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反捕鯨国との埋まらぬ溝…商業捕鯨再開に潜む「国際訴訟リスク」に備えよ

7/22(月) 12:13配信

Wedge

 7月1日、国際捕鯨委員会(IWC)脱退に伴い、日本において31年ぶりの商業捕鯨が再開された。商業捕鯨の対象海域は、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)に限定され、2019年末までの捕獲枠は1994年にIWCが採択した改訂管理方式(RMP)に基づき、ミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭の計227頭である。次年度以降は、計383頭の捕獲が予定されている。脱退における他国からの目も考慮したため、RMPの概念を用いて厳しい上限を設定しており、調査捕鯨で捕獲していた頭数の6割となる。

 RMPによる算出方法は、推定資源量の1%以下を捕獲可能量とするので、100年間捕獲を継続しても資源に影響を与えないとIWC科学委員会が認めたものである。商業捕鯨は、北海道網走市、千葉県南房総市、和歌山県太地町等を根拠地とし、ミンククジラとIWCの規制対象外であるツチクジラなどを捕獲する沿岸捕鯨と、山口県下関市を根拠地とし、沖合で3種の鯨を捕獲する母船式捕鯨から成る。すでに初日に、ミンククジラ2頭が水揚げされた。

日本の主張は通らない 科学的論証を阻む反捕鯨国

 2018年12月26日、菅義偉内閣官房長官は「本年9月の(第67回)IWC総会でも、条約に明記されている捕鯨産業の秩序ある発展という目的はおよそ顧みられることなく、鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが、誠に残念ながら明らかとなりました」と述べ、日本の国際捕鯨取締条約(ICRW)とIWCからの脱退を明らかにした。

 日本が行ってきた、鯨を捕獲して調べる致死的調査に対し、IWCで多数を占める反捕鯨国の反対が多く、第67回IWC総会で致死的調査は不要であることが合意され、鯨類保護や非致死的調査に関する問題に十分な予算を配分する決議が採択されており、その継続は困難な状況にあった。

 菅官房長官がいうICRWの目的とは、条約の前文にある、反捕鯨国が依拠する「これ以上の濫獲(らんかく)からすべての種類の鯨を保護することが緊要であることに鑑(かんが)み」と、捕鯨支持国が依拠する「鯨族の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする条約を締結することに決定し」である。「保護」と「捕鯨産業の秩序ある発展」という二つの目的が規定されている。しかし、ICRW第5条には「最適利用」の文言があり、締結当初は、反捕鯨国がいうような鯨の「完全な保護」を目指す条約でなかったことは明らかである。

 1982年、第32回IWC総会で商業捕鯨を一時的に停止する「商業捕鯨モラトリアム」が採択された。これは鯨の完全な保護のためではなく、当時採用していた資源管理方法に科学的な不確実性があるとして採択されたものである。それを定めた附表(10項(e))は、「この(e)の規定は、最良の科学的助言に基づいて常に検討されるものとし、委員会は、遅くとも1990年までに……この(e)の規定の修正及び他の捕獲枠の設定につき検討する」と規定している。

 しかし、反捕鯨国の執拗(しつよう)な反対により、この検討はなされず、結果として商業捕鯨モラトリアムが維持されている。附表の修正には加盟国の4分の3の賛成が必要だが、捕鯨支持国(40カ国)と反捕鯨国(48カ国)が拮抗(きっこう)している状況(下表)でいまだ実現していない。

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最終更新:7/22(月) 12:13
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