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じか火で焼いて、殻をこじあけ、がぶり! 貝と酒のワンダーランド都内3店

7/22(月) 7:47配信

NIKKEI STYLE

酒を飲む際にはうまいつまみが欠かせないが、「貝」のつまみを専門に出す居酒屋が今急増している。貝の専門店といえば、王道は世界中にあるオイスターバーだろう。しかし味が良く、酒とも合う貝はカキ以外にも無数にある。今回は貝の魅力に注目した3店を紹介する。

1軒目はJR四ツ谷駅徒歩3分の「貝と地酒専門 かいのみ」だ。2014年の開業当初から客が絶えない、不動の繁盛店である。ここではカキをはじめ、ハマグリやホタテ、またシロガイ(サラガイ、ヒラガイともいう)など珍しい貝も提供。

生ガキや焼きガキの盛り合わせ、ホタテのバター焼き、ハマグリの酒蒸しなどが食べられるが(メニューは日によって変動)、名物は「豪快蒸し」(2480円、税別)と、冬も人気だという「貝の刺身」の盛り合わせだ(「貝刺し六種盛り2980円、同」と魚の刺し身も入れた「刺身六種盛り1980円、同」)。

「豪快蒸し」は名前通りの料理で、四角形の空き缶にその日のおすすめの貝が4~5種類盛り付けられてくる。卓上コンロに火をつけ10分ほどして、貝の口が開いたところを豪快にかぶりつく。ありきたりだが本当にうまい。プリプリ感が強烈、うま味も凝縮しているが、何よりこんな大ぶりの貝を何種類も食べる機会は少ない。手で殻をこじ開けて貝の肉を噛みちぎり、食べて殻を捨てる。繰り返していると、新鮮な素材を食らうとはこういうことかと実感し、気持ちも高揚してくる。

また同店には時間制の日本酒セルフ飲み放題(60分1300円、90分1700円、120分2000円、150分2500円、180分2900円、同)のサービスもある。菊地建吾店長が選んだ全国の地酒約50種類から、好きなものを好きなだけ客自身が注ぐ。「豪快蒸し」の貝と一緒に、菊地店長がこの時期おすすめの、香川と千葉の地酒を飲んでみた。ほんのりした甘みと酸味が貝の軟らかな塩気と絶妙に合う。なるほど、人気が出るわけだ。

「全国から毎日届く旬の貝をお出しし、日本酒もボトルがすぐ空になるため、毎日約10本ほど入れ替えています。お客様は近隣に勤める40~50代のサラリーマンが多く、半数以上がリピーターの方ですが、飽きずに楽しんでいただけているように思います」(菊地店長)

2軒目は今年19年4月20日にJR神田駅前にオープンした「焼きはまぐりSTAND 神田日銀通り店」。15年に開業し、ヒットした立ち飲み店「焼きはまぐりSTAND 八重洲店」の2号店だ。貝というくくりからさらにしぼり込み、「ハマグリ」に特化している。古くからハマグリの名産地として有名な、三重県桑名市直送のものを焼きハマグリや酒蒸しで楽しめる。

同店では焼き台が大きくせり出しているのが特徴で、店内はもちろん、店の外からでもハマグリが湯気を立てて口を開けるのが見える。それだけでもテンションが上がるが、殻を洗濯バサミでつまんで熱々をフーフー言いながら食べるのが最高だ。うま味が濃厚、肉厚だが、牛や豚の肉より食後感があっさりしていて、止まらなくなる。看板メニューの「焼きはまぐり」を、一番よく出るという白ワインと合わせると、気づかないうちに5個もペロリと食べてしまった。

さらに、ハマグリとムール貝を好きな個数と、ベース(白ワイン、トムヤムスープ、キムチスープの3種いずれか)で調理してもらう「デポ蒸し」も味わった。これも非常に満足感がある。貝からのだしも食べ切るためのシメの具材(「水餃子」「〆フィジリ(ショートパスタ)」「焼きおにぎり」から選ぶ)を含めてあっという間に完食。客はほとんどが男性だそうだが、このデポ蒸しを夕食として食べに来る女性1人客もいるとのことで、その気持ちがよくわかる。

「うちでは『焼きはまぐり』をお通しで出し、お1人3、6、10個から選んでもらっています。『10個はいかが』と促すと『一人でそんなに食べられないよ』と言われる方が多いですが、結局すぐ食べてしまい『やっぱり10個にしておけばよかった』と苦笑いされています」(江幡賢店長)

3軒目は中野駅にある「ホタテん家(ち)」だ。「都内初のホタテ専門店」をうたい、18年4月にオープン。大須賀健太オーナーが前職(楽天での食材のECコンサルタント)時代に出合ってほれ込んだという、北海道枝幸町のホタテを使ったメニューを提供する。貝の中でも甘みがあって食べやすく、子供も大人も好きなホタテ。いつも身近にあるイメージだが、確かにホタテ専門店とは珍しい。


メニューは北海道産バターと特製のだしじょうゆでコンロ焼きにする「ホタテ浜焼き」(320円、税別)を筆頭に、「半熟ホタテフライ(3ケ)」(800円、同)、「ホタテの串焼き」(680円~、同)、トマトと合わせた「ホタテカルパッチョ」(850円、同)などシンプルなものがそろう。

「毎日枝幸から届く新鮮な天然ホタテを使っています。枝幸は北海道のほぼ最北端にある町で、ここでとれるホタテはグリコーゲン(糖質の一種)の値がほかの国産のホタテ品種と比べて圧倒的に高いそうです。そのせいか甘みが突出しています。貝の繊維がそろって食感もいいんです」と大須賀氏が主張する通り、かむと果物を味わっているような、上品で繊細なうま味を感じる。

前出の2店とは逆に、同店のファンは圧倒的に女性が多い。また中野という住宅地に近い場所柄もあり、地元客が中心かと思ったが、人気ユーチューバーやテレビのワイドショーが取り上げたのをきっかけに全国的に認知度が上昇。大阪や福岡、そしてホタテの産地でもある北海道からも、女性客が絶えず訪れるという。

「北海道産ホタテ、と言うと十把一絡げで扱われてしまいますが、枝幸のホタテの品質は世界一だと思っています。東京から発信し、日本の『枝幸ホタテ』をブランド化するのが夢です」(大須賀氏)

今回、取材前に「貝を連続して食べて、具合が悪くなったらどうしよう」と思っていたが、そんな心配は一切不要だった。貝毒(下痢性とまひ性がある)を絶対に起こさぬよう、出荷前に厳格なサンプルチェックを行うなど各店はあらゆる防止策を講じているという。

体調を崩すどころか、逆にタウリン(貝類に豊富なアミノ酸の一種。血圧やコレステロール値、肝機能を安定させる作用が期待できる)のおかげか、食べるほどパワーがみなぎってくるかのよう(に感じた)。そして貝が開くまでを待つ時間や、殻ごとかぶりつく瞬間のワクワク感は、ほかの食材では味わえない。貝は「食べるエンターティンメント」なのである。気のおけない友人や同僚と、一度体験してみてはいかがだろうか。

(フードライター 浅野陽子)

最終更新:7/22(月) 12:15
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