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「オリンピックでは自分の演技を見せたい」新体操・皆川夏穂がリボンの先に見据える未来

7/21(日) 12:01配信

Tarzan Web

中学卒業後からずっと新体操の本場ロシアで生活した。世界の強豪と肩を並べるまでに成長した日本のトップ皆川夏穂は、自国・東京オリンピックで新体操初のメダルを狙う。(雑誌『ターザン』の人気連載「Here Comes Tarzan」、No.768より全文掲載)

ルール変更にどう対応するのか。

頭から爪先までが、すっと伸びる。右腕がしなやかに肩の高さに上げられると、手に持ったスティックが、まるで指揮者のタクトのように動き始める。すると、それに応じるように、リボンが統一されたオーケストレーションの音色のように、美しくループを描き出す。

見ていた編集者とカメラマンは「うわっ、すげぇ」と、思わず声を上げる。彼女はその声にビクッとして、彼らの方を振り返って笑った。

練習後、ぜひにとお願いしてリボンに挑戦させてもらう。スティックをクルクル回すと、リボンは先の方にすぐに結び目ができて、こちらの意思に従うことはまったくない。

「最初は、みんなこうなっちゃうんです。難しくはないんですが慣れなんですよね」と、彼女はサラリと言う。いやいや、これは本当に難しい。

2017年、新体操の世界選手権。皆川夏穂は種目別決勝のフープで17.700の高得点をマークして、見事、銅メダルに輝いた。日本人としては1975年の平口美鶴以来の42年ぶりの快挙である。このニュースを耳にした人は多いだろう。

ところが、昨年の世界選手権では、決勝には残れたものの14位中12位という結果。予選ではリボンで18.100という高得点が出たし、決勝進出というのはこれまでの日本人選手なら上出来なのだが、彼女にはこの結果は満足できるものではなかった。

「去年は自分としては悔しい気持ちのほうが大きかったですね。ルールが新しくなって、それになかなか対応できなかった。海外の選手はすぐにそれに合わせていたのですが、私は精神的にも技術的にも追いつけていないで、まわりから遅れてしまったことを実感した大会でした」

そのルール変更とは、Dスコアの上限がなくなったことである。この得点は技の難度によって加算されるのだが、これまでは最高10点であった。それが、いくらでもプラスできるようになったのだ。

選手たちは、当然、これでもかと技を詰め込むようになる。すると、演技はよりアクロバティックになるのだが、これでは本来の芸術性を追求する新体操から離れていってしまうだろう。だが、今の現実はこのような状況なのだ。

そして、皆川はこれまで美しさを追求してきた。技と技の間のつなぎの部分は彼女の真骨頂。表現力に溢れたその演技は、世界でもトップクラスであった。それだからこそ戸惑いも大きい。自分が目指した新体操とは違うものが求められ始めたのだ。

「スポーツは進化するので、ルールが新しくなっていくのは当たり前のことと思います。ただ、演技の美しさで、他の選手と戦えるというところまで来ていたので、そこで急に技を増やすってなったときに、萎縮してしまったし、戸惑いもあった。でも、技をたくさん入れながらも、美しさを残せたらって考えると、まだまだこれからって思えるんです」

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最終更新:7/21(日) 12:01
Tarzan Web

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