ここから本文です

「国歌独唱」は歌い出しの音が一番難しい(井上芳雄)

7/21(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

井上芳雄です。今月、先月と名誉な出来事が続きました。7月12日には東京ドームでの「マイナビオールスターゲーム2019」第1戦で国歌独唱。6月10日にはオーストリア政府から「オーストリア共和国有功栄誉金章」をいただきました。ウィーンミュージカルの成功で、オーストリアの歴史・文化を広めた功績とのことです。どちらも、歌手として、俳優として誇らしいことで、これを励みに頑張りたいと思っています。
国歌独唱は、2017年に地元・福岡のヤフオクドームでの福岡ソフトバンクホークスのプロ野球開幕戦で歌って以来、2回目です。前回もそうでしたが、緊張しました。歌うのは1分くらいですが、東京ドームだと4万人を超えるお客さまを前にするので、ふだんの舞台とは桁が違います。しかもオールスターゲームの初戦とあって独特の熱気。夢を見ているというか、実感があまりないまま終わってしまったような気もします。
当日は、昼にリハーサルを1回して、次がいきなり18時55分からの本番です。『君が代』はアカペラで歌うので、どの音で歌い出すかが一番難しく、緊張します。何の音から始めてもいいのですが、音程がどんどん高くなるので、高いところから始めるとあとできつくなってしまいます。落ち着いて普通に歌えば難しくないのかもしれませんが、ドームの残響がすごいので、あの場で冷静に歌うのはけっこうハードルが高かったです。
『君が代』は一般的にはドレミのレの音から始まります。なので僕は、グラウンドに入るまでスマホでレの音を聞いて、「き、き、き」と出だしを言いながら、頭の中でずっと音を鳴らしていました。それでもちょっと違う音が出てしまいます。グラウンドに入ると、今度は選手の紹介で大歓声が上がっていて、音をとるのが大変でした。
いざ国歌独唱が始まると、心の中で「この音で大丈夫だ」と自分に言い聞かせて、勇気を出して歌い出しました。始まったら、たっぷりと歌うよう心がけました。歌っていると、自分の足元のスピーカーから出ている音と、球場に回っている残響の両方が聞こえてきます。音が重ならないように、残響が消えてから次のフレーズを歌うようにしたので、たっぷり歌ったと思います。すぐに終わってしまっても味気ないですしね。ただ、『君が代』の歌い方として、それが正解かどうかは分からないですけど。
2回目でも国歌独唱は緊張しますが、歌手として名誉なことで、貴重な経験をさせていただきました。もういつでも歌えるという、自分の中でのちょっとした自信もつきました。
名誉なことがもうひとつ。6月10日にはオーストリア政府から「オーストリア共和国有功栄誉金章」を授与されました。『エリザベート』と『モーツァルト!』が日本で成功を収めたことで、オーストリアの歴史・文化を広めた功績とのことです。
演出家の小池修一郎さん、俳優の山口祐一郎さん、一路真輝さん、花總まりさん、プロダクション・コーディネイターの小熊節子さんと一緒にいただきました。素晴らしい勲章をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。宝塚版、東宝版のそれぞれに深く関わられて、日本の『エリザベート』の歴史を築かれてきた先輩方の中に、一番年下の僕が入るのはおこがましいのですが、これを機にいっそう頑張りたいと思います。
勲章の伝達式と記念レセプションは、東京・麻布にあるオーストリア大使公邸で催されました。久しぶりにお会いする方もたくさんいらっしゃっていて、19年前に『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビューしたころを思い出しました。
実は、2000年の東宝版『エリザベート』初演の制作発表会場が、同じ場所でした。当時、僕は東京藝術大学の学生で、公の場に出るのは初めての経験。制作発表がどんなものか分からないし、衣裳もないので、大学の入学式に着たスーツ姿でタクシーに乗り、「オーストリア大使館に行ってください」と言ったら、着いたのは近くにあるオーストラリア大使館。時間ぎりぎりだったので、「ペーペーの自分が遅れるわけにはいかない」と大慌てでオーストリア大使館に駆け込んだのを覚えています。それを懐かしく思い出して、大使に話をしたら、「ここに来る半分くらいの人が、その経験をしています」って。

1/2ページ

最終更新:7/21(日) 12:15
NIKKEI STYLE

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ライフスタイルに知的な刺激を。
生活情報から仕事、家計管理まで幅広く掲載
トレンド情報や役立つノウハウも提供します
幅広い読者の知的関心にこたえます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事