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「ハンセン病」家族訴訟に思う 国立療養所を訪れて知った悲しい現実

7/21(日) 11:02配信

デイリー新潮

 ハンセン病の元患者の家族らに国家賠償を命じた熊本地裁判決について控訴断念を表明した政府は7月12日に安倍首相が家族へ「お詫び」を含む談話も出す異例の展開となった。首相は家族代表らに直接謝罪する予定だ。全国の元ハンセン病患者の家族561人が「誤った隔離政策で家族の離散などを強いられた」などと、国を相手に一人当たり550万円の損害賠償を求めていた訴訟で6月28日、熊本地裁が国の責任を認めて総額3億7675万円の損害賠償金の支払いを命じていた。

 ハンセン病については、かつて「優生保護」の名目下、不妊手術や断種を強制的に執行された人たちも現在、一部の人たちが名乗り出て訴訟を起こしているが、今回はこうした元患者本人ではない「家族や肉親の苦しみ」に焦点が当たっていた。控訴断念、政府の謝罪のニュースは、首相の思惑が何であれ喜ばしい。ただ筆者は、ある経験からやや別な感慨も持っている。

 20年近く前の一時期、筆者は群馬県吾妻郡草津町にある「栗生楽泉園」という、元ハンセン病患者のための施設をたびたび訪れていた。たまたま、ロシア語を習っていたロシア人男性の先生から、彼が親しくしていた、ここに入所する亡命ロシア貴族の末裔、コンスタンチン・トロチェフ氏(故人)を紹介され親しくなっていた。ここでは割愛するが、数奇な運命のトロチェフ氏の伝記を月刊誌「中央公論」に書いたりした。当時、ハンセン病の問題が大きなニュースになり、ここに入所していた詩人の元患者、谺雄二さん(ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会代表・故人)の取材もしていた。

 さて、同園には、訪ねてくる元患者の家族や知人のための安価な宿泊施設があり助かった。私だけではなく家族で宿泊することもあったが、妻は風呂が男女兼用しかないことに驚き「やっぱり人間扱いしていないんだ」と怒っていたものだ。だが、何度、同園に行っても天理教などの宗教団体が元患者支援の一環で泊まっていたようなことはあっても入所者の家族らしい人が泊まっているのを見たことがなかった。

 疑問に思ったある時、園の職員にそのことを伺った。職員は「身内の方はまず来ませんね。ここに来るのはここで入所者の方が亡くなってのお葬式の時くらいです。ところが葬儀が終わったとたんに身内同士で喧嘩が始まるんですよ」と切り出した。そして「一度も元患者さんの身内に会いにも来たことなどなかった人たちが、亡くなった方の遺産をめぐって怒号の飛び交う喧嘩をするんですよ。それはもう、ひどいもんですわ。見ていて悲しくなりますよ」。これを聞いた筆者は暗澹たる気持ちになった。

 ハンセン病に強い伝染力がないことはとうの昔に判明していても、患者隔離の根拠となった明治以来の差別的な「らい予防法」は1996年にようやく廃止されるまで残った。同法に基づいた隔離措置を「人権無視で憲法違反だ」と元患者が訴えた国賠訴訟は2001年5月、彼らの完全勝訴となる。政府は時の小泉純一郎総理が謝罪談話を発表、翌年には坂口力厚生労働大臣が元患者らに謝罪し、最高裁も謝罪するという、異例の展開を見せた。これで元患者たちは補償金を手にすることになった。とはいえ、既にほとんどが高齢化していた彼らには園外で社会生活を営む力はなく、大半は園内で余生を全うした。栗生楽泉園には簡素な売店や食堂もあるが、そんな地味な生活しかしていないから、補償金を残したまま亡くなってゆく。

 今回の「画期的勝訴判決」の報道。「家族も差別に苦しんだ被害者」ということが中心に描かれる。もちろん多くの場合において真実だ。判決翌日の朝日新聞では“ハンセン病になって隔離された父を疎ましく思い、周囲には死んだと言っていた”と回顧する林力さん(94)の懺悔の言葉が写真入りで紹介されていた。だが、実名登場は例外で原告家族の多くが今も匿名なのだ。

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最終更新:7/21(日) 11:02
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