるではないですか。金曜日の夕方、皆で成田空港に行くことになっていたのですが、その先輩は一旦家に帰り、パスポートを見つけたら空港で落ち合うことに。しかし、搭乗手続きのギリギリまで見つからず。先輩は「楽しんできてくれ……。オレは行けない」と電話で言います。この先輩の名字が、なんと「遠藤」でした。

 この時、我々のグループの最長老は「遠藤に始まり、遠藤に終わったな。本当に遠藤に振り回されたよ」と仰り、この「遠藤騒動」は未だに我々の間では語り草になっています。

 さて、そんな「社長」ですが、「老後2千万円貯めておけ」の時代、実にサイコーな置き土産を残してくれました。当時付き合っていた彼女(現妻)が保険の営業をしていて、新入社員だった私に強引に保険を契約させようとした時、

「ハーゲンダッツ持ってきてくれるんだから、お前だけでも契約しろ」

 なんて言われ、契約したのですが、コレが今考えるとすごかった。60歳まで480万円を積み立てたらなんと800万円になるという商品だったのです! 社長は「この時代、あの保険は解約するなよ」と言ってくれています。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年7月18日号 掲載

新潮社

最終更新:7/20(土) 5:55
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